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1/100日目「迷い込んだ黄金の街:アゼルバイジャン🇦🇿 バクーの誘惑」

100日間の旅、1日目:黄金の街バクーへ

「バクーって、どんな街?」

旅に出る前、何度か聞かれた。でも正直、ピンとこなかった。
アゼルバイジャンの首都、カスピ海沿い、石油が豊富、フレイムタワーがある……。

それくらいの知識しかなかったけれど、100日間の旅の最初の地として、何か惹かれるものがあった。

飛行機がバクー・ヘイダル・アリエフ国際空港に着陸し、入国審査を抜ける。
空港は近代的で清潔。モスクワやイスタンブールほどの喧騒はなく、静かで整然としている。

「さて、どうやって市内に行こう?」

空港のインフォメーションセンターで聞くと、スタッフの女性があっさり答えた。

「タクシーで行くのがいいわよ」

でも、空港前のタクシーにはどこか不安があった。ぼったくりのイメージが頭をよぎる。

「バスとかはない?」

そう尋ねると、彼女は少し微笑んでこう言った。

「バクーは世界で一番綺麗な街なの。それを誇りに思ってるわ」

自信に満ちたその言葉が、なんだか印象に残った。

結局、バスを探すのを諦め、タクシーで旧市街へ向かうことにした。

黄金の街、バクー

車窓から流れる景色を見て、まず驚いた。


「綺麗すぎる……」

旧ソ連の国という先入観が一気に崩れる。
道路は広く、どこまでもピカピカ。ゴミひとつ落ちていない。

建物も美しく、白やベージュの石造りが続く。
ヨーロッパの街並みを思わせる洗練されたデザインと、中東の影響を感じるアーチや装飾。

そして、夕日に照らされるバクーの街はまるで 黄金色に輝いていた。

「こんな街があったんだな……」

到着早々、バクーの第一印象は 予想以上に圧倒的 だった。

旧市街の迷路と、乙女の塔のサンセット

宿泊先は 旧市街(イチェリ・シェヘル) にあるブティックホテル。
石造りの壁に囲まれた小さな宿は、歴史の中に溶け込んでいた。



フロントで「オススメのディナーは?」と聞くと、スタッフはすぐに「郷土料理のレストラン」を教えてくれた。
でも、まだ夕食には早い。

街の空気を感じたくて、旧市街を歩いてみることにした。

旧市街は、まるで迷路。

細い石畳の路地が入り組み、古い家々が肩を寄せ合って建っている。
猫がのんびり歩き、店先にはカラフルなアゼルバイジャン絨毯が並んでいた。

そんな中、目に飛び込んできたのが 乙女の塔(Maiden Tower)。


煙突のような独特の形をした世界遺産。
高さは30メートルほどで、どこかミステリアスな雰囲気がある。

「せっかくだし、登ってみるか」

螺旋階段を上がり、塔の上に出ると……。

目の前には、バクーの街を一望できる絶景が広がっていた。

カスピ海が光を反射し、遠くの水平線まで続く青。
旧市街の石造りの家々が広がり、その向こうには 近未来的な高層ビル群。

そして、夕陽に照らされた フレイムタワー が炎のようにそびえていた。

「バクーって、こんなに絵になる街だったんだな……」



ゆっくりと沈んでいく太陽を眺めながら、旅の始まりを噛みしめた。

スパイスが香る、羊のスープ

夕暮れが街を包む頃、教えてもらった郷土料理のレストランへ。

メニューを開くと、アゼルバイジャンの伝統料理がずらり。

迷った末、スタッフに「おすすめは?」と聞いてみると、すぐに答えが返ってきた。

「羊のスープ(ピティ)が美味しいわよ」

しばらくすると、小さな陶器の壺に入った ピティ が運ばれてきた。
蓋を開けると、スパイスの香りがふわっと広がる。

スープをひと口すすると、羊肉の旨味がじんわりと口の中に広がる。
じっくり煮込まれた肉はスプーンですくうだけでホロホロと崩れ、ヒヨコ豆がスープに染み込んでいる。

「……これは、うまい。」

旅の始まりにふさわしい、滋味深い一杯だった。



夜のビーチ、煌めくフレイムタワー

夕食を終えた後、もう少し歩きたくなって バクー・ブルーバード へ向かった。

カスピ海沿いの広い遊歩道は、夜の散歩にぴったり。
潮風が心地よく、波の音が静かに響いている。

遠くを見上げると、夜空に浮かぶフレイムタワー。

赤や青、紫とゆっくり色を変えながら、炎のように輝いている。
ビーチに座り、その光をぼんやりと眺めていた。

「バクーの夜って、こんなにロマンチックなんだな」



旅の1日目が終わる。

バクーの街は、昼と夜、そして歴史と未来が交差する 不思議な魅力 を持っていた。

これから始まる100日間、この旅は 間違いなく面白いものになる という確信があった。

次回:バクー郊外、神秘の炎と古代遺跡

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