乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 (八)
キノは、誰よりも早く起床した。硬い煎餅布団を畳んで戸を開けた。外は東の空が白み始めていて、朝冷えが昨日降り籠めた雨の名残を霧に変えていた。寝姿のまま庭に降りたキノは、霧の中、冷たい井戸水で顔を洗った。
釜場へゆき、湯を沸かすキノ。朝冷えする今時分は竈門で焚かれる炎の熱が心地よい。湯が湧き、柄杓を使って熱い湯をたらいに注ぐキノ。足元の手桶には昨晩のうちに汲んでおいた冷たい井戸水が溜まっていた。たらいの湯と手桶の水。それに畳んでいた白布を幾枚か、香油を一皿、茶を一杯。キノは