『エッセイ編・2 偶然の幸運は、あてにしない』
『少女フレンド』を、クビになり、
本当に困りました。
ところが、この時、
『レディース・コミック』ブームというものが起きたのです。
『レディース・コミック』とは、
1980~90年代に女性を対象に人気を博した、漫画のジャンルです。
少女漫画の読者が、続々と大人になっていきました。
そこで、
少女漫画では満たされない読者層をターゲットに誕生しました。
実は、少女漫画で活躍していたベテラン漫画家たちも、
新人の若い人気作家に、仕事の場を奪われていたので、
レディース・コミックに移る作家が続出しました。
少女漫画とは、明らかに視点が変わりました。
結婚、離婚、不倫、仕事、家庭問題など、
現実的で大人の女性の視点を描かれました。
その中でも特徴的なのは、
少女漫画では、絶対に描かれなかった
エロティックな描写や心理描写でした。
バブル期の女性の自立意識や欲望に応える形で広がりました。
最盛期には、30雑誌ほどの、
レディース・コミックが出ていました。
代表的な雑誌には『YOU』『BE・LOVE』などがあり、
里中満智子さん、桜沢エリカさんなど、
多くの人気作家が活躍しました。
現在ではブームが沈静化しましたが、
女性が自由に感情を表現する場を提供し、
その後の漫画文化にも影響を与えています。
私も、講談社の『ヤングレディ』と言う週刊誌から出た、
『me』と言うレディース・コミックで、
仕事をすることができました。
『少女フレンド』時代の担当編集者が、『ヤングレディ』に異動していて、
「おかきん、漫画家が足りないから、うちで描いてよ」と、誘われたのです。
さらに、光文社の『女性自身』から出た、
『VAL』でも、連載を持つことができました。
講談社の目の前に、ある会社だったので、『ヤングレディ』での、
打ち合わせ後、いくつかの企画を持ち込みました。
幸い、私の名前を知っている方がいらして、即採用されました。
レディース・コミックの仕事を得た時、最初は少し緊張しました。
でも、少女漫画の延長なので、何とかなるだろうとは思っていました。
『少女フレンド』を、クビになり、
窮地に、陥っていましたが、
レディース・コミックのおかげで、
一息つくことができました。
ものすごくほっとしました。
週刊誌から、月刊誌がメインになりましたが、
レディース・コミック5誌に連載していたので、
経済的には、また安定しました。
喉元過ぎれば、熱さ忘れるで、
緊張感がなくなり、ぬるま湯のような生活に戻りました。
何かを成し遂げたいという焦燥感も薄れ、
ただ日々の仕事をこなすだけになっていました。
正直なところ、
「運がいいなぁ、ものすごくついているなぁ」
と思っていました。
それは100%勘違いです。
今、振り返ると、はっきりそれがわかります。
なぜなら、レディース・コミックの仕事は、
自分の努力でつかんだものでは無いからです。
レディース・コミックのブームに、
たまたま乗れただけの話なのです。
それを自分の運の強さだと、うぬぼれていたのです。
本当に未熟でした。
恥ずかしいほど幼稚でした。
実は、この経済的な安定は長くは続かなかったのです。
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
★この出来事から得た、ひとかけら。
『偶然、訪れた幸運は、あてにはできない。
自らの、白い努力でつかんだ幸運は永続する。』
あなたの幸運は、偶然に頼ったものですか?
それとも、自ら掴み取ったものですか?
白い努力は、必ずしも派手ではありません。
それでも、自分が心から納得できる結果をもたらします。
つづく