大好き 宇宙関連株(019)衛星フェアリング開発【川崎重工業】概要
ウォーレンバフェット氏の教え「社長になりたいと思えるような企業に投資せよ」、これに従い私も社長になりたい会社を探します。まずは小学生の時から憧れている「宇宙」に関連した企業について調べてみます。
今回のシリーズは以下の手順で情報収集をします。
①会社四季報で興味のある会社をリストアップします。
②次にAIでその会社の概要を確認します。
③その会社に興味を持った場合は、公式ホームページを確認します。
④そして次の情報に基づいて調べます。
・日本経済新聞・有価証券報告書・中期経営計画書
※ 冒頭写真は内容と関係ありません。私が好きなものを載せています。
(019)衛星フェアリング開発【川崎重工業】概要
① 企業概要
事業内容:
川崎重工業は、多岐にわたる産業機械から航空宇宙、環境プラントまで、幅広い分野で事業を展開する日本の重工業メーカーです。
特に、航空機、鉄道車両、ロボット、そして宇宙開発分野において高い技術力を持っています。
特徴:
総合力: 多岐にわたる事業展開により、技術のシナジー効果を生み出し、高度な製品やシステムを開発。
歴史と実績: 長年の歴史と豊富な実績を基に、高い信頼性と品質を確保。
グローバル展開: 世界各国に拠点を持ち、グローバルな市場で競争力を発揮。
② 宇宙関連分野の業務内容
川崎重工業は、日本の宇宙開発において重要な役割を担っており、主に以下の業務を行っています。
H-IIA/H-IIBロケットのフェアリング開発・製造: ロケットの最先端部分であるフェアリングは、衛星を保護しながら打ち上げるために不可欠な部品です。
国際宇宙ステーション「きぼう」の開発: 日本実験棟「きぼう」の主要機器であるエアロック、船外実験プラットフォーム結合機構(EFBM)、空気調和装置などを開発。
月周回有人拠点「Gateway」の開発: 国際居住棟の温湿度制御装置を開発。
その他: 小型衛星打ち上げロケットの開発、宇宙機の構造物開発など。
③ 宇宙関連分野での競合他社との比較
競合他社:
三菱重工業: H2Aロケットの開発など、日本の宇宙開発の中核を担う企業。
IHI: ロケットエンジンや宇宙機の構造物など、幅広い分野で事業を展開。
海外企業: SpaceX、ボーイングなど、世界的な宇宙企業との競争も激化。
製品・技術:
ロケット: H-IIA/H-IIBロケット vs H2Aロケット、Falcon9など
衛星: 各社が独自の衛星を開発しており、性能や機能が異なる。
宇宙機: 宇宙ステーション、探査機など、各社の得意分野が異なる。
比較:
各社が独自の強みを持ち、競争が激化しています。川崎重工業は、H-IIA/H-IIBロケットのフェアリング開発や国際宇宙ステーション「きぼう」の開発など、実績が豊富です。
④ 宇宙関連分野での特許
川崎重工業は、宇宙関連分野において数多くの特許を取得しています。特許の内容は、ロケットの構造、衛星の制御システム、宇宙機の材料など、多岐にわたります。
⑤ 宇宙関連分野での実績
H-IIA/H-IIBロケット: 数多くの衛星を打ち上げ、高い信頼性を獲得。
国際宇宙ステーション「きぼう」: 日本の宇宙開発における重要なマイルストーン。
月周回有人拠点「Gateway」: 将来の月探査に向けた重要なプロジェクトへの貢献。
⑥ 宇宙関連分野での協力企業
JAXA (宇宙航空研究開発機構): 日本の宇宙開発の中心的な機関であり、川崎重工業はJAXAと密接に連携してプロジェクトを進めています。
その他の国内企業: 電機メーカー、材料メーカーなど、様々な企業と共同で開発を進めています。
海外企業: 欧米の宇宙企業との協力も進めています。
⑦ 宇宙関連分野での事業規模
川崎重工業全体の売上高に占める宇宙関連分野の割合は、詳細な数値は公開されていませんが、一部を占める重要な事業の一つであることは間違いありません。
【公式ホームページ】
宇宙開発
H-IIAロケット、H3ロケット、イプシロンSロケットで衛星フェアリングの設計・製造を担当しています。
国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」の開発に参画し、その開発と運用で得た知見を活かして月周回有人拠点「Gateway」国際居住棟の温湿度制御装置を開発しています。
また、火星衛星探査計画(MMX)にロボットアームやサンプルリターンカプセルといったサブシステムの開発メーカとして参加しています。
自社で人工衛星「DRUMS」を開発し軌道上での技術実証に成功しました。
開発で得た経験を足掛かりに、小型衛星の開発に取り組んでいます。
H3ロケット 衛星フェアリング
当社は、わが国の最新基幹ロケットであるH3ロケットの衛星フェアリングを開発し、製造を行っています。
