母のそばで♡問答篇
母は一生懸命生きてきた。
戦火をくぐりぬけ、働きながら家庭をはぐくみ、病気がちの父を支え、私たち子どもを育てた。それ以外もたくさん苦労した。
なのに、人生の最後に病気が重いことで気を落としている。
病気の症状でおこる苦しみを軽くしたい。
母らしく少しでも明るく過ごしてほしい。
私の家で療養しているので、たくさん話せる。
母も、思ったことを正直に言ってくれる。
母との問答は、私が試されているのだ。
ごめんね
母は私に「ごめんね」と言う。
ーーーごめんねって、言わなくて良いよ。
私は嬉しいよ、お母さんがそばに居てくれて。
私のそばで最期を迎えたいって、思ってくれて。
大好きなお母さん、ありがとう。感謝しています。
迷惑かけるね
母は「手をとらせるね。迷惑かけるね」と言う。
ーーー全然、迷惑じゃないよ。
お母さんは今まで私たちを育ててくれたでしょう?
どれだけ手をかけてくれたか!
好きな勉強をさせてもらい、そのおかげで仕事も最後まで頑張れたし、感謝してるよ。
子どもはね、親の恩に完全に報いることはできないんだって。
どんなに頑張っても親からしてもらったことの100分の1くらいにしか、ならないんだって。
だから、大船に乗ったつもりで任せてね。
こんなことになってしまって!
肺の病気だから、酸素濃縮器からチューブで酸素を吸うことになった。
チューブを引いて、トイレもお風呂も問題なく入れている。
でも本人は繋がれている感じがあるのかな?
悔しく、悲しいらしい。
ーーー酸素を吸えば楽ね♡
呼吸が苦しい時は、大変だったよね!
どうなるかと思ったよ。
酸素を吸えるようになって、良かった。
手配してくださった先生に感謝だね。
苦しくなければ、物事を考えることができるもんね。
入院した方が良いかな
ーーーどうしてそんなこと言うの?
入院したらみんなに会えなくなるよ。
ここに居たら、誰もが自由に会いに来れるでしょう?
ごはんだって、好きな時間に好きなものを食べられるよ。
病院だと、そうはいかないよね。
ここに居れば、みんながお母さんの好きなものを持ってきてくれる。
だから、お願い。ここに居て。
繰り返しで確認する
一日に同じ会話が何度か繰り返される。
きっと、確認をしたいのだ。
「大丈夫よ」「任せて」「大好き」「ありがとう」。
そんな言葉を聞いて、安心したいのだと思う。
お安い御用だ。
何度だって言おう。
「大丈夫よ」「任せて」「大好き」「ありがとう」。
本に救われる
元気になれるような、気の利いた話ができたら良いな。
そこで、本に頼る。
気の利いた話、ホッとする話、気づきのある話。
何も自分の中を探すだけでなく、本の中にたくさんあるのだ。
母も私も読書好きだから、なおさら良いこと。
今は日野原重明さんの本を読んで聞かせている。
次はひすいこたろうさんにしようかな。
「今日はここまでね」と言うと、母が感想を述べることもある。
すっかり眠ってしまうこともある。
良い言葉、良い話を聞きながら寝て良い夢を見たら良いね。
おやすみなさい。