松永K三蔵ー地方に根差した執筆ー

松永K三蔵ー地方に根差した執筆ー

松永K三蔵の小説は、『カメオ』と『バリ山行』の、二冊しか読んで居ない。勿論、エッセイなど、少なからず、文芸誌で読んではいるが、小説としては、二冊である。しかし、この二冊のインパクトはすごい。とにかく、読者を引き込む磁場というものが働いている。自分も関西圏に住んで居るので、知って居る地名が出て来ると、あっ、と思わず嬉しくなるものだ。それにしても、松永K三蔵が、この地方に拘るのは、端的に言って、阪神間が好きだから、という事だと理解している。

地方に根差した執筆というものは、遡及すれば、多くの小説家達が、その様に小説を取り扱ってきた日本文学の経緯がある。しかし、松永K三蔵の場合は、その深度というものが、殊の外強い様に思われる。愛着、というものだろうか、ここまで地方を突き詰めた小説家も珍しいと思うのだ。

この様な形で、以前、自分は『バリ山行』を、風土記として論じた。強ち、間違って居ない様に、『カメオ』を読んで、強く思った。

松永K三蔵ー地方に根差した執筆ー、として述べて来たが、要は、松永K三蔵の方法論なのであろう。住んで居る場所から近い場所として、書き易い、と言った点も、有るだろう。何より、その場所の点と点を結んで、危険な登山をしたり、バイクで走ったり、とても、松永K三蔵の小説の主人公は、充実した日々を過ごして居るかに見える。それは、「地方に根差し」ているからこそ、書けるという強みがある。また、小説は狭い部屋の世界を言葉で書かれたものも多いが、松永K三蔵の場合は、阪神間という広い世界を表現で描いたものである。広い世界の小説という意味において、今度は、地方から世界へと足を伸ばした、松永K三蔵の小説を読んでみたい。

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