鰯田イノ

普段はmonogatyというサイトで活動してます。 大海原で他の鰯と泳いでいたところnoteが楽しそうに見えてやってきました。 臆病者ですのですぐに隠れてしまいます。

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マガジン

  • いわし日記

    いわしの日記を集めました。 駄文集です。

  • 乞食の耳に…

    「乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話」をまとめてみました😄

最近の記事

厳しいのでしょうか…… 頑張って、斎藤さん🥲

    • それでも地球は曲がってる #毎週ショートショートnote

       蟻は言った。 「地球は平面だろ? ほら、どうみたって真っ直ぐに平らじゃないか」  蟻は「何を馬鹿な」と言いながらミミズを運んで去っていった。確かに蟻の目から見れば地球は平らだった。  猫は言った。 「地球のことなんて知らないよ。僕らは撫でてくれる人がいればそれでいいんだ。ああ、平らなんじゃない? でもどっちだっていいさ、結局はね」  猫はぐいんと背伸びをして港へ行ってしまった。確かに猫の目から見れば地球など、どうでもよかった。  鯨は言った。 「地球? 丸いと

      • 金色に #シロクマ文芸部

         金色に色付くにはまだ時間がかかりそうですねえ。ええそうです。秋の紅葉の話です。  紅葉はモミジ。黄葉は銀杏なんかが代表格でしょうか。わたしは大阪出身なので、秋の風景といえば御堂筋の銀杏を思い浮かべます。臭いけど良い木ですよね。美味しいし。  ところで今日は食器を買いに丹波に行ってきました。冴え渡る青空がきれいでした。でもちょっと暑かった。  丹波焼、素敵ですね。  料理がね、映えるんですよ。    素朴な器を見ていたら煮しめを作りたくなった。  具材は数品。

        • 夜からの手紙 #毎週ショートショートnote

          「こんにちは。  お元気ですか。  突然こんな手紙を受け取って、大変驚かれたことでしょう。それも今まで会ったことも会話したこともない男から、貴女はさぞ迷惑がっているでしょうね。でも、手紙を送らずには居られなかった。もう長くないのでしょう?  正直申すと、わたしは貴女に憧れていた。貴女は明るくて美しかった。この世界の全てを照らしていた。暗闇でうずくまるわたしとは正反対だった。  わたしはずっと貴女に会いたかった。でも、それは叶わなかった。  叶うはずもなかった。わたしと

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        • いわし日記
          31本
        • 乞食の耳に…
          12本

        記事

          乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 ✩後日談ふたたび✩

           私は今、鰯田寺の裏山に来ている。  裏山と言っても、鰯田寺の境内から10分程登れば山頂に着く、そんな程度の小さな山なのだが、その中腹辺りの開けた丘の上に元井キノの墓がある。  墓の周りを見渡すと、丈の低い草が生え揃い、元井家の子孫たちがまめに手入れをしていることが分かる。辺りは林が広がっていて、小鳥の舞い歌うハミングバードと風が葉を揺らす音しか聞こえない。私は斜面に腰を下ろして足元の荒れ果てた鰯田寺を眺めていた。  斜面から吹き上げて来る風が下草の刈り払われた匂いを運

          乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 ✩後日談ふたたび✩

          乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 後日談

           足の臭い和尚とキノの話はこれで終わりなのですが、後日譚があります。  都市計画論のレポートを無事提出できた私は、大学の帰り道、再び「元井ビル前駅」に降り立ちました。  あれから鰯田寺のことをよく調べました。文献に拠りますと、当時の鰯田寺は相当な大きさだったようですね。時は丁度、戦国。あの当時、寺の者たちだって戦に出ていくような時代でしたから、この辺りも大変な様子だったみたいです。  しかし、いくら文献を捲っても寺や足の臭い和尚がどの陣営に付いて、誰と戦ったのかは、全く

          乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 後日談

          乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 (九)

           座敷に残されたすめるは腰掛に座ったままぼう然としていた。憐れんでいたはずの小間使いの女から、己こそが憐れまれる立場の人間だと教えられたからだ。それも言葉を話せぬ役立たずだと思っていた女から、罵声のように浴びせられたのだ。しかし、すめるとて何も考えていなかったわけではなかった。 「おれは間違っているのかもしれない」  そう思うことが、過去に何度かあった。しかし、歪んだ自尊心から嘲りや不当な扱いを己の徳が高いことを示す材料として自らが望んで選び取ったことだと自らに言い聞かせ

          乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 (九)

          乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 (八)

           キノは、誰よりも早く起床した。硬い煎餅布団を畳んで戸を開けた。外は東の空が白み始めていて、朝冷えが昨日降り籠めた雨の名残を霧に変えていた。寝姿のまま庭に降りたキノは、霧の中、冷たい井戸水で顔を洗った。  釜場へゆき、湯を沸かすキノ。朝冷えする今時分は竈門で焚かれる炎の熱が心地よい。湯が湧き、柄杓を使って熱い湯をたらいに注ぐキノ。足元の手桶には昨晩のうちに汲んでおいた冷たい井戸水が溜まっていた。たらいの湯と手桶の水。それに畳んでいた白布を幾枚か、香油を一皿、茶を一杯。キノは

          乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 (八)

          乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 (七)

           光忠との花見はすめるの置かれた状況を何ら変えることはなかった。  すめるは相変わらず奥座敷から出てこなかったし、彼の足はとんでもない臭いを放っていた。寺の者共はあからさまにすめるを嘲るようになっていたし、すめるはすめるで如何なる扱いも感謝の南無阿弥陀仏で応えていた。だが、すめるとて足の臭いに全く恥じていなかったのかというとそうではなかった。  日に一度、すめるの足を洗いに来る言葉を話せぬ小間使いの女。その女にだけは足の臭さを恥じていたのだ。  その女。有力な商家の一人

          乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 (七)

          乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 (六)

           さて、弾正台では花見が催されていた。源光忠は隣に座らせているすめるに話しかけた。 「噂に違わぬ臭いよの」  この男、弾正台で上り詰めたのは家柄のみの話ではない。若い頃より曲がったこととが大嫌いで、虐げられているものを見ると後先考えずにそれを助けた。今でこそ偉い立場になっているが、その性根は若い頃と変わっていないようである。  実は光忠、寺の者共がすめるを閉じ込めて寺を我が物にしていることに大変心を傷めていた。寺の威厳はすめるの徳の高さと評判あってのことなのだ。光忠がす

          乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 (六)

          乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 (五)

           ある春の日のこと。  寺に一通の書簡が届いた。それは、大納言である源光忠がすめるの徳の高さを一目見たいと仰られているので、これこれの日時に弾正台におわす光忠殿の屋敷にて花見を致しましょう、といった内容だったそうな。  寺の者共は困り果てた。すめるは法要の一件からずっと奥座敷から出ていないからだ。寺の者共はすめるの足の臭いによって寺の威厳が損なわれることを酷く心配するようになっていた。寺の者共は如何なる法要にもすめるを出すことを許さず、食事も雪隠も座敷でするようにとすめる

          乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 (五)

          乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 (四)

           すめるは大法要の大役を外されていた。 「お主を思ってのこと。もしものことがあればお主が不憫じゃ」  寺の者共はそう言った。彼らは法要の日が近づくにつれて恐れるようになっていた。すめるの足の臭さによって万が一にでも大法要が失敗すれば、寺が笑いものになるかもしれないと。  すめるは天秤にかけられていた。  すめるが積み上げてきた人徳と、足の臭さ。寺の者共はその両方を天秤に乗せ、針がどちらに傾くかをじっと見ていたのだ。そして結果、針は一方に傾き、すめるは奥座敷に座っている

          乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 (四)

          乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 (三)

           法要の日がやってきた。  誰より早く目が覚めたすめるは座敷の板戸を開け、白い息を立てながら昇る朝日を眺めた。いつも見ている庭の景色が輝いて見えるのは、すめるの心が澄み渡っているからか。  窯場で湯を沸かし、いつものように丁寧に足を洗った。洗いながらすめるは思った。  「足の匂いなど誰も気にしていなかったではないか、足の臭いに気をとられていたのはどうやらおれのほうだったようだ」と。  そう思って少し笑ったすめるは、足を洗う手を止めた。そして、顔を上げて感謝の念仏をあげ

          乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 (三)

          乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 (二)

           ある日のこと。〝すめる〟がお勤めする鰯田寺にとても偉いお坊様がお見えになることになったそうな。そこで誰がお経を読むのかと話し合いになった。そうすると皆が口を揃えて言った。 「すめる和尚にしか務まらん」  すめるの足はとてつもなく臭い。だが、御仏に仕える僧坊が足の匂い云々で経の良し悪しを判断するなどあり得ない。経とは心。感謝の心で読むものなのだ。万物に対する感謝の心が南無阿弥陀仏に救いの法力を授けるのだ。  もう一度言うが、足が臭いくらいで経の良し悪しが左右されるなど万

          乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 (二)

          乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 (一)

           鰯田寺には、ある和尚がいた。  寺には和尚がいて当然なのですが、兎に角この和尚、詳しいことは一切わかっておらず、「ある和尚がいた」というくらいにしか私には言いようがないのである。  郷土史を捲ってみてもやはり詳しいことは分からず。どうやら文字に明るく学もあって和歌もうまいという人物で、家柄も高貴な血筋を引いていたそうだが、とにかくうだつの上がらぬ風采で、挙げ句、足がとんでもなく臭かったようである。  石碑によれば、乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いがしたそ

          乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 (一)

          乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 プロローグ

           九月も中頃のことです。  神戸にある「元井ビル前駅」の南口改札を抜けて、ロータリーから東にケヤキ通りを十分ほど歩いてゆきますと左手にコンクリートの四角い派出所が見えてきます。  そこは魚の橋派出所といって、もとは古い木造の建物だったのですが道路の拡張を期に真新しいコンクリートで建て直されたようです。  その角を曲がると口縄坂といって五十段程の緩い登り階段になっています。坂を登っていると、六甲山からやってきたのでしょうか、両脇の林から小鳥の鳴き声が聞こえます。  口縄

          乞食の耳にイカを詰めて腐らせたもののような臭いのする足を持つ和尚の話 プロローグ