広間の上手から
小さな朗読劇を観た
舞台も客席も無い 小さな劇
観客と役者の距離は3、4mほどで
こんなに近くで演技をする役者さんを見るのは初めてだった
まず、舞台というもの自体あまり縁がないので
それはそれは新鮮だった
カメラワークがない
劇場は、どこから観るか、自分がどこを見るかで映るシーンが変化する
ドラマのように話している人物にカメラが寄ることがない
ただそばで立ち尽くす人を見ていてもいい
席によっても見える役者の角度が違う
その日私は上手側から劇を観ていた
舞台袖にきえていく役者の
少し役の抜けた背中を見送る
なんの境界もない広間に
役者と観客がいて
そこに物語をおろしたら もう劇場なのか
申し訳なさそうに台詞を言う隣人役の
八の字眉毛が好ましかった
結局、役者の名前を誰ひとり知らないまま
幕