覚悟なんて、決めたくない
「最悪の場合、今週来週には亡くなるかも」
獣医師から言われたと、実家から連絡が入った。後先考えず、とりあえず飛行機のチケットを取った。お願いだからまだ元気でいてと思いながら。
我が家がミントと出会ったのは、私が高校生の頃。当時はまだ珍しいミニチュアシュナウザーというヒゲが特徴のわんこを迎えることを決め、3月10日生まれだからミントと名づけた。
ぺテトテでのリレーnote企画でも書いています。
そんなミントも15歳。人間にすると70歳を超えてきて、体の節々にガタが出始めているのも聞いていた。
家に帰るとミントは寝ていた。ちらっと横目で私の方を見て、また寝てしまった。
ほんの1年前は楽しく散歩できてたのに。少し離れただけでこんなにも変わってしまうの。
命あるものに寿命があることは、知っている。犬の寿命が短いことも、老化していくことも、できないことが増えていくことも、知ってる。理解はするけど分かりたくない。
確実に来るその時だって、正確な時間までは分からない。私にも私の生活があるので、数日過ごして実家を出た。
飛行機に乗る前、一応の心づもりのつもりで背中を撫でた。ただ、「また来るから」「すぐ来るから」と繰り返した。
「覚悟はしておいてね」
覚悟ってなんだろう。覚悟できました、なんて言うわけないじゃないか。
今日も明日も元気でいなきゃ嫌だと、離れた場所で毎日毎日、私は駄々をこねている。覚悟なんてしたくない。実家に帰ればミントはいるんだ。