茅ヶ崎に向かって【音楽の神様に乾杯!~サザンと僕の30年ほどの逢瀬の日々~プロローグ】
新神戸から新幹線に乗って、新横浜へ。そこから在来線に乗り換えた。そして、辻堂を出発する頃には、僕のテンションは最高潮に達していた。
初めて、茅ヶ崎でサザンに逢える。思い返せば2000年、高校2年生だった頃、サザンオールスターズは初の茅ヶ崎ライブを敢行した。小学生のときからサザンが大好きだったけど、当時の僕はサザンライブ童貞。仲良かったクラスメイトのシュンが貸してくれた、茅ヶ崎ライブを録画したビデオを自宅で観て、いつかここでサザンを観たい!と強く心に誓ったことを電車に揺られながら思い出す。
茅ヶ崎駅のホームに降りると、ちょうど反対車線から電車がやって来て、軽快な『希望の轍』が鳴り響いた。聖地にやって来た。そんな感慨が胸を満たす。改札はごった返していて、大きなお祭りのような雰囲気が町全体に広がっているのを痛感した。
前もって通知されていた案内を真面目に守って雄三通りを歩き、茅ヶ崎公園野球場を目指す。歩いていると、自転車にサーフボードを携えて走る女性とすれ違い、海の町・茅ケ崎に来たことを実感した。20分くらい、外から訪れた人間丸出しの様相で、キョロキョロしながら茅ヶ崎の風景を堪能しながら歩む時間も幸せだった。
スマホをかざして球場内に入ると、バックスクリーン上空に浮かぶ太陽が、夏の後ろ髪を引くような熱い日差しを見せていた。うちわで仰いだり、水分補給したりする人のそばで、フード付きのタオルを被る。会場内には、昭和のムード歌謡が流れていて、桑田佳祐を創った音楽の一端を噛みしめた。
開演30分前になると、陽は傾き、風が吹いて、涼しくなっていった。僕と同じく、ひとりで参加している人が多いみたいで、いつものライブより静かな気がした。もしかしたら、聖地だからこその緊張感が客席にも芽生え、それが静寂につながっていたのかもしれない。ひとりひとりが、興奮を胸に秘めていた。
そして、時は奏でられた。加山雄三の歌に乗って、あの5人が登場する。高校2年生のときにビデオで観た憧れの場所に、僕はいる。手が届く距離ではないけれど同じ空間にいて、数時間でも同じ時間を過ごせるのが嬉しいけど、どこかふわふわとした不思議な感覚でステージを見つめていた。
イントロが響くと、会場は一気に沸いた。「サザンに出逢えて、サザンを好きになってほんとうに良かった」。桑田さんは、よく「音楽の神様に乾杯!」という。でも、僕からしたら、サザンこそが音楽の神様だ。
このエッセイは「音楽の神様に乾杯!~サザンと僕の30年ほどの逢瀬の日々〜」と題して、記していく。僕の人生のほぼすべてにサザンがいて、サザンに救われたことは枚挙にいとまがない。
「ほんとうに今までありがとう」。そんな胸いっぱいの愛と感謝を込めて。
(つづく)
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