H3ロケット用の衛星フェアリングには、S(ショート)、L(ロング)のタイプがあり、多様な大きさの衛星打上げニーズに対応しています。
H-ⅡA/H-ⅡB ロケット/イプシロンロケット 衛星フェアリング
当社は、わが国の基幹ロケットであるH-ⅡAおよびH-ⅡBロケットの衛星フェアリングを開発し、製造を行っています。
H-ⅡAロケット用の衛星フェアリングには様々なタイプがあり、国や民間の多様な衛星打上げニーズに対応しています。
また、H-ⅡBロケット用フェアリングには、国際宇宙ステーションに物資や実験機器を輸送する宇宙ステーション補給機(HTV)が搭載されます。
また、最近のH3ロケット、イプシロンロケットプロジェクトにおいても衛星フェアリングの設計・製造を担当しています。
国際宇宙ステーション「きぼう」
現在軌道上で運用中の、国際宇宙ステーション「きぼう」では、主要機器であるエアロック、船外実験プラットフォーム結合機構(EFBM)、空気調和装置の開発を担当しました。
また、材料の船外実験ができる簡易曝露実験装置(ExHAM:エクスハム)を開発し、現在船外活動実験プラットフォームの上で曝露実験中です。
ETS-VII(おりひめ・ひこぼし)
世界で初めて遠隔操作による無人のランデブ・ドッキングに成功した技術試験衛星VII型(ETS-VII)では、ドッキング機構、近傍センサおよびタスクボードの開発を担当しました。
1997年11月打上げ
1998年7月に初のランデブ・ドッキングに成功
次世代型無人宇宙実験システム(USERS)
日本で初めて軌道上からの再突入・回収に成功したUSERSでは、回収カプセルの構造・熱防御系の開発を担当しました。
2002年9月打上げ
2003年5月再突入・回収成功
回収カプセルの寸法:直径約1.5m、高さ約1.3m
その他宇宙関連機器
他にも宇宙開発のさまざまな分野に取り組み、将来に向けた各種の実験や、新技術の開発も行っています。
デブリ除去衛星
捕獲装置(試作品)とロケット衛星結合部
デブリ捕獲システム超小型実証衛星 DRUMS (Debris Removal Unprecedented Micro-Satellite)
宇宙ごみ(スペースデブリ)を除去するための技術実証を行います。
デブリ捕獲システム超小型実証衛星(DRUMS)の技術実証※計画
実施予定日 2023年12月25日
実施予定時間帯 8時45分頃~8時55分頃(日本標準時)
実施予備期間 2023年12月26日~2023年12月27日
軌道情報 (TLE) DRUMS
1 49401U 21102G 23354.65003749 .00004364 00000+0 29569-3 0 9995
2 49401 97.4589 42.3013 0020830 140.6913 219.5831 15.06797952115975
※衛星からターゲット分離、離隔、接近、ターゲット模擬捕獲までの一連のデブリ除去関連技術実証
再使用ロケット実験機
将来の完全使用型宇宙輸送システムを目指し、機体システム、飛行制御などの開発支援を行っています。
成層圏プラットフォーム飛行船
高度約20kmの成層圏に長期間停留する新しい通信・放送システムの基地を目指して、飛行船の研究を行っています。
ロケット射点設備
川崎重工では、昭和50年に宇宙開発事業団・種子島宇宙センターにN-Iロケット射点設備を納入し、それ以降N-II,H-I,H-II,H-IIA及びH-IIBロケット射点設備の開発、設計、施工を行いました。
納入した設備は、日本の基幹ロケットの打上運用に現在も使用されています。
特長
大型ロケット整備組立棟(屋高さ81m × 幅654m × 奥行き34.5m)は、H‐IIA及びH‐IIBロケットの組立、衛星の搭載及び打ち上げ当日までの点検・整備を行う建屋で、ロケット2機同時に組立・整備が可能です。
大型ロケット整備組立棟の「前面扉」は、2枚の引き戸方式となっており、1枚の扉が高さ67.46m、幅26.95m、厚さ2.5m、重さ400tもあり、2005年5月19日付けで「世界最大の扉」としてギネス ワールド レコードに登録されました。
液化水素貯蔵タンクは、ロケットの燃料である液化水素(LH2)を貯蔵するもので、LH2貯蔵タンク容量としては、国内最大です。以下に主要諸元を示します。
球形二重殻貯槽(容量:540m3)×3基 ・タンク内径 10.55m
水素ガス処理場は、ロケットからの排出水素ガス(GH2)を燃焼処理(水封式LPGバーナ燃焼方式)する設備で、処理量は80,000 Nm3/Hr です。
高圧ガス噴射設備は、ロケットエンジンから放出されるの未燃水素ガス(GH2)を燃焼処理・拡散させる設備です。
フェアリング組立作業台は、衛星とフェアリングの結合/整備を行う設備です。
プレスリリース
小型衛星用衛星分離部「Simple PAF」が宇宙空間での衛星分離に成功
