西瓜糖に浸っていたい
好きな本とその本の一節を紹介していきます。ステイホーム期に一週間ブックカバーチャレンジをしていた時の文章です。
リチャード・ブローティガン『西瓜糖の日々』
「いま、こうしてわたしの生活が西瓜糖の世界で過ぎてゆくように、かつても人々は西瓜糖の世界でいろいろなことをしたのだった。あなたにそのことを話してあげよう。わたしはここにいて、あなたは遠くにいるのだから。」
不思議な小説です。まどろんでいる時にみる夢のような、曖昧で抽象的でつかめない物語。
西瓜糖の世界のコミューン的な場所、アイデス〈iDEATH〉の近くに主人公は住んでいます。アイデスの物はみんな西瓜糖からできていて、人々は穏やかに暮らしています。主人公は穏やかなアイデスでの穏やかでない出来事、過去の回想、〈忘れられた世界〉について物語っていきます。あらすじにすると変な話なので、できれば何も知らずに読んで楽しんでほしい本。
詩のような美しい言葉選びにうっとりし、謎を考察する(若干SFっぽい)楽しい一時を過ごせる一冊です。
翻訳された文章が好きなのですが、今まで読んだ文章の中で一、二を争う大好きな翻訳小説です。
カズオイシグロの翻訳や村上春樹の文章が好きなら近いものを感じると思います。
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