午前5時30分、そろそろ例のヤツがやってくる。 「マコトー、どこにいるのー?」 ほら来た。 ベッドから起き上がり、そっとドアを開けると髪がくしゃくしゃのプリヤがいた。 この微笑みに騙されてはいけない。 「おはようプリヤ。今日はどうしたの?」 プリヤは僕の問いかけを無視してするりと部屋に入り込んだ。 昨日に持ち込んだカーペットの上のレゴブロックには見向きもせず、そのまま低い台に置いてあるラップトップの前の床に座り、つながれたパームをいじり始めた。
飛行機での目覚めは最悪だった。頭の中がぼんやりとしたままで、けだるさが残っている。浅いリクライニングで長い時間を過ごしたためか、腰も痛い。 ほぼ満席の機内では、どうしても周囲にいるひとの存在が気になってしまう。眠っている間もうっすらとした私の縄張りの境界に、絶え間なく何かが近づいてくる感じだった。 到着前に配られたサンドウィッチを食べたあと、アナウンスの通りに足元の荷物を片付け、座席のリクライニングを元に戻した。 着陸の衝撃はほとんどなかった。後方の乗客からの口笛と拍手
僕は母親と差し向かいで、自分の名前を書く練習をしていた。 ふだんは食事をならべたり、洗濯物を干したりするくらいしかやってないくせに、今日になって突然、名前の書き方を教えると言い出したのだ。 「今朝、大ちゃんのお母さんに会ったら、他のお子さんはみんな、小学校に上がるときには自分の名前が書けるって言ってたのよ」 「ラジオや時計を分解して遊んでいるくせに、名前も書けないのか、あいつ?」 夕食のあと、座椅子に寝そべって消しゴムのおもちゃとビー玉をいじっていたら、両親の会話が聞こ