2024年05月29日
Simple PAFシリーズ
左:Simple PAF 239M(φ239 mm)、中央:Simple PAF 8M(φ8 inch)、
右:Simple PAF 15M (φ15 inch)
各衛星分離部の前面についている箱状の部品がSimple Pin Puller350
川崎重工は、 H3ロケット試験機2号機により初めて打ち上げられた新規開発の非火工品分離デバイス「Simple Pin Puller(シンプル ピン プラー)」(火薬を使わず、電気信号により機械的な結合状態を解除し得るデバイス)と、それを利用した小型衛星用衛星分離部「Simple PAF(シンプル パフ)」が、宇宙空間で正常に機能することを確認しました。
衛星分離部(PAF:Payload Attache Fitting)とは、衛星をロケットと結合させ、宇宙空間到達後に衛星をロケットから分離させる機能を持つものです。
Simple Pin Pullerを用いたSimple PAFにより、衛星分離時の衝撃を和らげるとともに外乱を低減させるなど、衛星本体への負荷軽減に寄与します。
当社は、2019年から国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と、小型衛星用の非火工品分離機構を使用した衛星分離部の共同研究を実施するとともにJAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)における連携活動により運用性を向上し、これらの成果を活用した「Simple Pin Puller 350」と、これを用いたSimple PAF シリーズの「Simple PAF 15M」を製品化しました。
2024年2月に打ち上げられたH3ロケット試験機2号機における「超小型衛星相乗り※1」の取り組みで選定された50㎏級衛星の衛星分離部に「Simple PAF 15M」が、3U衛星※2の放出機構の非火工品分離デバイスとして「Simple Pin Puller 350」が有限会社オービタルエンジニアリング社製3Uポッドに採用され、いずれの製品も宇宙空間で正常に作動し、搭載された衛星は所定の軌道に投入されました。
<Simple PAF シリーズ・Simple Pin Puller 350の特長>(当社製従来品比べ)
○ 低コスト・短納期
○ 衛星分離時の低衝撃化(200Gsrs以下。ただし衛星質量等により変動する場合あり)
○ ITAR(米国の国際武器取引規則)の規制対象外であることから輸出の際の米国政府の許可は不要。
○ ユーザによる運用作業簡易化(特別な技術なしに衛星とPAFの結合作業が可能、など)
○ 従来の火工品の発火電流と同等の電流で作動
「Simple PAF」には、衛星分離面のインターフェース径が異なる3タイプのラインナップがあり、大小様々な衛星に対応可能です。また、「Simple Pin Puller 350」単体での販売も行っており、衛星の展開構造などを作動させるための装置として使用可能です。
今後も当社は、衛星フェアリングをはじめとした宇宙関連機器の実績と優れた技術力を活かし、国内国外を問わず世界の衛星打ち上げ事業ならびに宇宙空間を活用した社会発展に積極的に貢献していきます。
※1 : 超小型衛星相乗り
大学・民間企業等への継続的な軌道上実証機会提供を確保し、必要な技術知見を獲得することを目的とし、メインミッションに影響を与えない範囲で、質量が概ね100㎏以下の超小型衛星を搭載するJAXAの取り組み。
※2 : 3U衛星
1辺約10㎝の立方体(1U)を3個つなぎ合わせた大きさの衛星
自社開発のデブリ捕獲システム超小型実証衛星「DRUMS」軌道上技術実証に成功
2024年03月15日
川崎重工は、自社開発したデブリ捕獲システム超小型実証衛星「DRUMS」の軌道上運用において、仮想デブリを自律的に追尾・接近、捕獲機構を伸展する技術実証に成功しました。
DRUMS(Debris Removal Unprecedented Micro Satellite)は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の革新的衛星技術実証2号機※の実証テーマとして2021年11月9日にイプシロンロケット5号機により打ち上げられ、高度560kmの太陽同期軌道に投入されたものです。
本技術実証では、2023年12月26日に仮想デブリを軌道上に放ち、DRUMSが自律的に追尾・接近、捕獲機構を伸展するまでの一連の実証を実施したことで、衛星がデブリに接近して捕獲する技術の見通しを得ることが出来ました。
今後、本技術実証で得られた成果を活かして、スペースデブリ除去を含む軌道上サービスの実現を目指し、持続可能な宇宙開発・利用に貢献していきます。
