「供述によるとペレイラは…」

「供述によるとペレイラは…」
アントニオ・タブッキ

“ファシズムの影が忍びよるポルトガル。リスボン小新聞社の中年文芸主任ペレイラは、ひと組みの若い男女との出会いによって、思いもかけぬ運命の変転に見舞われる。“

ペレイラは何某かの理由で”供述”をしなくてはいけない立場になっていて、その中で淡々と当時の出来事を振り返っていきます。その抑えに抑えた語り口が、かえってペレイラを取り巻く時代の無情な渦を実感させてくれます。

何もかも、自分の境界線さえ曖昧な情勢の中、ペレイラが、「最後の授業」というフランスの挿話を何気なく手に取るシーンがあります。困難な状況でも学ぶことの意義と誇りを謳っていて、マスターキートンの「屋根の下の巴里」の元ネタとしても知られているのですが、ここを起点に引き起こされるペレイラの決断が丁寧に尊く語られています。これを言葉で説明しようとすると陳腐にりますが、この“供述書”のクライマックスで読んだときの眩さは、確かにこれがタブッキの最高傑作というのも頷けるものになっています。

ペレイラ氏に己を重ねるにはまだ僕は人生経験が未熟ですが、読後レモネードがとにかく飲みたくなる小説です。

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