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救われるという絶望

白むほど冴え渡った逆光

光、というのは眩しければ眩しかった程に、それが消えた際の痛みが計り知れないものなのだと思う。アイドルである彼らは今日も誰かの足元や視界を休む間もなく照らしている。
それがどれだけ満ち溢れていて、切ないことなのだろ

2022.9/3

例年の如くTGCのスペシャル映像が
SnowManー公式YouTubeチャンネルにて
アップロードされた。

Yohji yamamoto×RAULのSPECIALランウェイである。業界に密かに響めきを撒き散らしたとされているこのステージは、他担ながら思わず感嘆する程に見事なものであったことを、今でもこの動画を見返す度に思う。

ペンライトさえも夜のネオンかのように見えてくる程に、空間ごと染めあげてしまったその制圧力、技量。

「ガラスの時代の入れものなんだ」

彼の背負った漆黒の羽織の背に純白で刻まれたその言葉に、ただただ脳を揺さぶられる事しか出来なかったことを、よくよく覚えている。
彼は、彼らは、強くなりすぎてしまったのではないかと。

どうしてそんなに、貴いのだろう。どうしてそんなに、強く生きてくれているのだろう。荒波に揉まれ、硝子の入れもののまま、流れゆく度に傷をつけられ、ヒビを入れられながら、どうしてそこまで、前だけを向けるのか。どうしてそこまで、弱さを隠そうとしてくれるのか。強いひと、愛おしいひと。貴いひと。脆く儚い人。

そうなる事でしか、あの世界で彼らが生きて来れない運命だったのは、我々ファンも重々承知している。

それでも、
グループの最年少である彼があのステージで背負った言葉が、どうにも厭世に生きる彼らの本質を虚しく、強く鋭く貫いてしまったのではないかと、思わずには居られなかった。

ひらりと桜

桜が咲く季節が、もう既に、過ぎようとしている。
舞い散る桜の花弁が、落ちるのを苦しく思うように。アスファルトの上で踏まれる、咲き誇っていた花だったものを見て、名残惜しくなるように。
過ぎ行く春を、愛おしく思う様に。
私のこの気持ちは花筏のように水面をゆらり、流れゆき、消える。
月明かり照らす夜に狂い咲く桜は、一夜一夜ごと、塵と化してもなお。

滝沢歌舞伎ZEROの公演曲、ひらりと桜の最終の一節。

ひらり きらり 継ぐ夢を誇れ

桜吹雪 酔い踊れ

新たなる幕開けだ

ひらり いにしえの桜

きらり ひらり 舞う桜

きらり ひらりと桜


木々芽吹くあたたかみが到来し数日前まではあんなにも咲き誇っていた桜達も花々も、昨日昼間、見上げてみると、もう既にその花弁の色をくすませていた。

果てしなく長い期間をかけても、どれだけ積み上げてきたものがあっても、春に向け雨風や寒さを凌いでも。

栄光は浮世の銀華なのだと嫌という程、思い知る。
けれど哀しくはなかった、貴方達という華を今、私は眺めている。今流れゆく時の中で、貴方達を愛おしく思える幸せが、せめて長く、どうか少しでもながく、私の中に残りつづけますように。

Color me live…

光は、恐怖かもしれないが、脅威では無いということを、易しく教えてくれるような曲。深い海の中、呼吸さえもままならない場所で、やっと気付いた最初の音は、自分の心臓の鼓動だった。一連の希望への導きが、全て己の中で完結されているあたり、よく考えられた楽曲だとつくづく思う。

Labo.のLIVEパフォーマンスにて、ようやく完結されたような印象を受けたこの曲。きっと3人は各々の光を見つけて、これから進んでいくための道しるべをしっかりと目に焼き付けている。彼らから見えるその景色は全て会場に光り輝くペンライトだったことが、どんな意味を持つか。