デブリ捕獲システム超小型実証衛星「DRUMS」 技術実証中の衛星管制室の様子
※ 革新的衛星技術実証2号機
革新的衛星技術実証2号機は、「革新的衛星技術実証プログラム」の2回目の実証機会です。
「革新的衛星技術実証プログラム」は、宇宙基本計画で示された「衛星開発・利用基盤の拡充」の衛星開発・実証プラットフォームにおけるプロジェクトの戦略的推進の一環として、大学や研究機関、民間企業等が開発した部品や機器、超小型衛星、キューブサットに宇宙実証の機会を提供するプログラムです。
H3ロケット試験機1号機用フェアリングを出荷
2022年09月14日
川崎重工は、H3ロケット試験機1号機用衛星フェアリング※1を、岐阜工場での設計・部品製造を経て、播磨工場にて組み立て後、種子島宇宙センターに向けて出荷しました。
本衛星フェアリングは、種子島宇宙センターで三菱重工業株式会社に納入され、H3ロケット試験機1号機に組み込まれます。
なお、同ロケットには国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の先進光学衛星「だいち3号」(ALOS-3)※2が搭載される予定で、今後、打ち上げに向けて準備作業が進められます。
当社は、1993年に納入したH-Ⅱロケット用衛星フェアリングを皮切りに、各種衛星フェアリングの開発・製造に携ってきました。
これまでにH-Ⅱロケット7機、H-ⅡAロケット45機、H-ⅡBロケット9機、合計61機分の衛星フェアリングを納入した豊富な実績を持っています。
また、固体燃料ロケット・イプシロンロケットにも6機分を納入するなど、現在は国内唯一の衛星フェアリング製造企業として各種衛星需要に対応しています。
今後も当社は、これらの実績と優れた技術力を活かし、我が国の衛星打ち上げ事業ならびに宇宙空間を活用した社会発展に積極的に貢献していきます。
【H3ロケット試験機1号機用衛星フェアリングの概要】
型 ショートタイプ(S)
全長 約10.4メートル
直径 約5.2メートル
※1 : 衛星を格納する部分で、ロケット先端部に取り付けられ、打ち上げ時の空力加熱、音響(振動)などの過酷な環境から衛星を保護するもの。大気圏外に達した後、左右に2分割して衛星を分離する。添付写真の左側の円錐台構造は、衛星フェアリングの構成品の「衛星搭載アダプタ」
※2 : 陸域観測技術衛星「だいち」の光学ミッションを引き継ぐ地球観測衛星。全地球規模の陸域を継続的に観測し、蓄積した平常時と災害発生時の画像を迅速に取得・処理・配信するシステムを構築することで、国および自治体などの防災活動、災害対応に無くてはならない手段のひとつになることを目指している。
川崎重工技法報
第179号 航空宇宙システム特集号
発刊:2018年5月
(※それぞれPDFを閲覧できるようになっていました。内容は省略しますが、宇宙関連1件と特許2件については末尾に掲載しました。)
PDF:1.25MB
PDF:293KB
全文 (PDF:29.20MB)
【巻頭インタビュー】
航空宇宙システム事業の近況と今後の展開(PDF:1.65MB)
【総括説明】
航空宇宙システム分野における製品・技術展開(PDF:3.82MB)
技術解説
最新鋭大型旅客機「ボーイング777X」(PDF:3.27MB)
大型ターボファンエンジン「Trentシリーズ」の開発(PDF:4.19MB)
小型標的機の開発 -独自技術による低コスト化-(PDF:2.62MB)
ロケット用フェアリングの開発(PDF:3.69MB)
ロボットを活用した航空機の機体・エンジンへの新接合技術および仕上げ技術の開発(PDF:6.11MB)
航空エンジンの高性能化に向けた要素技術の開発(PDF:3.45MB)
航空機用ギアボックス設計技術の高度化(PDF:3.74MB)
空力技術による航空機からの搭載物分離特性評価(PDF:2.83MB)
ヘリコプター用救助支援システムの開発(PDF:3.08MB)
航空機用テレメータ・ネットワーク技術(PDF:3.04MB)
新製品紹介
固定翼哨戒機「P-1」および輸送機「C-2」(PDF:2.48MB)
リージョナルジェット機用エンジン「PW1500G」/「PW1900G」(PDF:2.22MB)
高性能多用途双発ヘリコプター「H145//BK117 D-2型」(PDF:2.25MB)
特許紹介
薄板曲面被加工物の加工装置(PDF:1.58MB)
燃料噴射装置(PDF:1.58MB)
【以下は上記PDFからの記載です。図は省略しています。】
特許紹介1
特許 第4890424号発明の名称:薄板曲面被加工物の加工装置発明者:笠原 健治,田村 純一,鈴木 悟史,後藤 喜朗, 佐々木 勉,柏原 仁―航
空機用部品の高精度加工を支える 航空機は非常に精密な機械構造物であり,用いられる部品には高い加工精度が求められる.
