バブリー!
普通に手を挙げてもなかなか捕まらないけど
人差し指で1を作るとなぜか止まったタクシー
日本中が浮かれていて勘違いをしてた
華やかなバブルの時代
独り暮らしも始めたばかりの社会人3年目
俺は友達に無理矢理連れて行かれ
新宿の第二東亜会館7階
『G.B.ラビッツ』へ 入った。
ただ単に踊ってるだけのディスコって
何が面白いんだろうと思っていた が
綺羅びやかな店内、遊び慣れて洗礼されてる人々
見た事もない美味しそうな食べ物が並んだ
スペース しかも食べ放題 これがディスコかと
見渡していると友達が
「踊ろうぜ」と腕をつかんでダンスフロアーへ
踊るのなんて簡単だと高をくくっていたら
以外と出来なかった ショックだった
周りを見渡して1番上手い人の後ろに行って
真似をしてたらなんとなく様になってきた
入店したのが9時頃気が付くと閉店時間
朝の5時まで踊り続けてた
ただ踊ってるだけなのにすごく楽しかった
次の週末偶然小中学校の友達と再会した
ファミレスで昔話で盛り上がった後
近況報告になり 先週初めてディスコに行ったら
楽しくてまた行こうと思ってると言ったら
「今度俺と行こうぜ 新宿じゃなくて六本木に」と
小学生の時は仲がよくて遊んでたけど
中学に入ってすぐ友達は不良になったので
疎遠になってたけど 今はそんな面影はなくて
むしろ好青年って言う方が合っている
「六本木のディスコよく行くの?」
「たまにね 会社の人達と」
「会社の人達もディスコ好きなんだ」
「うん 俺は今ジャズダンスのインストラクターやってるんだ ダンス教えてあげるよ」
アパートへ帰ってからふと思った
友達はディスコのフロアーに立ってるだけで
女の子からナンパされるだろう位のイケメン
しかもダンスがハンパじゃなく上手いから……
踊るのが楽しい事などすっかり忘れて
可愛い女の子の事を想像しながら
パン パンとラップ音を聞きながら寝た
(“おばあちゃんの一言”にラップ音の事が書いてありますよかったら読んでみて下さい)
六本木「スクエアービル」
地下2階地上10階 1・2階はゲームセンター
その他は 全部ディスコ エレベーター前には人だかりが
何かイベントでもあると思いきやいつものことだと
待つこと20分位でようやくエレベーターに乗れた
目指すは8階このビルの中で1番人気の「NEPENTA(ネペンタ)」へ
エレベーターの扉が開くと「GBラビッツ」とは雰囲気が全く違う
まず年齢層がこっちの方が大人で色気もあり露出も多め 最高だ
友達に言ったら 新宿は20歳以下で六本木は20歳以上って感じかなと
フロアーの隅で「踊ってみて」と言われて踊ると
「ステップは足だけじゃなく腰から出して」とか
「両手はこうした方がいい」とか
「足元は見ちゃだめ下手にみえるから」とか教えてくれたら
すぐ上手く踊れた 俺って天才!
違った 天才なのは友達だった
「ここで踊ってて ちょっと遊んでくる」
そう言うとフロアーの真ん中へ向かう
ディスコではフロアーの真ん中は
上手い人しか踊ってはいけない
という暗黙のルールみたいのがある
下手が真ん中で踊ってても恥ずかしくて
端に逃げて行く形にもなるけど
友達がド真ん中に 踊らないでボーと立ってる
次の瞬間 踊りだした「ラジオ体操第一」を
近くにいた上手い人達が周りを囲んで
睨んでる ヤバいかもと思ってると
普通に踊りだした いや普通じゃない
上手い スゲー カッコいい ハンパじゃねー
睨んでた人達がスペースをあけ始め
周りから歓声があがる
僕の前にいた女の子二人もメッチャカッコいいを連呼してる
5分位で踊りを止めて俺の所に来て
「何か飲もう」とカウンターに行くあいだも
ほぼ全員友達を見てた
次の週末また六本木に行く約束をした
その前に一度ウチ来ない?練習しようよって事に
願ったり叶ったりだ 上手くなりたかったし
全員から見られるって癖になるかも
俺を見てた訳じゃないけど…
平日に一回友達の家で練習
週末は六本木(同じ店には行かない)を
2ヶ月位このパターンを続けた
この頃になると友達が踊る前に
俺一人でフロアーの真ん中に入り踊っても
睨まれる事はないほど上達してた
少しは注目もされる様になってきて
あの快感が少し分かってきた
友達が行けない週末
思いきって一人で行ってみた
真ん中で踊っても文句も言われる事なく
楽しいけど 何かが違う
そりゃ踊りも友達レベルではないのは
充分わかってる
圧倒的に何かが足らない
女の子の目がキラキラしてない
ハァっとした 分かったこれだ
俺はイケメンではなかった
世の中いくら努力しても
叶わない事が ある事も
アホで気付くのが遅すぎる事も
ありがとうごさいました。
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