「金枝篇」

「金枝篇」JGフレーザー

世界各地の信仰と習俗を蒐集した民族学の必読書。
今流行り?の呪術に対する考察が面白い。竹倉史人氏の「土偶を読む」など数多くの民俗学の本に引用され影響反響を巻き起こした原著のエッセンスが、文庫2冊にギュッと読みやすく新訳されています。

呪術は“共感”を核とし、類感呪術(類似の法則:見立て)と感染呪術(接触の法則:食べ残し、藁人形、影、衣服など)に分けられるそうで、豊富な例で説明がなされています。呪術のように混沌としたものに何かルールを見出そうとする試みは野心的ですが、これぞ剥き出しの学問という興奮があります。

世界各国で見られる生贄の習慣への考察が本書の白眉。生贄が”神への供物“であった宗教の時代に先駆けて、“神そのものを殺す儀式”であった呪術の時代が存在していた。

なぜ神(精霊)を殺されなければならなかったのか?
より新しい神への乗り換えが起こったのか?
答えは否。
神殺しは、夏至と冬至を両極として巡る季節に応じて、衰えていく神を若返らせて力を永続させるための、農事行為(!)であったのです。異なる力が敵対するのではなく、同じ力の老若が敵対して周期性を持つというエレガントなシステムが“神殺し”の本質であると。

メソポタミア、ギリシャ、北欧、ローマ、ユダヤ、キリスト教の神話に脈々と受け継がれる神と人間の関係を、呪術と農業で紐解く一冊になっています。

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