幸せの黄色いハイチュウ
満員電車の中、外国人家族の小さな男の子が泣いていた。
慣れない異国の地で、きっとおそらく初めての満員電車で戸惑い、泣いているのだろう。
両親は周りを気にしながら戸惑いつつも、どうにか男の子を泣き止ませようと必死にあやそうとしている。
男の子はそんなこともお構いなしに、泣きやむ素振りはない。
世界中の子供は、どこでもどんなときにでも、自分の気持ちを素直に表現する。それは自然なことだ。
ただ、満員電車の中、泣きやまない男の子の鳴き声で、より一層、不穏な空気に包まれていた。
すると・・・まだ若いある男が泣いているその男の子に近づき、なにかを手渡そうとした。
その男の子は突然の出来事に驚いたようだが、すぐに泣き止み、小さな手でそれを受け取った。
それは一粒のハイチュウだった。
男の子は、その黄色い粒を口に頬張ると笑みがあふれた。
満員電車の空気が少し変わった気がした。
その小さな優しさが、淀んでいた満員電車に優しい風を流した。
そして、その男の子の笑顔に多くの人が癒やされていた。
その若い男は、いつの間にか50歳を過ぎていた。
過ぎ去りし日々を懐かしく思いつつ、いつまでもそのことを大切そうに覚えていた。