このために,被加工物を非常に高い精度で固定して加工する必要がある.
このような被加工物の固定手段として,一般的には被加工物を上下から挟み込むクランプが用いられている.
しかし,クランプにより固定した箇所は,加工工具と干渉するため工作機械で加工することができない.
このため,加工の進捗に応じてクランプの位置替え作業を行う必要があり,加工時間が増大するという課題があった.
本発明は,図1に示すように,3次元曲面形状の薄板状の被加工物を枠体の上面に載置し,被加工物を吸引部で吸引して枠体の上面形状に沿わせて正確に固定することで位置決めできる加工装置である.
被加工物を高い精度で固定することができるとともに,加工面の干渉物が無くなるため加工中の被加工物の固定作業時間を削減することができる.
第5988261号発明の名称:燃料噴射装置発明者:松山 竜佐,小林 正佳,堀川 敦史
―クリーンな航空エンジンを実現する
航空機による環境負荷を低減するため,ジェットエンジンから排出される大気汚染物質,特に窒素酸化物NOxの低減が求められている.
NOxの排出量は,ジェットエンジン内部の燃焼温度を下げることで低減することができる.
その方法の一つとして,希薄燃焼方式の燃料噴射装置が知られている.希薄燃焼方式では,あらかじめ燃料と空気を混合して予混合気を形成して燃焼させる.
しかし,予混合気の混合が不均一であると, 燃料濃度が高い部分において燃焼温度が高くなり,NOxの排出量が増加してしまう.
ジェットエンジンでは,スペース上の制約から,均一な予混合気を形成するための流路を確保することが困難であるという課題があった.
本発明は,径方向寸法の増大を抑えながら,均一な燃料分布の予混合気を形成することが可能な燃料噴射装置である.
図1に示すように,径方向に流れる空気1と燃料の混合気が軸方向に流れる空気2にほぼ直角に合流する構成によって,寸法の増大を抑えながら均一な予混合気を形成するものである.予混合気
特許紹介2
特許紹介特許 第4890424号発明の名称:薄板曲面被加工物の加工装置発明者:笠原 健治,田村 純一,鈴木 悟史,後藤 喜朗, 佐々木 勉,柏原 仁
―航空機用部品の高精度加工を支える
航空機は非常に精密な機械構造物であり,用いられる部品には高い加工精度が求められる.
このために,被加工物を非常に高い精度で固定して加工する必要がある.このような被加工物の固定手段として,一般的には被加工物を上下から挟み込むクランプが用いられている.
しかし,クランプにより固定した箇所は,加工工具と干渉するため工作機械で加工することができない.このため,加工の進捗に応じてクランプの位置替え作業を行う必要があり,加工時間が増大するという課題があった.
本発明は,図1に示すように,3次元曲面形状の薄板状の被加工物を枠体の上面に載置し,被加工物を吸引部で吸引して枠体の上面形状に沿わせて正確に固定することで位置決めできる加工装置である.
被加工物を高い精度で固定することができるとともに,加工面の干渉物が無くなるため加工中の被加工物の固定作業時間を削減することができる.
吸引部枠体図1 被加工物を固定する枠体と吸引部特許 第5988261号発明の名称:燃料噴射装置発明者:松山 竜佐,小林 正佳,堀川 敦史―クリーンな航空エンジンを実現する 航空機による環境負荷を低減するため,ジェットエンジンから排出される大気汚染物質,特に窒素酸化物NOxの低減が求められている.
NOxの排出量は,ジェットエンジン内部の燃焼温度を下げることで低減することができる.その方法の一つとして,希薄燃焼方式の燃料噴射装置が知られている.
