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休校経験から学校教育を変革する

カナダに暮らしているのにも関わらず、今回は日本のオンラインでの教育について少し私の見解を綴っていきます。日本も今回の休校中の対応でかなり温度差がみられました。

ICTの先駆者 蓑手章吾先生

先日、せかままcafeのお友達繋がりで「休校中の学校教育を考える」という千葉県、流山市の保護者、教育者、そして当事者である高校生も運営にかかわる「休校中の子どもの教育環境を前進させる会」が主催するオンラインイベントに参加しました。

このイベントの講師が東京の小金井市立前原小学校で6年生の担任をされておられる蓑手先生です。蓑手先生ご自身は、元特別支援学校、私たちの世代では養護学校と呼ばれた学校での教員経験をお持ちです。

そして先生自身は「根っからの文系」だそうですが、昨年からICT「情報通信技術」を授業に取り入れ、タブレットやコンピューターを通して、授業をされているそうです。

コロナ渦で奪われた子供に必要な二つの”間”

子供が学ぶために必要な3つの”間”「時間、空間、仲間」のうち、学校という”空間”、クラスメートという”仲間”と物理的に分断されてしまったこどもたちのためにできることはなんだろうか?ということを蓑手先生は考えられたそうです。

3つの”間”のうち、残された”時間”を使って何ができるのか、そこで出てきた発想が「オンラインで”空間”と”仲間”を作る」というアイディアです。その中で取り入れたのがSchoolTaktというアプリとZoomの開放です。

SchoolTaktではその日の課題、そして実際にやったことを共有。そしてZoomで朝の会、帰りの会を開くと同時に、一人でいるのが嫌だ、という子のために、8時半から16時までお昼ご飯の時間(給食タイムですね)も含めて、Zoomのミーティングルームを開けていたそうです。

蓑手先生の休校中のモットー

先生がオンラインで子供たちに提供したのは「子供の安全基地」です。いつでも繋がれる安心感があることで、子供に寄り添い、一人一人に合った「学び、成長の場」を作ることだったそうです。

教員も児童もICTをお互いに使いこなす関係でありながら、一つだけ行わなかったことがあります。それは「授業を進める」ことです。理由はたった一つだけ「全員がそろわないから」。

蓑手先生が休校中、クラスのみんなと取り組んだこと

文科省は「休校中にオンラインその他で施行したことは授業数としてカウントしていい」という指針を示していましたが、蓑手先生は「授業をやった=ちゃんと学習した、ということにはならない」と断言されています。

Schooltaktで蓑手先生がクラスのみんなに取り組んでもらったことは、一人一人にその日に行うことを朝の会で発表してもらい、帰りの会でその成果を発表する、というものでした。

最初は、それこそ一文や単語の羅列だったり、どうしても「先生やクラスのみんなに見せる」というプレッシャーと、今まで「与えられる課題」に慣れ親しんでいたせいもあり、「何に取り組んだらいいのか分からない」と嘆く子供もいたのですが、蓑手先生が児童一人一人に適切なアドバイスをしていくことで、休校期間後半は目覚ましい成果が現れました。

蓑手先生のアドバイスは、「一人一人に合った学び」を提供すること。先生は「集合場所であり、バスガイド。興味のあることだけ聞いてくれたらいい」とおっしゃっています。

具体的に先生が子供たちに伝えたアドバイスとして「ゲームでもいいよ」というものがありました。とあるゲームのボスキャラの攻略に苦労していることを書いた児童のところに、クラスメイトがみんなで攻略法をコメントしていました。

「共有する」ことで成長する

休校期間中、勉強だけでなくいろんなことに取り組んでいた子供たち。「自分の”好き”」を追求することで、「学ぶ」本質とはなんなのか、を直感的につかんだのではないか、と感じています。

私自身、二人の未就学児を持つ母親として日々「あぁ、好きなことなら時間を忘れてこんなに一生懸命になるんだね」「いつの間にそんなことができるようになったの?」」と感じることがたくさんあります。

「成長=快楽」であるからこそ、人は学ぶのです。休校中の蓑手先生のクラスの子供たちは、自分で目標を決め、自分で成果を報告する、というアウトプットをしていました。私たち大人はどうしても「インプットする=学習」と考えがちですが、自分に本当に落とし込むためには、この「アウトプットが重要なのです。

蓑手先生が提供した「朝の会」「帰りの会」で、クラスのみんなと自分のしたことを共有する機会を得た子供たちは、クラスメートや先生の反応はもちろんですが、実はアウトプットすることで自分自身で昨日より成長していることを確認していたのです。

