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射撃場

人生で初めて、射撃場に行った。

ハワイや韓国にある観光客向けの射撃場ではなく、れっきとした国内、それも東京都内の話だ。もちろん銃を使って標的を撃つ、あの射撃である。

実を言うと、ぼくは去年狩猟免許(第一種銃猟)を取得した。いずれ銃を手にするつもりだ。どうして狩猟免許を持ち始めたのかという話はいずれまたしようと思うので、今回は特に説明しない。

よく誤解されることだけど、狩猟免許を所持していてもすぐに銃を持てるわけではない。これはあくまでも「(銃を使って)猟をしてもいいですよ」という許可であって「銃を持ってもいいですよ」という許可は別だ。

世界でもっとも銃に厳しい国・ニッポン。

たとえ正当な理由があっても、一般人が容易に銃を手にすることはできない。講習会、警察官との面接などの関門を突破し、許可が降りるまでには何ヶ月、時には半年以上待つケースもあると聞く。それまでは、たとえ指一本銃に触れることは許されない。

ところが、銃に触ったことがなくても「射撃」を体験する方法があるらしい。それもれっきとした「射撃場」でだ。銃を持てないのに射撃できるとは一体どういうことなのだろう。

事前に調べた情報を元に、ぼくは東京・府中まで向かうことにした。

新宿駅から、京王線特急に乗っておよそ30分。

南武線との乗換駅・分倍河原で電車を降りた。今回目指す「郷土の森総合体育館(府中市総合体育館)」はここからバスで10分ぐらいの場所にある。

券売機でチケットを買い、受付を済ませてから中に入る。1回の利用料はなんと300円(市外料金)だ。府中市に住んでいる人であれば、その半額で利用することができる。

射撃は、世界的にも歴史の長いスポーツだ。オリンピックでも第1回大会から開催されている。日本国内の競技人口はおよそ1万人(日本ライフル射撃協会調べ)。国内でも、国体やインターハイの正式種目になっている。

そんな理由もあって、実は全国各地に射撃場が存在する。ここ都内では射撃場の中でも「エアーライフル場」が多く、公立体育館を中心にそうした場所がいくつもあるらしい。

ちなみに、エアーライフルとはいわゆる空気銃のことで、射撃場と一口に言っても、銃の種類によって使える施設が異なる。有名な「クレー射撃」(散弾銃でクレーを撃ち落とす競技)も可能だが、対応している射撃場の数は少なくなり、その多くが人里離れた山奥にある。

今回ぼくがチャレンジするのは「ビームライフル」という種目。そう、厳密に言えば「銃」ではない。これが今回の種明かしだ。

ビームライフルとは、10m先の電子標的に向かって撃つための電子銃を指す。名前の通り、銃からは弾が発射されるわけではなく、ビームが発射されるようになっている。

標的の大きさは直径4.5cm。外側から内側にかけて5mmごとに1点ずつ割り振られ、一番真ん中の「10点」を達成するためには、直径1mm以内のごく狭い範囲に当てなければならない。

それはまるで、10m先にあるシャープペンシルの芯を狙うかのようなチャレンジといってもいい。

実際に銃を持ってみた。

実弾を使わないとはいえ決してチープな作りではなく、金属部品も使われていて重量感がある。おそらく本物のエアーライフルと持ち比べてもさほど違和感のない重さになっているのだろう。

ずっしりとした銃を持つ。

座ったり、台の上に置いて撃つ場合でも、ほんのわずかな位置のズレによって狂いが生じる。手元の1mmの差が、10m先では何cmもの差となってあらわれる。狙い通りに当てるためには、緻密なコントロールが必要だ。

立射(立って撃つこと)にも挑戦した。重さに慣れていないせいか銃を支える手がぐらぐらする。身体が安定しないせいで真ん中に当てることが難しく、7点か8点を出すのが精一杯だった。熟練者ともなれば、中心(10点)を当て続けるのが当たり前だという。

射撃とは、決して常人離れした体力や身体能力が必要な競技ではない。それは、オリンピック最高齢の金メダリスト、銀メダリストがいずれも射撃競技で達成されていることにもあらわれている。

実際に狩猟で銃を扱っている先輩に話を聞くと、正確に当てるためには「集中力と精神力」こそが重要だという。

身体のブレを最小限に抑え、慎重に狙いを構えて引き金を引く。シャープペンシルの芯ほどに狭い的に当て続けるためには、正確な挙動を繰り返す集中力と、どんな状況でも決して混乱することなく冷静さを保ち続ける精神力こそが求められるのかもしれない。

集中力やメンタルを鍛えるためにはとてもいいスポーツなのかもしれないと思った。これからも何度か来てみようと思う。

そしていつかは実際の弾が出る銃で射撃をしてみたい。


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