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巨大イベントの成り行き論

苦戦が報じられる大阪・関西万博。チケットの売れ行きが悪く、地元大企業への割り当てが増えているとか。このチケットはいずれ「万博にご招待!」「今年限定の株主優待」とかいった形で各方面に撒かれることが見込まれるので、結果として入場者数の実績作りには貢献するのではないでしょうか。

巨大イベントの成否は簡単に論じることはできません。経済効果を言うならば、巨額の資金を投じる以上は、それが誰かの収入になり、消費拡大に貢献するので、事業費以上の経済効果はあります。ただ、他にもっと効果的な使い道はないのか?という質問には容易に答えられません。道路混雑の解消に使った方が生産性の向上に役立つという見方も当然あります。

地元住民の精神性への効果、つまりプライドの回復とか元気なるというメリットを説く方も居ます。大成功と評価されれば、そうした効果を感じるでしょうが、酷評されれば傷つくか、無かったことにされるので、確実な効果とは見られません。

新技術の集積促進への貢献というマニアックな効果を挙げる人もいます。確かに、世界の先端的な取組が紹介されるので、触発されて何か新しい動きが成長する可能性はあります。ただ、地元に吸収する貪欲さがあるか?その能力を持っているのか?という条件付きの期待であることは否めません。

1970年(昭和45年)3月15日から9月13日までの183日間、大阪府吹田市の千里丘陵で開催された日本万国博覧会(Expo'70)は、 アジア初の国際博覧会(General category)で、当時として万博史上で最大規模を誇り、延べ入場者数が日本の人口の半分に達するという成功イベントでした。我が国のイベントビジネスは、これを機に大発展したとも言われます。

半世紀前の日本は、戦後の苦しい復興期を乗り越えて高度経済成長期(1955⇒1973年)の最中。日々上り坂を進んでいることが実感されていました。そこに、日本経済が世界市場のトッププレーヤーになっていくことのアピールにもなる世界的かつ有名巨大イベントが誘致される。これはワクワク感がマックスになります。さらに、東京に経済活動の中心が移りつつある中で、歴史ある産業都市・大阪を開催地に選ぶことで地元のプライドを回復する効果は十分あったでしょう。

このように「Expo'70」は盛り上がらない訳がない!という時代背景がありました。
そして今回はどうか、GDP順位が後退を続ける中で、国際情勢も不透明さを増し続ける。東京一極集中の是正はどうも進んでいないように見える。各分野で新技術の開発は進んでいるものの、社会全体の経済レベルを一段底上げするような劇的進歩のウネリは今のところ感じられない。「地球環境を守るため辛抱しよう」式の話が喧伝されている。閉塞感に満ちています。公式キャラクターの解説には「姿を変えすぎて、元の形を忘れてしまう」とありますが、企画内容がまさにこれといった感じです。

困ったことに、前回の大阪万博とは環境が違いすぎます。この状況下で昔ながらの万国博覧会を開催しても、どうにも気持ちが付いて行かないということで、この冷めたムードになっているのだろうと思います。

今回の大阪・関西万博が後にどう評価されるのかは分かりませんが、お祭り騒ぎの気分ではないところに仕掛けるにしては、工夫がなさすぎると思えてなりません。もしも私が総指揮を預かるなら、宇宙開発をテーマに据えて、USA政府が公式に認めた地球外知的生命体に関する展示も盛り込み、人類の宇宙進出の可能性に触れ、宇宙開発技術を生活に取り込む産業実態の解説などを最新アート技術で提供するといったイベントにしたいですねぇ・・・





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