私なんかの声は、聞かなくていい。貴方達が彷徨う海には、届かなくていい。

ただ、少しでも、私のような人間がいると、
貴方達という光に救われて、貴方達を光だと言い切る事を、心から恐れてしまうような
そんな臆病な愛が確かに此処にあることを、見なくていい、認識しなくていい、ただ、

わかっていて欲しい。と

思ってしまったのは、我儘で、贅沢極まりない、傲慢な愛なのだろうか。

切望

今から、今この瞬間からこれから来る未来で、貴方達という存在に出会ってしまう人達が、私は、
心底羨ましくて仕方がない。

きっとどうしようもなく魅せられるんだろう、その強烈な九華の瞬きに引きずり込まれるあの感覚を、今から味わえる人。「もっと早く知りたかった」と心から後悔することが出来る人が居ること。眩いほどに羨ましい。

もし私が、次もまた見つけられることを約束として、何か一つの存在をきっぱりと忘れられるのだとしたら。真っ先に貴方達の記憶を消すだろう。

哀しく孤高に涙を架すひとは、この世のなにより美しいと、貴方達の存在のせいで、知ってしまう人が居ること。

こうして、どれだけ言葉にしようとも、
心から嗚呼美しいと、溢れ零れるように涙が溢れたあの瞬間の、貴方達がくれた命の輝きには到底、全てが及ばないこと。

貴方達を知らなければ見えなかったものが、見える筈の無かったものが、貴方達を愛さなければ出会えていなかった愛が、全て、この世に光はもう無いと嘆いていた、あの時の誰かを生かしてしまったこと。

貴方達が、どうしようもなく苦しくなった時に、少しでも、貴方のゆく道を照らす、淡い蛍のような存在に、なれたならなんて、望んでしまうこと。
一筋、なんて贅沢は言えない。ただそこに、少しでも私たちという、微量な光が佇んで居たのなら。それを光だと、少しでも思ってくれるなら。どれだけ報われるだろうかと、欲をかいてしまったこと。

貴方達が降らす雪の、虜に、いつまでもなりたいこと。その銀世界が溶けゆくその日まで、見届けたいと
胸の底から、望んでしまったこと。

救いは、淡い絶望なのだと知った。

一度救われたが最後、それ以上を心のどこかで、求めてしまうというのが命の性なのであろう。

アイドルというのは、儚い。だから美しい。
"人の夢"と書いて儚いと読む。

その歌声が、表情が、汗が、指先までなめらかに行き渡った脈動が、信念が、意地が、プライドが、積み重ねてきた過去が、きっと捨ててきたであろう夢や憧れが。今この時の為に、捨ててきたものが。

ただ全てが美しい。

狂い咲く蓮の花の上を、これから彼らは、どう歩んでゆくのだろう。吹雪の中を、如何様に舞い散るのだろう。何を光とし、何を光にするのだろう。これから貴方達と何度、同じ空を見れるのだろう。

貴方達の歌に、声に、笑顔に、何度助けられただろう。何度生きるための光を貰ったのだろう。きっとこれからも、そうやって貰い続けてしまう。

私たちから見る彼らは、唯一で、他には到底変え難い、もうこれから先きっと越えるものは無いだろうと思ってしまうほど、強烈で鮮烈な出会いであり、同時に終わりを告げるものでもあった。

貴方達から見た私たちは、少しの灯火のあつまりでしかないであろう。けれど、それでもいい。むしろ充分だとさえ思いたい。
貴方達が道に迷いそうな時、這いつくばってしまいそうな時、何かが見えなくなってしまいそうな時、
少しでも道標になれる光が、明かりが、その中に私たちという存在が一瞬でも煌めいてくれているのなら。

私に返せるものは何も無い。せめてどうか、
いつも誰かの光で居てくれる貴方達が、光らなくてもいいと安心できる場所が、あたたかく包まれる毛布が、いつも貴方達の傍にあるように。

貴方達の遠い未来が

行く末が

1面の銀世界ではなくても
どうか、どうか
朝は晴れ渡り
夜は満天の星空の中
各々の一番星が、輝いていますように。


2024-4-22  青梅雨

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