撥水 防水ジャケットの物語
撥水 防水素材は今の時代 機能性素材としてファッション業界では当たり前のように使われています。
ちょうどテロ事件のあった9.11くらいから世界中に広まり日本では東日本大震災くらいから大衆化したイメージがあります。
巷ではニッチだったアウトドアやミリタリーのギミックがリアルクローズに普及していった背景には人々の危機管理能力の向上と自然災害の脅威、地球環境の配慮等があります。
さて、ファッションにおいて「撥水」の歴史の始祖はなにか?
恐らくは1820年 イギリスの発明家 チャールズマッキントッシュとゴム産業の創始者トーマス ハンコックによる「ゴム引きコート」ではないかと思います。
雨の多い国 イギリスにおいて雨を凌ぐというのはとても大切なこと。
火山灰土が多く寒さも激しい北部では漁業と畜産が主要産業であった背景からコットンやウールに動物の油を塗り耐水性を高めていた歴史があります。
マッキントッシュが世に広めたゴム引きコートは上流階級の人々のものでした。
表地と裏地の間にラテックスゴムを塗り固め撥水性を高めた生地(今で言う3レイヤー)をコートに仕立て。
代表作マックが世に広まりました
デメリットと言えば通気性の悪さと重さ
しかしそれも技術開発と共に改善されていきました。
1853年 日本ではペリーがやってきたその年にロンドンで改良版のマックを売り出した「アクアスキュータム」が誕生します。
アクアスキュータムが求めたものは防水性のある繊維
ゴム引きコートのゴムは当時コールタールのような粘付きのあるゴムで作られておりとても悪臭がありました。
それを改善しようとアクアスキュータムは防水繊維を開発することに務めていました。
時を同じくして21歳の若い生地職人がギャバジンという撥水素材を開発します。
その若者の名前は「トーマス バーバリー」
当時、羊飼いが使っていたギャバティーンという麻を使ったレインコートからヒントを得たギャバジンを使ったトレンチコートが誕生します。
トレンチとは塹壕のこと雨水が溜まる塹壕戦において撥水性は非常に重要でイギリスの軍服としてアクアスキュータム、バーバリーのコートは採用されました。
しかし、今のトレンチコートの原型はマッキントッシュのマックでその改良版を作ったのがこの2社です。
それから1940年以降に軍服としての需要は減り
トレンチコートはファッションにおいてスマートさの象徴となっていきます。
トレンチコートが生まれた年から100年後
ある繊維が撥水素材に革命をもたらします。
石油系繊維発明により今の機能性素材の始祖を生み出します。
1938年 第二次世界大戦中にアメリカ カローザスによって発明された繊維 ナイロン
この繊維は軽量性 安価性 耐久性 耐水性もある
今のナイロンジャケットの原型となりました。
イギリス軍とアメリカ軍の優劣がついたのもこれが原因で北部の極寒地での戦闘においてはウールコートは重く雨も染み、体が冷え、兵は疲弊していきました。
その点、アメリカ軍のダウンジャケットはこれを凌駕し北部戦線で圧倒していったという歴史もあります。
その後、戦争が終息しアウトドアウェアとして庶民に普及していきます。
1968年 アメリカ シエラデザインズが開発した60/40クロスはギャバジンに似ている織りです。
60%をコットン 40%をナイロンの生地を使用し雨に濡れるとコットンが膨張し、耐水性をあげ乾くと通気性を持たせる
ナイロンの強度とコットンの伸縮性を活用した生地60/40クロスを使用したマウンテンジャケットは当時大流行しました。
そして、1979年 ボブ ゴアが開発したゴアテックス メンブレンが登場します。
今までの撥水ジャケットに透湿という概念をもたらしたフィルターを開発しました。
身体から発する水蒸気が通るレベルの穴の大きさでかつ雨粒の大きさより小さい穴を無数に空けることで可能となった新素材です。
このゴアテックスの技術が世界中の撥水素材に革命を起こしアウトドアブランドや軍隊が採用
今の防水ジャケットの原型となります。
そして防水素材の革命家 ゴア社は自社の耐久テストをクリアした商品(およそ一年以上かかる)に証明としてゴアテックスロゴをつけることを許しています。
それがゴアテックスのブランド性を高めたひとつの要因だといえます。