希薄燃焼方式では,あらかじめ燃料と空気を混合して予混合気を形成して燃焼させる.しかし,予混合気の混合が不均一であると, 燃料濃度が高い部分において燃焼温度が高くなり,NOxの排出量が増加してしまう.
ジェットエンジンでは,スペース上の制約から,均一な予混合気を形成するための流路を確保することが困難であるという課題があった.
本発明は,径方向寸法の増大を抑えながら,均一な燃料分布の予混合気を形成することが可能な燃料噴射装置である.
図1に示すように,径方向に流れる空気1と燃料の混合気が軸方向に流れる空気2にほぼ直角に合流する構成によって,寸法の増大を抑えながら均一な予混合気を形成するものである.
【技術解説PDFより記載しています。図は省略しています。】
ロケット用フェアリングの開発
Development of Payload Fairings for Launch Vehicle
まえがき
人工衛星による画像や位置情報を利用した安全保障,防災,民間サービスが一般的になり,宇宙産業の市場規模が増加している.
一方で,ロケットを用いた衛星打上げビジネスにおいては,米国企業家の参入などにより価格破壊が起こり,高性能なロケットをより低価格で供給することが求められている.
1 背 景
人工衛星には,偵察衛星や気象衛星に代表される官需衛星と,通信・放送衛星に代表される商業衛星がある.
衛星打上げビジネスは,年間20~30機の商業衛星を日米欧露の航空宇宙企業が取りあう構図が続いていたが,2010年にスペースX社が低価格のファルコン9ロケットで参入して価格破壊が発生した.
さらに中国やインドなど新興国のロケット技術の進歩も目ざましく,今後ますます競争が激化することが予想されている.
このため,日米欧ではコスト競争力を持つ次世代の大型ロケットを2020年頃に市場投入するべく開発が進められている.
当社は,1984年に「H-Ⅱ」ロケットのフェアリングを開発して以来,「H-ⅡA」/「H-ⅡB」ロケットや「イプシロン」ロケットを通して技術の改良を続け,国内すべての主力ロケットのフェアリングを供給するに至っている.
現在は,「H3」ロケット用フェアリングの開発を担当し,2020年度の初号機打上げを目指して低コストで高性能なフェアリングの開発に取組んでいる.
2 フェアリング
フェアリングは図1に示すように,ロケット打上げまでは内部(衛星搭載空間)の温湿度や清浄度を一定に保ち,飛翔中は空気抵抗を低減するとともに,空力加熱や音響振動環境から衛星を保護する役割を担う.
そして,大気密度が十分に小さくなる高度約100kmで,分離機構を作動させて2片に分割され,ヒンジ周りに回転(開頭)してロケットから分離される.
フェアリングの構成は図2に示すように,2つの半殻構体を機軸方向の分離機構(直分離機構)で結合し,それをロケット本体と円周方向の分離機構(曲分離機構)で結合する形態になっている.
また,フェアリングには,衛星クルーが整備に使うアクセスドアや,衛星が地上設備と通信するための電波透過窓が衛星ごとに設置される.
その他,地上設備を通して内部に清浄な空気を取り込むための空調ドア,空力加熱から構体および内部の温度上昇を防ぐための断熱材,エンジンおよび大気から受ける音響振動を低減するための吸音材である防音ブランケットなどを装備している.
繊細な電子部品を多く搭載する人工衛星をできるだけ軽量に作るためには,熱・音響振動・衝撃などの衛星周囲の環境条件が緩いことが重要であり,衛星を保護するフェアリングが担う役割は大きい.
3 フェアリングを支える技術⑴
分離機構
フェアリングの中で最も技術的難易度が高いのは分離機構である.
分離機構は構造をつなぐ強度部材であるため,超音速で発生する空力荷重に耐える強度が求められる一方で,分離時に衛星に加わる衝撃を小さく抑えるために少ないエネルギーで分離できるよう強度を低く抑える必要があり,相反する要求をバランスさせるように設計する必要がある.
また,フェアリングの分離不良はミッション失敗に直結するため,高い信頼性が要求される. 当社はより一層の確実性と低コストを重視して,「H-Ⅱ」ロケットのフェアリング開発時に戦闘機のキャノピーの緊急分離装置に使用されていたフランジブルボルト(ノッチ付ボルト)方式をベースに,日本独自の分離機構を開発することにした.これは,V字溝(ノッチ)を掘って切れやすくしたボルトを火薬の力で切断する方式である.
材料・ノッチの形状・ステンレス扁平管の板厚などのパラメータをわずかに変えるだけで分離不良や衛星汚染につながる扁平管の破裂が生じることになるので開発に時間を要したが,膨大な数の試験からパラメータを絞り込むことで,現在でも新機種に適用できる信頼性の高い分離機構を実現した(図3).
