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乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 (一)
鰯田寺には、ある和尚がいた。
寺には和尚がいて当然なのですが、兎に角この和尚、詳しいことは一切わかっておらず、「ある和尚がいた」というくらいにしか私には言いようがないのである。
郷土史を捲ってみてもやはり詳しいことは分からず。どうやら文字に明るく学もあって和歌もうまいという人物で、家柄も高貴な血筋を引いていたそうだが、とにかくうだつの上がらぬ風采で、挙げ句、足がとんでもなく臭かったようである。
石碑によれば、乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いがしたそうな。
私は乞食の耳にイカを詰めた経験がないのでどんな臭いなのか想像ができないのだが、最近見つかった和歌や随筆にも同様の記述があることから、有識者の間では中世期のこの辺りでは乞食の耳にイカを詰める行為が挨拶代わりに行われていた、ということが通説となっているらしい。
イカが不憫か、乞食が不憫か。
いや、本当に不憫なのはこの和尚のほうなのかもしれない。
兎に角、この和尚の名は分からない。しかしそれでは書き起こすのに少々不便であるので仮にでも名をつけようと思う。私は物語の登場人物に名をつけるのが大好きで、石碑を読んだ瞬間にピンときたわけなのだ。
ということで、今後この足の臭い和尚の名は「すめる」と呼ぶことにします。
↓(二)へ続きます。