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『風のある道』(原作:川端康成 主演:芦川いずみ 1959年9月13日公開)個人の感想です


『風のある道』

いよいよ川端康成作品である。アマプラで無料で観れる数少ない川端康成作品を観ることにした。もちろん、文学音痴の私は川端康成と言えば、『潮騒』とか『伊豆の踊子』の名前は聞いたことがある程度の知識。鳥羽から渥美半島に渡るフェリーに乗ると、船内アナウンスで、「あちらに見えます島が、潮騒の舞台となった島です。」と紹介があるので、「へー」って思った記憶はある。興味がある方は、乗ってみられるのも良いかも知れない。

さて、アマプラに書かれているこの映画の紹介は、『美しき三人姉妹の心に去来する、女心の妖しさ!文豪・川端康成の原作を芦川いづみ主演で映画化し、「女の幸福」と「結婚」をテーマに姉妹の恋愛と結婚へのさまざまな戸惑いを通じて女性の幸福を描いた文芸メロドラマ。』と書いてある。美しき三人姉妹は、長女・恵子(北原美枝)、次女・直子(芦川いずみ)、三女・千加子(清水まゆみ)である。観終わった私の率直な感想は、『自分と同じ失敗をさせまい』、『いいところに嫁がせる』ことが幸せだと見栄を張る母親が次女・直子の結婚に口を出すものの、結局、直子は母親の思った通りにならず、しっかりと自分の意思を通した母娘の物語か、であった。

この時代は、親が子供の結婚に口を出し、決めたりする時代でもあったことは承知している。この時代に結婚した叔母の話を聞いたことがある。旦那さんは、私の祖父が決めてきて、旦那さんの顔を結婚式の日に初めて見たというのである。行った先には小姑が2人いて、ずいぶんいじめられたそうだ。ちなみに私の母の旦那つまり、私の父であるが、それも祖父が決めてきたらしいが、母は、事前に会っており、気に入っていたようなのでこちらはさほど問題はなかったようであるが。。。

この映画を観た女性たちは、きっと芦川いずみに勇気づけられたことだろうと思った。改めて思うのだけれども、ドラマとは、どういう『偶然』をどのように組み合わせて話の展開を作るのか、そこにどういう『メッセージ』を乗せ、観た人に何を感じさせるか、を作り込むものだなと思うのである。この映画もその偶然がいろいろ盛り込まれ、非日常的なお話を作り上げるのだろうけど、この作品も「まあ、そんな偶然はないだろう、だけど、そんな偶然があるからドラマは面白い」と思えた。

この映画の物語のメインストリームは、華道の家元の息子光介(この男はいけ好かない)と次女・直子の二人の男女関係を中心に話が進む。光介は直子が好きで、婚約したいと思って、いろいろ誘いをかける。直子の母親もまた、光介との婚約を勧める。一方で直子は光介の性格についていける気がせず躊躇する態度を取り続ける。そんな中、光介が主宰する新作発表会で言語障害を持つ子供がやってきて光介の作品を壊す、それに怒った光介に対し、精神薄弱児収容所の先生である小林甚吉がその子供に光介に謝るように諭す。直子は子供を諭す小林の姿に心惹かれ、後日、小林が先生を務める収容所を訪れ、子供たちと戯れる姿を見てますます惹かれる、そして、自分は光介よりも小林の方が合っているのではと思い始める。また、小林も直子に惹かれていく。(いわゆる三角関係)

母親は直子に光介以外の男がいることを知り、小林を家に呼ぶように直子に言う、小林が直子の家に来て、帰ろうとする際に小林が持っていた時計の鎖を見て、自分がかつての恋人にあげたものであることに気づき、動揺する。母親は、そのことで、直子の婚約者には、小林が適任なのかも知れないと思い迷い始める。そのような状況の中、ある夜に直子が光介に強引に女性の初めてのモノを奪われたこと知り、そのようなことがあったのであれば、光介と婚約するように促し、その結果、直子は光介と婚約することを決める。

婚約後、光介はアメリカに行くのに直子を連れて行くつもりで準備を進める。片や傷心の小林はブラジルに行くことを決意する。光介は羽田からアメリカへ、小林は横浜からブラジルへ船で旅立つことになる。直子もまた羽田に向かうのだが。。。

というような展開のお話だ。

お金と地位を持っている男と貧乏だけども人間味のある男、どっちを選ぶのか、自分の正直な気持ちはどっちなのか、迷いに迷う女心を描いている。これは今も昔も変わらないのかも知れない。私のいとこの女性も親が決めた布団屋のお金持ちに嫁いだが、その後に布団屋は倒産し、離婚した。お金に釣られて結婚したはいいが、気持ちは入っていなかったのか。。。

未来のことの答えは未来にしかない。未来にかかわることを決めるのにいろいろな材料できめるのかも知れないが、最後は自分の性格と相談して決めるのがいいのじゃないかと思う。なぜなら、世の中や物質的なものは時代と共に変わるが、性格は意外と変わらないと思うからで、時として、大人になって変わったねと言われることもあるかもしれないが、それは潜在的にそうなりたかったけど、子供時にはそうなれていなかっただけのことだろうと思う。

この映画は、純愛物語で、直子がやさしさ気持ちを持つ女性であるところを表現するところから始まる。(交通事故に遭った犬を病院に連れて行く)その愛情が深いといところが彼女の性格の根本であろう。直子のやさしさによる迷いを中心としたお話ではあるけども、それ以外にも母親にも過去があり、姉にもひと揉めあり、妹には失恋があり、と、サイドストーリーも含めて堪能できる映画である、さすが、川端康成先生、ま、私ごときがいうのもなんなんですが。

では、また。

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