⑵ 環境緩和ⅰ
断熱材
大気との摩擦熱による構体の温度上昇を防いで衛星周囲の温度を適切に保つため,フェアリングの外表面には断熱材が施工される.
当社は「H-Ⅱ」ロケットのフェアリング用としてシリコン樹脂にガラスのマイクロバルーンを混ぜた軽量断熱材を開発し,軽量化と断熱性向上を同時に実現した.
ⅱ 防音ブランケット エンジンや大気との摩擦で生じる音響振動を下げるため,フェアリングの内面には防音ブランケットが装備される.
この吸音材にはガラスウールや発泡樹脂が用いられるが,衛星搭載空間にほこりが拡散しないようフィルタ付きのカバーで包んでいる.
これは,ロケットの上昇による減圧環境でカバーが破裂するのを防ぐためである.ロケット機器の設計においては,減圧も軽量化とともに必須の条件となる.
⑶ 構造および形態ⅰ 構 造 フェアリングの構体は,開頭時の変形をできる限り小さく抑えて空気抵抗を下げるため,小さな直径でより大きな衛星搭載領域を確保できるように,軽量で曲げ剛性が高いハニカムサンドイッチが主流となっている.
サンドイッチ構造は,軽量のコア材の両面に薄板を接合するもので,コア材の板厚を増すことで重量増加を抑えつつ非常に曲がりにくくできる特長を有している.
コア材に蜂の巣形状のハニカムコアを用いたものをハニカムサンドイッチ構造と呼び,コアの材質にはアルミ合金やメタ系アラミド繊維などがある.
また,スキン材としてはアルミ合金や炭素繊維強化プラスチックCFRPがよく用いられる.
当社のフェアリングは,アルミ合金ハニカム/アルミ合金スキン構造が多いが,軽量化が要求される下部フェアリングなどではCFRPスキンを採用しているものもある.
ⅱ 形 態「H-Ⅱ」ロケットは直径4mのロケットで,静止トランスファ軌道に4tの衛星を運ぶ能力を有していた.
これに対して,衛星の質量や形状はミッションにより異なり,直径4mを超える超大型衛星や2t以下の小さな衛星などさまざまであった.
そこでロケットの有益性を高めるため,図4に示すような超大型衛星用の直径5mのフェアリング(5S)や2つの衛星を同時搭載可能なフェアリング(4/4DLS,5/4D)を開発した.
フェアリングのバリエーションが増えると,それに合わせた構体パネルの成形型や組立用の治工具が必要になるが,設備投資を極力抑えるために,各機種間でパネルを共通化したり治具に長さ調整機能を持たせるなどの工夫を行った.
4 新規技術への取組み
⑴ 「イプシロン」ロケットにおける取り組み
2010年から開発が始まった「イプシロン」ロケットのフェアリングでは,低コスト化と利便性の向上を目的に,「HⅡ」シリーズである「H-ⅡA」/「H-ⅡB」の設計を踏襲しつつ,新たな技術開発に取り組んだ.
ⅰ 半殻一体水没化構体 ロケットから分離されて海上に着水したフェアリングは,ハニカムコアの内部が空隙であるため沈まずに浮遊する.
日本では,浮遊するフェアリングが船舶の航行に支障を与えないように,ロケット打上後に船によって回収しているが,費用が高く天候に依存するという点で問題があり,フェアリングに水没化が求められるようになった.
このため,航空機のエンジンナセルの吸音用ハニカムコアを応用した.
エンジンナセルのハニカムコアは,降雨や洗浄で流入する水を抜くため図5に示すようにセル壁にスロットを付与しており,これをパネル内に海水を通すために使用した.
また,「H-Ⅱ」シリーズでは複数のパネルをボルトで接合して半殻の構体を作っていたが,「イプシロン」ロケットのフェアリングでは先端部と直胴部のつなぎ目を緩やかな曲面形状とすることで,半殻一体成形を可能として組立費用を低減した.
半殻一体成形については,スキン・コア・接着剤などの部品を成形型上に積上げる際の頂上部へのアクセスと側面の部品の固定が難しいという製造上の課題が懸念されたが,治工具の設計時に3次元CADを用いた製造シミュレーションを繰返し行って,適切な成形型や足場を製作して対応した.
