ついに買った 2038字
低温調理は今まで何度となく試してきていて厚手の鍋を毛布で包んだり炊飯器の保温機能を使ったりとわたしなりに工夫を重ねてきたところですが、結局は温度計で管理しないといけなくて割りと面倒だった。でも機械がなくてもなんとかなっていたし、面倒と思いつつも料理のたびに工夫する手間が実は楽しかったり。わたしは料理は手間をかけてなんぼだと半分くらい思う。工程が多いほうが楽しいし、出来上がったときの達成感も大きいから。と思いながら、にわか素人は分厚い鉄鍋に温度計突っ込んで遊んでいたわけですが、この度表題にある通りついに買いました。
思ったより高かった。二万円くらいだったと思う。箱のお洒落さに驚いた。すぐに捨てたけど。
これは自分へのご褒美。仕事が忙しすぎるしストレスでヤバかったから給料が大幅アップすると聞いて買ってやった。無駄使い? そうやなあ。でもそんな気分やってん。
低温調理のいいところは簡単でパサつかないところだと思う。豚ももとか鳥むねのローストとなるとけっこう火入れが難しい。オーブンを使うローストポークでは何度も出したり入れたり手間がかかるし狙った温度になったか温度計をぶっ刺したり、簡単といえばそうだがわたしはあまり好きじゃない。休みの日まで忙しいことをしたくない。鶏むねはまだ短時間で済むからまだ良いとして、でもフライパンでするとなると火入れが繊細で難しい。休みの日まで難しいことをしたくない。だから低温調理。
コンフィなんてほろほろとても美味しいし、鴨むねだってマリネしてジップして鍋に投入すれば柔らかく仕上がっていい。そうそう、コンフィ。しばらくやってないな。皮パリに仕上げてほろほろ肉を赤ワインといただく瞬間が幸せ。
料理はプロセスが大事だと思う。何度も言うが、その方が楽しいし、食べる人も気持ちいいと思う。なかには手作り料理を重いと感じる人もいると思う。でも思いがこもったものを食べるのは大事。手軽に風俗で性欲発散してたら虚しくなると聞いたことがあるからそれと一緒だと思う。これについては諸説あると思うけど。
マリネ漬けしていたラムラックを鍋に投入しながらわたしはそんなことを思っていた。BONIQを59℃・2時間に設定してスタートボタンを押した。
マリネには、オイル、岩塩、にんにく、香辛料。
鍋の中でジップに包まれたラムラックが楽しそうに泳いでいた。休みの日くらい静かにしてほしいから網を沈めて大人しくさせた。
はじめは水が冷たいからとコンロの火をつけていたのを忘れていてどんどん上がる水温に「BONIQ壊れた!」と思った。めっちゃ焦った。
ラムは時々食べる。臭いといわれるけどいいラムはあまり匂わないし、わたしはラムの香りが嫌いじゃないから平気。ラムの火入れは好みが分かれる。血(肉汁)が滴るくらい真っ赤が好きな人からしっかり焼き締めてかぶりつくように食べたいワイルドな人まで。わたしはロゼくらいの火入れで肉汁が滴らないくらいが好き。食べ終わったあとのお皿が綺麗だから。
59℃にしたのは牛肉と同じ感覚。だた初めて使う機械だから随分長めの2時間。まだ信用できない。
それはそうと肉料理には付け合せが大事。むしろわたし的にはこちらが主役、とまではいかないにしてもとても重要なポジションを占めているのには間違いない。組織だってナンバー2が大事だと思う。付け合せ野菜みたいな人になりたい。今回は棚に転がっていた使い古し野菜をグリルする。小さめの玉葱は皮ごと、人参はゴロッと使って、萎びたサツマイモと三度豆。
オーブンに火を入れる。はじめは180℃で5分。表面の水分を飛ばすのだ。人参の表面がカラリとした。オリーブオイルを塗り、岩塩を振る。今度は140℃でじっくり一時間。放ったらかしでいいから楽ちん。
鍋の肉も仕上がってきていた。触ると程よく弾力があって、火が入っているのが分かる。でもまだ出してあげない。今回はテストを兼ねている。59℃・2時間で300gのラムラックの火入れ加減がどうなのか。火を入れ過ぎたなら次は1時間ですればいい。要所に分解分析すれば物事はシンプルになる。気に入らなければ一つずつ変えていけばいい。料理と仕事は似ている。
時間があったから年季の入ったマキネッタでラッテを作った。カフェインが胃に悪いと聞いて避けていたが恨めしそうにみつめるおじさんと目があってしまった。
聞き慣れない電子音にマグをこぼしそうになった。肉が出来上がったようだ。
ジップの上から触ると先程よりは若干締まったよう。でもよい具合に思えた。温度を測る必要もなさそうだ。今は肉の中で肉汁が暴れているだろうから休めている間にグリルした野菜を盛り付ける。先に出されていた三度豆は他の野菜と再会できて嬉しかったようだ。くにゃんと柔らかくなっていた。火の入れ過ぎ。
肉は脂に焼き目がほしい。
フライパンで焼いてから盛り付ける。
ちょっと焦げちゃった。
結果としてBONIQは低温調理の工程を楽にはしたが、料理の楽しさは損なわれなかった。むしろ余裕を持って鍋に向き合えるので付け合せに手間をかけれたし久しぶりのラテはやっぱり美味しかった。
無駄使いとか言ってごめん。
[おわり]
#BONIQ