これらの取り組みは、実は文科省の学習指導要領にも組み込まれている「自己調整学習と非認知能力の向上」に大きく貢献しています。共有することで子供たちはお互いに教え合うことを覚え、そして好きなことは伸びるのです。

今までのやり方は”今”使えない

自立して学ぶ力は個別最適化である、と蓑手先生はおっしゃいました。私が経験してきたような、「みんな同じ」を目指す教育スタイルでは、伸びる芽も摘んでしまい、学ぶ意欲を奪ってしまいかねません。

コロナ渦のなか、教職員がCovid19をり患して、休校にせざるを得ない学校も出てきた今、受験も含めた、日本の学校教育の本質を根本的に見直す時期に来ているように感じます。

オンラインやデジタル機器が使える環境にないこともあるかもしれませんが、それ以前の日本の教育に対する考え方、取り組み方が問われていると私は考えています。

未だに8段階も乗り越えないと変えていくことができない学校システムや、一人の保護者のクレームで撃沈してしまう画期的なアイディアって異常だと思いませんか?

子供たちには「失敗してもいいからやってみなよ」というのに、先生や親は「失敗はゆるされないからチャレンジするのが怖い」というこの矛盾をどう説明したらいいのでしょうか?

前述しましたが、「授業をした」からと言って、子供たちはそれを自分に落とし込んでいるのかどうかは判断できません。時間数をこなすだけが教員の役割なのでしょうか?

これだけテクノロジーが進化し、生まれた時からスマホ、タブレット、パソコンが家庭にある現代の子供たちにプリントを配るのは、一体何故なんでしょうか?

現在、蓑手先生の教室では、「3密」を避けるために、「チャット」を利用しているそうです。もちろん、口でおしゃべりできれば一番それがいいのです。でもできないならこういう文明の利器を利用することができる、それが現代の教育の在り方ではないでしょうか?

私たち保護者にできること

現在の日本の学校システムでは、担任や学校から動くことはとても難しい状況にあります。だからこそ、保護者にあたる私たちにできることがある、と蓑手先生は提案されています。

それは、「親同士でコミュニティを作っておく」そして「いつでも学校のために動きますよ」と学校側に意志表示しておくこと。そしてたった一人の保護者でも「やりたくない」と言ったら学校側はやめざるを得ないということを認識しておくことです。

これは実際にあったケースですが、ある市の教育委員会に「どうしてあの学校ではやってて、自分の学校ではオンライン授業をやってくれないんですか?」と訴えた保護者があったために、その市では一律でオンライン授業はしない、という方向に動いたのだそうです。

これを防ぐにはどうすべきだったのか?答えは明白です。教育委員会に行く前に「うちの学校でもやりませんか?」と保護者同士で連携することが必要だったのです。

同期と非同期

蓑手先生がもう一つ強調されていたことの一つに、「同期」と「非同期」のバランス、というものがあります。同期は、みんな一緒に、非同期は個々での活動、ということになります。

コロナ渦の最中、先生がZoomを取り入れたのは、この「同期」のパートを増やす目的がありました。学校が再開した今、「授業」という同期はありますが、学校行事という同期のイベントができない状況にあります。

そこで蓑手先生は「イベントをオンラインで考えさせる」という同期をクラスに課題として与えました。これは現在進行形でGsuiteを用いながら、試行錯誤されていらっしゃるようです。

休校中もオンラインイベントとして「人狼ゲーム」を児童と行ったそうです。もともとカードゲームなので、オンラインでできるよう、児童の一人がルールをオンライン用に改定し、一月に転入したばかりだったその児童は、学校再開しても違和感なくクラスに溶け込めたそうです。

教育は誰のためのものなのか?

私自身はカナダで暮らしている未就学児二人の母親なので、実際に学校に通う年齢の子供を持つ日本の親御さんの悩みを完全に理解することはできませんが、逆に外から日本を見ていると客観的に見ることができるのではないか、と思っています。

カナダでは、ホームスクーリングという方法での家庭学習は学校教育と同じ単位を認めています。つまり、学校に通うことを重要視していないのです。

日本では義務教育といえば、「親が子供を学校に通わせることが義務」である教育です。ですが、学校に通いさえすれば、子供は自立するために必要なことをすべて学ぶことができるのでしょうか?

ニートと呼ばれる人は、実は高学歴だったりする事実があります。「学校教育では優秀だった」人がどうして自立できないのでしょうか?実はこのニートや学習障害と呼ばれる人たちは、日本だけが異常に増えているのです。私たちはその現実を受け止め、どう動いていくべきかを考えていく時期に来ていると実感しています。

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