ⅱ シート貼付け式断熱材「H-Ⅱ」シリーズのフェアリングでは,前述のガラスマイクロバルーン入りシリコン断熱材を専用の塗装ブースでスプレー塗布していたが,乾燥に時間がかかるため製造機数の増加に伴い塗装ブースが製造の制約になることがあった.
そこで,あらかじめシート状に成形されたシリコンフォームを接着剤で貼り付ける方法を開発した.これにより組立エリア内での断熱施工が可能になり,製造工程の制約解消した.
ⅲ クイックアクセスドア「イプシロン」ロケットは固体燃料を使用するため,液体燃料のロケットのように打上げ直前に長時間かけて燃料を充填する必要がない.
この打上げの即応性を最大源に生かすため,フェアリングに対してはアクセスドアのクローズ時間を短くすることで,ロケットや衛星の整備時間を短縮する工夫が求められた.
⑵ 「H3」ロケットにおける取り組み 冒頭で述べたように,今後のロケットにはコスト競争力が求められる.
「H3」ロケットは,高い信頼性と衛星ミッションに応じた柔軟なサービスを低コストで提供することを目指しており,フェアリング開発において以下の取組みを行っている.
ⅰ 自動積層装置AFPの導入 構体パネルの製作費の低減と生産機数の増加に同時に対応するため,自動積層装置AFP(Automated Fiber Placement)を導入してCFRPを低コストで積層する.
AFPは「ボーイング787」の胴体製造に適用しており,欧米においても導入が進んでいるが,ハニカムコア上への積層には新たな工夫が必要となる.
たとえば,ハニカムコアを型に抑えつけたり,セル壁間でCFRPが垂れないよう適切な張力をかけたりする必要がある.
ⅱ 脱オートクレーブ接着技術の活用
「H-ⅡA」/「H-ⅡB」ロケットのフェアリングは,構体パネル同士の結合をボルトとナットで行っているが,「H3」ロケットでは質量とコストを同時に低減するため接着技術を最大限に活用することとして,脱オートクレーブ接着技術を適用する.
5 ~6気圧で成形するオートクレーブ成形に比べると,
真空引きによる1気圧で部品を抑えつけて接着するため,加熱前に十分に脱気を行わないと接着剤に気泡(ボイド)が生じて強度低下の原因となってしまう.
このため,クーポン試験を繰返して治具建てを工夫し,ボイドが十分に少なくなる生産条件を設定した.
また,図₆のようにフェアリング先端部を模擬した曲面パネルを実際に接着して,実機製造に向けて準備を進めている.
ⅲ 機種間におけるシナジー効果の発揮
上記の技術以外にも,水没化構造,クイックアクセスドア,シート式断熱材など「イプシロン」ロケットで獲得した技術に改良を加えて適用していく計画である.
一方で「イプシロン」ロケットにも発展型開発の計画があり,今後は「H3」と「イプシロン」などロケット機種間のシナジー効果により効率的にフェアリング技術を発展させる.
あとがき
衛星打上ビジネスは今後新興国の参入が予想され,これまで以上にコスト競争力が重要になる.
今後も社内の技術を結集してチャレンジングな開発を続けることで国際競争力を維持し,フェアリング事業を拡大していく.
参考文献
1 ) 駒田,堀江,筒井,関根,小林,平野,迎田,佐藤,鬼鞍,福野,田河,豊田:“宇宙ステーション補給機「HTV」用 H-IIBロケット・フェアリング”,川崎重工技報,No.171, pp.20-23(2011)
【私の感想】
公式ホームページ内で「宇宙」を検索すると4193件ありました。川崎重工だけでシリーズを組まなければならないぐらいの情報量でしたので後日取り組みたいと思います。
衛星フェアリングとはJAXAのHPに簡単に書いてありましたので以下引用します。
衛星フェアリングは、ロケットが大気中(地上~高度100km強)を飛行する際の風圧や、風圧によって発生する力や、空気との摩擦熱から衛星を守るためのカバー(覆い)です。 ロケットが大気圏外まで上昇すると機体から分離されます。開発、製造は川崎重工業株式会社が担当しています。
川崎重工業と聞くとオートバイのイメージが大きいので、オートバイのエンジンを覆っているカウリングから連想して「衛星フェアリング」を理解しようとしたのですが、間違っているかもしれません。
公式ホームページには技術解説が山ほど出てくるのですが、理解するのは難しいです。こんなにあるのかと納得することで宇宙関連分野に深くかかわっていることを理解しました。
いつになるかわかりませんが、三菱重工業やIHIとも比較検討してみたいと思います。日本を代表する宇宙関連企業として株価等を監視してみたいと思います。
自衛隊との問題で最近ニュースになっているのも気になっています。