
宿泊税導入ブームと新しい利権構造への渇望
2024 年 8 月現在、すでに宿泊税制度を導入している自治体は 13(施行予定を含む)、創設を検討中の自治体は道県と市町村を合わせて 50 を超えるとか、(政府に近しい)日本総合研究所のHPに出ています。
この動きに対して、千葉市議会が千葉県に対して突きつけた意見書に「地域性や、複数の市が独自の宿泊税導入に向けて検討会を立ち上げていることを踏まえ、税の公平性、税収を生かした観光振興への還元、増加する業務負担等に照らした慎重な検討を行い、県内市町村・宿泊事業者の十分な理解を得るべく、丁寧な説明と調整をすべきである。」という、問題点をえぐる誠に分かりやすいご指摘があります。
特に「税収を生かした観光振興への還元」が不明確という指摘。
使い道がはっきりしないのに税金を取ることだけを決めるという不遜な態度を許すべきではないでしょう。さらに「市町村・宿泊事業者の十分な理解を得るべく、丁寧な説明と調整をすべき」とまで書かれるに至っては、自民党が強硬に通過させたLGBT法に類する傲慢さを思い出します。政治家がどこまで国民・住民を舐め切っているのか、まさに浮き彫りになっていると言えましょう。
観光振興が地域創生に重要と言いながら、国民が旅行をすると運賃、食事、土産購入などあらゆるサービスに消費税が掛かり、温泉に行けば入湯税が課せられ、さらに宿泊税も取り立てる。自動車を利用すればガソリン税を持って行かれる。課税まみれの構造になっています。観光旅行を規制したいのか?と感じてもおかしくありません。
オーバーツーリズム対策という理由を出しているところもありますが、数百円を余計に徴収すると超人気観光地の客足は減るのか?入場料金を値上げしても入込が減らないTDLのケースをみれば、無理そうなことが分かります。入込客を減らせなくても、ごみ処理の費用負担を軽減できるという話もありますが、宿泊者だけがごみを増やしているわけではありませんから、公平性の観点から問題があります。
一方、それほどでもない観光エリアの場合、近隣に非課税自治体があれば、そちらに逃げられる可能性を生み出してしまいます。それが困るから宿泊料を割り引くような努力をすれば事業者に負担を強いる訳で、商売の邪魔をしていることになります。
でも、賛成している宿泊事業者も居るという話も出ていますが、その方たちは、行政機関が集客イベントや観光資源の整備をしてくれるから売り上げ向上が期待できるともくろんでいるのだろうと思います。地元自治体にその能力があると信じられるならば、宿泊税導入もよい選択でしょうが、そうした頼れる自治体が一般的とは思えません。カーナビの時代に標識や看板を増やすとか、ありふれた観光マップを作って適当に配るとか、成果が微妙なキャンペーンをする程度で終わるところが大半でしょう。
そもそも、的確な観光振興策を立案できる政治家がどの程度存在しているのか?そこからアヤシイのに、使途がよく分からない税金を集めさせ、利権を膨らませるためにパーティ券を引き取ってくれる支持者たちに仕事を回すといった流れにならないのか・・・そうならない可能性の方が高いと思えてなりません。
入湯税というのがすでにありますが、鉱泉浴場所在の市町村が課する目的税で、その使途は、環境衛生施設の整備、鉱泉源の保護管理施設の整備、消防施設その他消防活動に必要な施設の整備、観光の振興(観光施設の整備を含む)に要する費用に充てるとは、総務省HPで説明されていますが、目的の範囲があまりに広く、実際のところ、一般財源化しているという指摘があります。不誠実極まりない入湯税に加えて宿泊税を取る。その目的に「観光の振興」がある。おかしいと感じない方が不思議です。