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長崎を最後の被爆地に。鎮魂と誓いの式典

人類よ、戦争を計画してくれるな。原子爆弾というものがある故に、戦争は人類の自殺行為にしかならないのだ。原子野に泣く浦上人は世界に向かって叫ぶ。戦争をやめよ。ただ愛の掟に従って相互に協商せよ。浦上人は灰の中に伏して神に祈る。ねがわくば、この浦上をして世界最後の原子野たらしめたまえと。鐘はまだ鳴っている。
「原罪なくして宿り給いし聖マリアよ、おん身により頼み奉るわれらのために祈り給え」
 誠一と茅乃とは祈り終わって、十字をきった。

永井隆『長崎の鐘』


過去にこれほど、長崎平和祈念式典が世間から注目されたことがあったのだろうか。

もっとも、式典の中継は全国ではNHKに限るようだ。スレッズを見ているとそのようだった。
長崎に住み始めて、式典は何時からか確認しようと新聞の番組表を見ると全局式典の中継をしていることに驚いた。関東に住んでいたときはNHKでしか放送しないものだと思っていたから。

長崎に住む者として、原爆と聞くと
世間様は広島をイメージする。長崎はついでにという印象がある。
広島の原爆について描いた作品が多いゆえもあるだろう。
とくに漫画では「はだしのゲン」や
「この世界の片隅に」で広島の人々がどのように原爆に苦しめられてきたか、戦時中、戦後広島の人々の生活がよくわかる。

対して長崎は…すぐ思いつく作品はあまりない。

私は長崎で生まれた。が、幼い頃にすぐ横浜引っ越し、横浜で育った。
小学校の平和教育では広島原爆についての映画をみた。
長崎にも原爆が落ちた、落とされたというのは知識というか単語が頭の片隅にあったが、キノコ雲の下で何があったのか、どういった人々が死んでいったのか苦しんだのか分からなかった。情景が浮かばない。思いを寄せることができない。

そんな時間が長くつづいた。
あるとき、朝ドラで「エール」という作品が放送された。

そのなかで出てきたのが永井隆博士をモデルにした人物とその著作『長崎の鐘』であった。

長崎医科大学、現在の長崎大学医学部の助教授であった永井隆博士は
8月9日、長崎原爆によって被爆

自身も負傷しながら、被爆者の救護活動をし、原爆による放射線障害について追究し、被爆者に心を寄せた手記が『長崎の鐘』だ

そんな作品が長崎にあったとは知らなかった私はすぐに本を探した。はじめは図書館で借りて読んだ。これは買わないといけないなと思い、ネットで探したがドラマの影響もあったのか売り切れていた。仕方なく電子書籍で探してみたところ

なんとさらに驚くことに『長崎の鐘』は電子書籍なら無料でダウンロード読むことができる。これはもっと知られた方がいいと思い、スレッズでも引用して投稿したところ反応してくださることが多かった。

ここでは青空文庫のを添付しておく。

「青空文庫」はアプリにもあるのでダウンロードしてみてもよいと思う。
名作文学が他にもたくさん読めるのでぜひ。

爆心地公園にて行われた今年度の
長崎平和祈念式典の前夜祭

長崎市は今年の平和祈念式典にイスラエルを招待しなかったことでアメリカをはじめとした欧米の駐日大使が式典に参加しなかった。
以前から招待されていないロシアと同じにされたくない。という理由から。

それぞれの政治的主張はともかく、
人道的なものとして
被爆者の死を悼むことはできない世界はやはり異常で危機的なのだと痛感する。

人を思う余裕が、各国の政治家たちになくなってきているのだ。

そんななか、長崎市の鈴木市長の平和宣言はとても力強かった。

核を持ってるからこそ戦争が終わらないのだ

それをはっきり言ってくれた。

事実そうだろう。歴史が証明している
アメリカは、原爆が戦争を終わらせたと言っているがいまだ戦争は続いている。

復讐、報復の連鎖がある限り
人々に憎しみがある限り
核兵器があろうと家族や友人、恋人、我が子の仇を討たんとするだろう。

『長崎の鐘』でも、復員してきた学生が永井博士に原爆を落としたアメリカに報復を、という場面がある。

戦争を終わらせたのは、他ならぬ日本人自身なのだ。もっと早く決断してくれていればと思うが、降伏し和平の道を選んだことは誇っていいのではないか。

そして、平和の道を進んでほしい。
武力を使わず、対話で。

「如己愛人」
己の如く人を愛する
永井博士の言葉

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