母のそばで♡メンタル弱い!篇
95歳の母はメンタルが強い。
昭和一桁は強い!
肺ガンの末期と言われ、緩和ケアの訪問診療を私の家で受けている。
とても苦しいことが何度もあったけど、泣き言を言わない。
こんなに強い母に育てられたわりに、私は弱い。
刺されたショック!!
刺された、といっても虫に。
ムカデに!
それ以来、怖くて眠れなくなった。
私は「どこでも、いつでもすぐ眠れる」のが自慢だったのに。
飛行機に乗っても、着席と同時に眠ってしまう。
離陸の雰囲気を味わえないことも。
着陸態勢に入ってガタン!と車輪が出る衝撃で起きるのだ。
東南アジアに行くとき、奮発してビジネスクラスに乗ったことがある。
シートが気持ち良くて眠ってしまい、せっかくのご馳走を食べ損ねたことも。
夫は、私と二人きりだと面白くない、と拗ねている。
こんな私が「眠れない」というからみんな心配してくれた。
コワイ!の対策
眠れないので、昼間は頭がボーっとするし身体もキツイ。
対策をとらねば。
①業者に依頼して駆除
でも家の中に「あの子たち」はいない、と言う。
外から入ってきているようなので外回りの対策も!
(業者さんが虫のことを「あの子たち」というのがおもしろい)
②忌避剤を部屋中に散布
天井のどこかにしがみついていた虫が落ちてくることもある。
③スプレーをふすまの周り、畳のふちに沿って撒く
殺虫剤ではないが、虫が嫌う匂いがするらしい。
まめに撒けば畳や壁ににおいがしみて、虫が来なくなると教えてもらった。
④アロマを置く
虫よけコーナーに売ってあるものを3個買って、部屋のあちこちに置いた。
さらに、ラベンダーオイルをたっぷりしみ込ませた専用の容器をベッドのすぐそばに置く。
⑤アロマを塗る
自分の身体にハッカ油を塗る。手首、足首などに。
これだけすれば十分だろうーーー。
ところが甘かった。
眠れないのだ。
まさかの事態。
心の病になったかも。
かかりつけのお医者に相談した。
すると精神安定剤の軽いヤツを処方された。
これを飲むとふーーーっとなって、眠れるような気がした。
ところが、心のどこかで声が聞こえる。
「うっかりぐっすり眠って、虫に気づかなかったらどうするのさ?」
眠りたい身体と、眠るなという心の声!
本格的にマズイ!病気だ!と怖くなった。
緊急外来で
そんなある日の夜、頭が痛くなった。
横になっても頭痛はひどくなる一方だし、吐き気までしてきた。
血圧を計ってビックリ!!
出産時以来、見たことのない高い数値だ。
これはマズイかも!
よほど救急車を呼ぼうかとも思った。
しかし、そうなると病院を選べない。
遠くまで行ったら困る。
町内の、母がお世話になっている病院に電話すると「すぐにいらっしゃい」というありがたいお言葉。
夫に「お母さんをお願い」と言って自分で運転して行った。途中で吐きそうになりながら、なんとか辿り着いた。
問診の途中も普通に座っていられない。
グラグラする頭で、吐きそうになりながら頑張って質問に答えた。
先生が「MRI準備して」と看護師さんに言う。
ギョッとして「イヤです!!」と急に背筋が伸びた。先生は優しく笑って「苦手なの?」と聞いてくる。
「ハイ、怖くってーーー」。言いながら情けないと思う。閉じ込められる感じが恐怖なのだ。
先生がCT検査にしてくれた。
これならできる。
検査中、こみ上げる吐き気と闘った。
「吐いて汚したらごめんなさい」と思いながら。
結果が出るまでの時間、先生とお話。
「ちゃんと眠れていますか?」
「最近、ひどいストレスを受けましたか?」
ムカデ事件のことを話した。
なるほどね、という反応だったな。
頭痛薬と、血圧を下げる薬をもらって帰った。
CT検査の結果は異常なしでひとまず安心。
皮肉なものだ
母が夜中に苦しい時は
薬を飲ませ、背中をさすり、足を揉み、手を握り、慰め励まし。
落ち着いて眠ったら自分もスッと眠っていた。
翌日に疲れは感じなかった。
せっかく母の調子が良くて、苦しまずに眠れているのに私が眠れないなんて、どうかしてると思う。
まったく、皮肉なものだ。
最後の対策
苦しんでいる私を見て心配した妹が調べてくれた。そして見つけたのが「超音波で虫を寄せつけない」機械。
小さなもので、コンセントに差すだけ。
価格も小さい。
怪しい気もするが、ネットで購入。
もう、これが最後の対策。
これ以上の対策は思いつかない。
今までの対策もしつつ、超音波の機械をつけた。
その晩から、ツキものが落ちたように眠っている。いい加減、自分の小心さに嫌気がさしたのもあるだろう。今までの疲れがドッと出たのもあるかもしれない。
とにかく、眠れるのは良いことだ。
自分の理解
自分はもっと強いと思っていた。
刺されてショックを受けるのは仕方ないとしても、ひきずり方がしつこい。
眠れるようになるまで、病院や薬を頼り、1か月ばかりかかっている。
64歳になってもまだ自分の知らない面がある、ということを知った夏だった。