香川本山寺の鐘の音とおばあちゃん
香川に滞在中の早朝、友人が近くの七宝山持宝院本山寺に連れていってくれた。
五重塔もあり立派で広大な寺の境内。
何名かのお年寄りの方たちが境内の掃除をされていた。きっと毎日お掃除されているのだろう。境内はとても綺麗で清々しい気持ちの良い朝だった。
私はお寺の立派な鐘を鳴らしたいとふと思った。
でも、まだ早朝だし、大きい音は鳴らしてはいけないかな、などどいろいろ考えながら恐る恐る鐘をついてみた。
境内に響く鐘の音は、それはそれはおとなしめの音だった。
近くに居た落ち葉の掃き掃除をしていた体の小さなおばあちゃんが私に向かって声をかけてくれた。
「やさしい鐘の音。上手に鳴らせたね〜。」
そう笑顔で言ってくれた。
友人のところに行くと、何をそんな自信なさげに鐘を鳴らすのかと。もっと思いっきり鐘をついてきたらどうか、と私に言った。
再度私は鐘のところに駆け上がった。
よーし、深呼吸をして心を落ち着け、集中して鐘をついた。先程よりずっと力強く鐘の音が境内に響き渡った。
さっきのおばあちゃんのところに私は歩いていって会釈したら、おばあちゃんはまた優しい笑顔で言ってくれた。
「良い音だね〜。上手に鳴らせたね〜」
鐘の音でこんなに褒めてもらえるなんて。
私は素直に嬉しかった。
「また鐘を鳴らしにいらしてね。」
そうおばあちゃんは笑顔で私に言ってくれた。
本山寺の清々しいあの日の朝を私は忘れないだろう。自信無さげな私の鐘の音でもなんでも笑顔で受け止めてくれた。
もしかしてあのおばあちゃんは観音様だったのかな。ふとそんな感じがした。