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失政のもたらしたインバウンド増加

もう10年も前になろうかという話ですが、とある会合でJTBの方が中国人観光客はこれからも増え続ける、とグラフを使って力説していました。中間層以上の人口に比べて、海外旅行に出掛けている人々の比率が低いので、まだまだ市場開拓の余地はあるという論旨。

全体的にはそうであっても、あの広い国土の各地に分かれて住んでいることを考えれば、宣伝するのも大変だろうし、政府の意向で旅行先に制限を加えることが許される国家体制であることを考えると、そう簡単に明るい未来を語れるのだろうか?と違和感を覚えながら聞いていたことを思い出します。

その後、新型コロナウイルス感染症が世界に広がり、観光産業はフリーズ状態になりました。ようやくして回復段階に入ったら、中国不動産バブルは壊滅状態に突入。固定相場制の下で為替レートは大崩れしていませんが、買い支える外貨が底をつけば人民元の暴落は確実に起きるでしょう。そこを見切ることが出来ればFXで莫大な儲けを出すことが可能ですが、因業な自民党政権は所得税をむしり取り、社会保険料の負担も激増させますから、リスクを取った割には寂しい手取りになりそうです。国民を楽しくさせないという強固な意志には呆れる他ありませんが、労働者の味方であるべきはずの政党も怪しさ満載なので、嘆かわしいことこの上もありません。

さて、中国人観光客曰く「貧乏な人が日本観光をする」「貧乏な私も日本だから観光に来られた」と何かのインタビューで語っていたそうですが、この人は安っぽい日本で観光旅行をして嬉しいと感じるのでしょうか?趣味・嗜好は多様なので内心にまで干渉することは出来ませんが、自慢することが大好きなのが一般的な中国人と聞きますのに、おカネと時間を費やして蔑まれるという不合理な日本旅行をなぜするのか、不可解極まりありません。見栄を張って「みじめな日本人に恵んでやった」と言ったら親日派と糾弾されそうです。

こういう観光客でも増えたと言ってよろこんでいる観光庁ですが、オーバーツーリズムの対策には目立った働きがありません。実は、観光庁には絶対と言って良いくらいに対応力は期待できないのです。

まず、観光庁は旧運輸省の系列にあります。歴史的に、鉄道省の敷設した線路網を平時において有効活用するために観光旅行が推奨されました。大正期ぐらいの話です。無論、切符を買え、列車に乗れと言われても、どこにどうやって行くのか、行った先でどうして良いのか分かりません。観光旅行のサポートをする必要があるというので、日本交通公社が設立されました。これが現在のJTBの始まりです。

つまり、キャリアーである鉄道の活用促進に始まった結果、運輸省に引き継がれるのですが、この官庁の主な仕事は運輸業者の監督・許認可です。そもそもが観光地づくりとは無縁の組織ですし、観光現場を実際に所管する自治体を指導する制度上のチャンネルは殆どありません。(地方行政の元締めは総務省)このため、呼び掛けをするのが精々で、仮に地元から相談を持ち掛けられても応じるノウハウなんかありません。

国土交通省の旧運輸省系外局として設置された観光庁は、統計を取って宣伝活動をする以外は、働きかけをするか、サポート制度を用意する程度の機能しかないので、各種政策を総合化させていく必要のある「観光地づくり」を推進するなんて、とてもとても難しい話なのです。

政府は観光立国を真剣に進めている訳ではなく、今日の訪日観光客激増の背景には、訪日ビザの発行基準の緩和、30年間の経済失政による購買力格差、最近の金融緩和政策のもたらした円安という観光政策とは別の要素があることを忘れてはなりません。ファミレスの割引券で喜んでいる日本人が支えている社会で、高級料理を食べているのは外国人・・・日本の魅力が評価されて嬉しい!・・・ですか?


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