主任さんが端境を漂う話
【主任】それは、それとして、あれはどうしてあんな感じになっちゃったんでしょうねぇ・・・
【課長】何言ってるのか、何一つわからないよ。
先々週の技術本部であったアイデア検討会の話に決まってるじゃないですかぁ
そんな前の話を考えてるって、わかるわけないだろ! エスパーじゃないんだからっ!
・・・エスパーってなんか懐かしい感じですね、昭和の匂いがします。
今風には何ていうんだよ?
難しいところですが、メンタリストと言っても差し支えないのではないでしょうか。
似ず非なるものだよ・・・じゃっそういう事で、俺は帰るから、お疲れさんっ
お待ちください、話はまだ終わっていません!
それっぽく、止めてもだめだよ、どうせくだらない話だもん。
仕事の話に決まってるじゃないですかっ!
じゃあ、取り敢えず聞いてみるけど、くだらない話だったらすぐに帰るからね・・・で、先々週の会議がなんだって?
簡単に言うと、あの会議失敗ですよね? 司会の人がそれっぽくまとめましたけど・・・
まぁねえ、でも、あんなもんだよ、アイデア検討会なんて。
何がいけなかったとかは分かりませんが、面白いアイデアが出る感じが全くありませんでした。
その感覚は正しいと思うよ、あの会議から価値のあるアイデアは絶対でないよ。
参加者の中には結構面白い人も入っているのに、どうしてあんな感じになっちゃったでしょうね?
アイデア検討会の目的を間違って認識しているからじゃないかなぁ
みんなで議論して、素晴らしいアイデアを創造するための会議なんじゃないですか?
高々2時間程度の会議で、素晴らしいアイデアが出てくるわけないよ。
じゃあ、何を目的にあの人件費の高い会議をやってるんですか?
どのような場で自分のアイデアを発表するかは別として、アイデアの種が生まれるのは自分の中にあるアイデアの枠組みに外からの情報や刺激が作用した時だよ。それは、仕事中とかプライベート中とか状況に関係なくやって来るんだよ。その時に大事になるのが、良いアイデアと悪いアイデアを判断する物差しがメンタルモデルになっている事なんだよ
おっしゃってる意味はなんとなくわかりますが・・・それと会議とどんな関係があるんですか?
会議でやるべきは、その物差しを議論して正しく共有する事なんだよ。
具体的にはどんなふうに進めればいいんですか?
基本的には良いアイデアとそうでないものについて、評価することが大切だよ、それとその評価を曖昧にせずに、なぜ良いアイデアなのか、なぜ悪いアイデアなのかを決めている物差しをしっかり議論することによって、メンバーの中に共通のメンタルモデルが形成されていくんだよ。その時に大事になるのが・・・あっ!こんな時間だ、もう出ないと間に合わない、じゃあ帰るから
意地悪で言ってるでしょ?・・・「大事になるのが何か?」だけを言って帰ってください。
早く帰りたいから簡単に言うとね・・・
早く帰っても良いから丁寧に言ってくださいよ。せっかくだから。
簡単に言うとねっ!・・・良いアイデアと悪いアイデアを分けるバウンダリーを定義するのに重要なのは、良さそうだけど悪いアイデアと、悪そうだけど良いアイデアをいろんな角度で出すことなんだよ。それによって、みんなの頭の中にある境界線が明確になっていく。でも、ダメな会議では参加者が正しいことを言おうとする結果、可能性の領域のど真ん中ばかりにアイデアを打ち込むから、バウンダリーが広がらずに、会議が終わった後も面白いアイデアが出てきにくいマインドセットになってしまうんだよ。
なるほどねぇ・・・アイデアがあるべき領域を特定するためにアイデアを出すってことですねぇ・・・次回参加した時には、是非領域の端境を狙った発言をしたいと思います。
ん〜・・・主任さんの場合は、も〜少し的に近づけた方がいいかもねぇ、領域から離れすぎても意味がないからね、一応言っとくけど、技術本部の方から的外れな意見を乱発して会議を混乱させないでくれって、申し入れが来てたから。じゃあ、時間だから帰るね
・・・お疲れ様でした
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