機器の選定とか準備が始まった

エキュート立川に場所を見つけたのは良いけれど、何から手をつけたら良いのか分からない。以前からお世話になっていたアインファーマシーズが隣に薬局を開設することになっており、子会社であるメディウェルの方が中心となってオーガナイズし、設計、開業支援の取り付け、役所への手続きなど一連の開業準備を進めた。

医薬品卸業者とは

医薬品卸は東邦薬品を紹介され、開業支援部の方に機器の選定など手伝ってもらった。なぜ医薬品卸が開業支援するのか?それは医薬品の流通の慣行によるところが大きい。医療機関が医薬品を購入する際は、製薬会社に発注するのではなく、医薬品卸業者に発注する。製薬会社は医薬品を開発、製造して医薬品卸業者に卸す。卸業者は倉庫を作って在庫を持ち、物流センターと配送網を構築して医療機関に販売する、という風に分業化されているのだ。
医薬品卸業者は、「開業支援」という名目で費用は請求しないけど、当然自社が扱う製品が売れれば、利潤が得られる。クリニック内部の事は隅々まで知り尽くしているので、開業後も自社に発注してくださいね、という営業活動だ。結局、開業後もほぼエクスクルーシブに東邦薬品に医薬品を発注していた。インフルエンザワクチンなぞ、営業所の扱う量の半分以上をナビタスクリニック立川で購入する状況であり、彼らは十分に利益を上げたはずだ。

当時は高かった電子カルテ

電子カルテはSANYO(いまは WEMEXになっている)メディコムを選んだ。販売しているのは新横浜にある東日本メディコムだった。これも、アイン薬局がSANYOのレセコンを使っているから、というご縁で紹介してもらった。とはいえ、メディコムは診療所でのシェアNo.1であり、使っていて特に不満はなかった。

2008年当時、電子カルテはオンプレミス型=院内にサーバーがあり、そこにアクセスするタイプしかなかった。院内のサーバーはVPNを介してSANYOの担当者がメンテナンスやアップデートをおこなった。インターネット遅延に影響されないため、反応はクイックだが、システムとして大きくなるので高額になる。診察室4つを有するクリニックで、当時で2000万ほどしたはずだ。

いまはクラウド型の電子カルテが普及し、コストが大幅に下がってきている。ネットワーク遅延が起きることもまれだ。オンプレミス型の電子カルテもサーバーの不調で診療できない事故も時々起きるので、万全と言うこともない。どちらが良いか悩ましいところだが、私はクラウド型で十分と考えている。アルバイトに行ったクリニックや病院で複数社(NEC、富士通、デジカル、クリプラなど)の電子カルテを触った感じだが、操作性や機能は、どれも一長一短ありで、どれかがベストと言うこともない印象だ。むしろ、スマホでも使えて写真撮ってカルテに貼り付けたりできる便利さや、ChatGPTで書き起こしと要約(そもそもクリニックで、そこまで長いカルテ記載は必要ないが、精神科でのインテークでは有用かもしれない)をしてくれるような機器とのインターフェースの方が重要だと思う。

内装は安いところはホントに安普請でダメ

クリニックの内装は、アイン薬局が店舗設計を頼んでいるから、とのことで丹青社に依頼した。後から知ったのだが、お高いことでも有名な一流の内装会社だった。どうりで、開業から16年経つ今でも設備には大きな問題はない。
設計図を見せられてもピンとこないし、ほとんどお勧めの通りに発注したように記憶している。恥ずかしながら、内装費が幾らかかったのかは、結局私には知らされず仕舞だった。

その後、川崎のクリニックなど複数のクリニックを作るときに、いくつかの業者を使ってみた。結果的には、一番高いところと一番安いところは止めておいた方が良さそうだ、と考えている。値段の差は目に見えないが、五感に響くところに現れる。例えば天井、吸音素材を使ってあるか否か、で音の響きが全く異なるし、館の天井高が高いところで診察室の天井高を高くしてしまうと、やはり音が響くし、部屋が狭く感じる。

こんな模様の天井、見たことありますよね?意味があるんです

また床は上げて二重床にするか、コンクリートにモルタルを流して直床にするかで異なるが、素材によっては歩く音が響いて非常に具合が悪い。部屋の間仕切りも薄いボードで遮音材も使っていないと、壁はあるのにほとんど丸聞こえとなる。
見た目だけでなく、そのような細かいところに当然のこととして配慮した設計、施工が為されるか否か、が内装業者の総合力の違いなのだ。

役所への届け出

個人開業の診療所は、保健所に開設届を提出すれば良い。保健所のカバーするエリアの狭い広いがあるからなのか、所長さんのポリシーなのか分からないが、保健所によって対応は大きく異なるが、概ね好意的だ。様々な自治体で巡回診療としての予防接種を実施したり、それが認められないときは臨時に診療所を開設して、すぐ廃止して、という手続きを多々経験した。
一度だけ『開設届を受理しない』という不思議な経験をしたことがある。法律家に聞いたところ、そのような行為は行政の裁量として行われることがあるが、それが適正な理由を書く場合は、行政権の濫用となる、と説明を受けた。

検査会社

これもメディウェルの担当者がSRLを紹介してくれたので、そのままSRLにお願いした。立川のほぼ隣の八王子にラボがあるし、21時まで診療するので検体の回収を遅い時間にお願いしなければならなかったのだが、快く対応くださったので満足している。
結局、コロナ騒動の時も、夜に実施したPCR検査の結果が翌朝には得られ、自前でPCR検査機器を揃える必要がほとんどなかった。お陰で、とても多くの方に検査を提供して、役立つことができた。

だから、検査ラボは、ラボが近くにあるか否か、今後おきる次のパンデミックに備えてPCR検査への対応、そして検査費用のディスカウント率とを総合的に考えて選ぶのが良いと思う。

白衣やユニフォームの準備

ドクターコート、スタッフの制服の調達も馬鹿にならない。最初はアラマークに依頼していた。仕事は的確だったが、少しコストがかかるので別な業者に変えたところ、タオルは黄ばみ、制服もしわしわのまま届く有様となり、急遽また別な業者を選定することとなった。
こちらでユニフォームを揃えて洗濯に出す方法と、業者からユニフォームをレンタルする方法とがある。イニシャルの費用がかからないのは後者の方法であり、スタッフの人数や体格によって様々なサイズを揃える手間も省ける。スタッフが固定して入れ替わりがなくなるまでは、レンタルで良いかも知れない。
長期に働くスタッフが固定してきたら、ユニフォームのデザインの選択肢も拡がるし、ランニングコストは下がるので、ユニフォームを購入して洗濯に出す方式に変えると良いかもしれない。

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