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リスナーに伝わる歌詞の書き方
こんにちは。普段ボカロPとして活動してる「メグは空を見る」と申します。もう活動3年が過ぎ去り4年目です。中堅ボカロPですねもう。
さて早速本題に入りましょう。
歌詞ってみなさん書けますか?
「書けないことはないけど、出来てるかどうかはよくわからない。」て方が多いのではないでしょうか。それとも、「フィーリングで書く!」という強い方もいるかもしれません。「あんまり思いつかないんだよな」って人もいるかもしれません。「メロディ重視で歌詞自体にはそんなに意味はない!ノリ重視!!」って方もいるかもしれません。その考えも素晴らしいとおもいます。
作曲のコツやら理論はいっぱい出回ってますが、歌詞のコツってあんまり見かけないですよね。
歌詞は書くだけなら誰でも出来ます。僕自身も、歌詞は自由に書けばいいんじゃないかなとは思ってます。ですが、「人に伝わりやすい歌詞」「伝わりにくい歌詞」の違いはあるんじゃないかなと思います。
今回は人に伝わりやすい歌詞について考えてみようと思います。
①情景や状況が浮かびやすいようにする
まず、これが大事だと思います。例えばその歌詞で歌っているのはお昼ですか?真夜中ですか?春秋夏冬どれですか?部屋の中で歌ってますか?それとも学校の帰り道?主人公は何歳くらいですか?
たとえ季節が関係ない曲でも、部屋の中か外かは主題じゃなくても、どういう場面で歌っているかは少なくとも作詞してる本人は具体的に想像した方がいいです。
曲を聴いている人には、音と歌詞しか情報がありません(動画ならイラストもありますが)。
音は、感情を伝えるのは得意です。楽しい曲なのか悲しい曲なのかはおそらく日本語で歌われてなくても伝わると思います。ですが、音だけで具体的な情景や状況を説明するのは難しいです。頑張ったら季節感や昼、夜くらいなら伝わるかもしれません。でも、「恋に打ち破れた次の日の朝」か「終電に乗り遅れてホームで一夜過ごした後の始発の朝」かまで伝えられたらすごいです。
そのため、歌詞では情景や状況を説明して聞き手にどんな状況かを視覚的にイメージしやすいようにしてあげた方が親切です。
例えば僕はこんな風に表現しました。
夕焼け小焼けの公園で
勝手に揺れるブランコと
僕と君とシーソーが
明日になるのを拒んでる
冷たい風が吹いてきて
空が暗くなってきて
ベンチの冷たさに気づいて
今日もやるせない
さっさと「夕方の公園」という1番大事な情報を最初に出します。ブランコ、シーソー、ベンチ、と具体的な名称を出して、より聴いている人に具体的なイメージを感じてもらいます。「冷たい」という触覚的なイメージ、ここでは使ってませんが「花の香り」などの嗅覚的なイメージなど、視覚以外の情報も入れるともっと鮮明になってきます。
登場人物は基本的に「自分」と「誰か」の2人に絞った方がいいです。「自分」と「世間」とか。
ラブソングなら「自分」と「相手」ですね。
3人までならギリギリいけます。それ以上だと描写が大変だと思います。基本的に歌詞は伝えたいことを伝えるのに文字数を割くべきです。そして伝えたいことはシンプルであるべきです。関係ない人間の話は取っ払いましょう。
「僕」と「君」がどういう関係かははっきりはしませんが、「2人で公園にいる」というのはそれだけで少なくとも「ある程度の関係がある」というのは伝わります。友達か、恋人か、それともその間か。素直に受け止めればそうなると思います。「僕と君とシーソー」は少なくとも明日にはなってほしくない、今日のままがいいみたいです。
「シーソーに感情なんてねえよ!!シーソー何も思ってないよ!!」
それはその通りです。比喩です。擬人法です。こういうのを少し混ぜると情景と感情を同時に表現できていい感じです。
②ストレートな言葉を思い切って使う
「歌詞だからカッコつけた表現がしたいなあ」
「複雑な難しい単語使いたい!英語使おうかな?ドイツ語にしようかな?かっこいい比喩使いたいぜ!!「月が綺麗ですね」?夏目漱石さんエモすぎんだろ・・・」
