夕暮れ時にベランダへ出ると

 夕暮れ時にベランダへ出ると、秋の気配さえ感じ取れる風が頬を撫でた。

 しばらく漫然としていると、彼女がやってきて僕にグラスを渡す。アイスコーヒーのありがたみも、夏の暑さとともに去ってしまった。また来年だね、とグラスを傾けたら、氷がかららんと鳴ってさよならを告げた。

 二人でビルの合間に沈んでいく夕日を眺める。ふいに思考が口から零れる。

「このまま、ずっと……」

 僕の言葉を彼女が引き取った。

「リモートワークが続けばいいのにね」

「……うん」

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