「自動人形の城」
「自動人形の城」
悪い魔法使いのそそのかしにより城の人間全員を自動人形に変えられてしまった王子が、逆にその自動人形の長所と特性と限界(と人間の特性と可能性)に気づき、それを活かす指示出しを試行錯誤して様々な危機に対峙していきます。
人工知能と人間の言葉の橋渡しとなるもの、
それはまさにプログラミング。作業の標準化、パッケージング、場所のアドレス指定、例外の設定etc...役に立つスキルとその学術的論拠がストーリー仕立てで学べます。
グッとくる展開アンド展開、人間的成長。
何かを学び始めるということはその分野の最底辺に自分を置くことを認め受け入れること。それは恐怖でしかありません。学ばないことを他人のみならず自分にも弁明正当化してしまうことは世の常。
「知性」とは何か?
という問いを、人形に置き換えられてしまった「知性」なき城での物語を通して体感できます。
よくあるこの手の本と違い、主人公(命令の出し手)の能力が低く、人形(受け手)の量と質がすごく高い状態でのスタートということもあってより先の問いが浮き彫りになっています。
プログラミングのみならず、生身の人間に指示を出したり(受けたりする)することの多い、「うちの部下は一から十までいってやらないとわからないんだよ!」と嘆く管理職の人にこそ読んでほしい。指示のレベルが数段上がります。
主人公の成長譚としても上質で、同著者の前作「白と黒の扉」や「精霊の箱」とのつながりがほのめかされているところもファンには嬉しいです。ああ、あの子がこんな立派になって、って思いました(笑)
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