めっちゃ気持ちわかります。難解な表現使いたくなります。厨二病の血が騒ぎます。でも今回は「伝わりやすい歌詞の書き方」がテーマなのです。なのでストレートな表現をお勧めします。
「愛してる」なら素直に「愛してる」って書いていいんです。「好き」なら「好きだ」って書けばいい。いちいち「月が綺麗ですね」とか言わんでええです。もう明治じゃなくて令和なので。
そんな安直な表現を使ったら安っぽくなるんじゃないかと心配になるかもしれません。
ですが、そうはなりません。「どうして好きなのか」「どのくらい好きなのか」そういったことに文字数を割いてください。
西野カナさんは会いたい気持ちを「会いたくて会いたくて震える」と表現しました。震えるほど会いたい!?めっちゃ会いたいんだな!ってなりませんか?「会いたい」というシンプルな思いを「震える」と表現を足したことによって「めちゃくちゃ会いたい」って伝わってきますよね。
シンプルな気持ち、ストレートな感情、ぶちまけてください。そこに、「なぜその感情になったか」を入れるとリスナーとしても共感しやすくなります。
僕はさっきの曲のサビはこんな感じにしました。
感傷トワイライト
君と出会った偶然を
宝物にして
ずっと取っておくんだ
感傷トワイライト
君と繋いだ手のひらの
暖かさだけが
生きる道しるべなんだ
「いや、好きって言ってないやないかい!!」
ギクギク。その通りですね。
いいんです。ほぼ「好き」と同義語を使ってます。「宝物にして ずっと取っておくんだ」
ただの友達との思い出にそこまでの感情持つ人は珍しいと思います。
というか、この曲、ラブソングといえばラブソングなんですが、主題は「愛」じゃないんです。
曲名が、「感傷トワイライト」。
感傷の意味
1 物事に感じて心をいためること。
「そう思うと、なんだか—の情に堪えない」〈藤村・家〉
2 物事に感じやすく、すぐ悲しんだり同情したりする心の傾向。また、その気持ち。「—におぼれる」「—にひたる」
外来語でいうとつまり感傷、あるいは感傷的とは、センチメンタルです。そしてトワイライトは和訳して夕方です。
つまり、「好きな子と一緒にいた夕方の公園のことを思い出してちょっとセンチメンタルな気分になった成長した後の僕」が実は主人公だったのです。(歌詞の中では過去も未来も今も自由に行き来できます。自由に行き来していいんです。)
なので、言いたいことは「感傷的な夕暮れだなあ」です。ということで、この曲のテーマは実は題名通り「感傷トワイライト」です。はい、サビで2回もまっすぐ言ってますね。
③伝えたいテーマをそのままタイトルにすると楽
ここで第3のコツ、「タイトルで伝えたいことはこういうことだよ」と言っておくことです。
曲を聴く時、最初に目にするのはジャケットとタイトルです。YouTubeでもサムネとタイトルです。タイトルってめちゃくちゃ大事です。
タイトルで「この曲ではこういうことを言うんだろうなあ」とリスナーは無意識でも注意しながら聴くことになります。そのため、伝えたいテーマをそのままタイトルにするとぱっと伝わります。そのままじゃなくてもその曲の象徴的な言葉を使うといい感じです。
「うっせえわ」は「うるさいなあ」でもなく「うるさい」でもなく「うっせえわ」です。もうニュアンスが違いますよね。
「フォニイ」は多分意味がすっと出てくる人は少ないと思いますが、「偽物」とかそういう意味です。「この世で造花より綺麗な花はないわ 何故ならば総ては嘘で出来ている Antipathy world」というツカミの歌詞はまさに曲全体を端的に表しててすごい引き込まれる歌詞だなと思います。
以上です。自分はこんなところを主に意識してます。もちろん文字数やメロディとの兼ね合いやら他にも考えてることはありますが、「相手に伝わりやすいようにする」という観点ではこの辺が大事だなと思います。ありがとうございました。
最後に、この記事の例で使用した僕の曲「感傷トワイライト」もしよければお聞きください。歌詞全文も載っています。YouTubeニコニコサブスク等で聞けます。
YouTubeのリンク貼りますね。それではまた。