見出し画像

ヨコヅナツチカメムシ!あなたは噛まずに呼べますか?

1.はじめに

 ヨコヅナツチカメムシを知っているだろうか?カメムシ目ツチカメムシ科に属する昆虫であり、ツチカメムシ類の中では最大級の22㎜級にもなる超大型昆虫である。(まさしく横綱!日本一!)ツチカメムシの名の通り、土中を主な生息域としているため、狙わない限りは中々遭遇することもない昆虫であるが、一度遭遇すればその大きさと爽快な香りから二度と忘れることのない虫ともいえるだろう。
 そんなヨコヅナツチカメムシであるか、なぜか知名度が低く昆虫愛好家の中でも知る人ぞ知る昆虫であることは言うまでもない。しかし、極一部に熱狂的なファンがいることも間違いなく、なんと昆虫類の飼育方法をまとめた本に記載されたこともあるのである。
 本記事においては著者のヨコヅナツチカメムシとの出会いから飼育の実際についてまとめようと思う。

2.ヨコヅナツチカメムシとの出会い

著者がヨコヅナツチカメムシと出会ったのは忘れることはない2022年5月のことである。そう、前項の通り著者も通常のツチカメムシは知っていたがヨコヅナツチカメムシのことは極最近まで知らなかったのである。(2022.6月現在)
 あくる日、関東某所で行われた即売会に参加した著者であるが、そこでヨコヅナツチカメムシとの運命的出会いを果たしたのである。ブースに置かれていたのは腐葉土が詰まったプリンカップ。ラベルにはヨコヅナツチカメムシの文字。しかし、カップのどこをみてもカメムシなんて見当たらない。「なんだこの容器は!ツチカメムシがいるんだろう!しかし見えないぞ!!」そんな言葉を喉奥に秘め、プリンカップを手に取る著者。間髪入れずに店員さんから「中身見てみますか?」のありがたい言葉。断る理由なんて一つもない。なぜなら私はカメムシのオタクだから。ビギナーだけど。
 店員さんがプリンカップの蓋を開け、ヨコヅナツチカメムシを取り出してくれた。たしかに大きい。普通のツチカメムシの倍以上の大きさがあった。そしてほとばしるカメムシ臭。かなりのインパクトが私を襲ったのである。見た目の印象で言えば、正直腐葉土と混ざると見分けがつかない。ただ、それが良いのである。擬態。素晴らしい言葉である。我々のような昆虫オタクは変なのが好きなのだ。特徴的なカメムシ臭もアオクサカメムシやツヤアオカメムシのようないわゆる一般的なカメムシ臭とは異なり、どことなく清涼感をどこか遠くに感じさせるものである。個人の感想です!
 果たして、著者に莫大なるインパクトを与えたヨコヅナツチカメムシであるが価格のインパクトも強く、果たして導入するべきが悩む速攻心理フェイズに入ることになった。オタクのみなさんなら経験があるだろう。本当にほしいものが目の前に現れた時、脳内で価格、置き場所、管理等々を瞬時に判断して買うかどうかを悩むあれである。


 買いました。


同時に購入を悩んでいた別生体と同時に購入するとともに店員さんから飼育のアドバイスもいただき、無事ヨコヅナツチカメムシを導入した著者であった。

画像1

3.ヨコヅナツチカメムシの飼育の実際

ヨコヅナツチカメムシの飼育環境はかなり簡素である。飼育容器はクリアスライダー小を使用、床材はヤシガラと腐葉土の2層で使用している。底面には湿らせたヤシガラを固めにつめ、上層に腐葉土を軟らかめにいれてある。加湿については、(クリアスライダーの構造上)基本的に霧吹き等は必要ないが、腐葉土が乾燥してきたら適時行う程度である。
 餌は昆虫ゼリーを与えている。ゼリーのみで飼育可能らしい。しかし、普段土中に潜っていることもあり食事をしている姿を見たことがない。が、導入して1か月程度経過した現在においても3個体ともとてつもなく元気でカメムシ臭をぶちかますため、十分飼育できていると著者が判断している。
 今後、ペアリングがうまくいけばマット状にばらまき産卵をするらしいが、果たしてそれが確認できるのかわからない。完全に腐葉土を飼育しているからである。また、腐葉土をかき回して卵や幼虫をつぶしてしまうのも怖いため、基本的には加湿と餌の交換程度の管理しか行わないと思う。もしも、幼虫や卵が確認できた場合、随時報告はしていく所存である。

4.まとめ

結論からいうとヨコヅナツチカメムシ飼育は虚無である。よく、土中性の生物飼育は土を飼っていると比喩されるが、本種もまさしくそれである。容器をみても動く姿はない。完全に腐葉土と同化している。しかし、目の前に広がるケースの中には必ずヨコヅナツチカメムシが生きており、そこで生を全うしているのである。こんなに素晴らしいツチカメムシはいないと思う。我々が見つめる腐葉土の中からヨコヅナツチカメムシは我々を見ているのである。もし、ツチカメムシ類を増種する機会があるならば、迷わずベニツチカメムシを選択するだろう。なぜなら特徴的な赤色ならば、きっと腐葉土に混じっていてもそこに存在を感じられるからである。
 ツチカメムシ類は実は砂地から雑木林まで様々な環境に生息している昆虫である。この記事を読んだあなたも、ぜひ、その辺の土をほじくり返してツチカメムシ類と遭遇してほしい。そして、飼育し一緒に虚無になるのをお勧めする。ツチカメムシは間違いなく良い虫である。

いいなと思ったら応援しよう!