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タンザナイト -キリマンジャロの夕日-
●序文
不定期宝石紹介シリーズ 第8弾「タンザナイト(ゾイサイト)」。アフリカから来た”最も美しい青い宝石”、タンザナイトの紹介です。
「最も美しい青」はティファニーの受け売りで、今回は宝石のマーケティング戦略のお話です。
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● タンザナイトの基本情報
・モース硬度: 6 - 7 (宝石 その美と科学)
・屈折率: 1.692 ~ 1.701 (宝石 その美と科学)
・比重: 3.35 (宝石 その美と科学)
・結晶系: 斜方晶系
・劈開: 1方向に完全
・色: 青、 帯紫青(多色性あり)
・産地: タンザニア
タンザナイトはその美しい青色で人気の宝石です。比較的新しい宝石で、1960年代末に発見され1970年代以降に一般的に認知されて流通するようになりました。多くの宝石が紀元前から愛されていたのとは対照的ですよね。
「タンザナイト」というのは宝石としての商品名で、ティファニーが命名したものです。産地である東アフリカのタンザニアが名前の元となったものですね。鉱物としての名前は「ゾイサイト」といって、一般的には透明感の少ない褐色や緑色の石です。濃いピンクと落ち着いたグリーンが入り混じったルビーインゾイサイトなどが有名です。こちらはアニョライトという別名があって、タンザナイトの産地に住むマサイ族の「anyoli(緑)」という言葉が元になっているそうです。
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タンザナイトもその他のゾイサイトと同じくくすんだ緑色や褐色を帯びた青色の原石として採掘されますが、加熱処理を施すことで透明感が出て、緑色や褐色の色味が抜けて美しい紫色を帯びた青色が現れます。
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● 角度によって色が変わる!? 不思議な「多色性」
タンザナイトの美しさを語るうえで欠かせないのが多色性です。多色性というのは、宝石を見る方向によって色が変わって見える性質のことです。タンザナイトは角度を変えると深い青色からすみれ色や紫色に変わります。
多色性を持つ宝石の魅力はカットでより際立ちます。どの色を強調するか、色が変わるギミックを生かすか、どの角度を正面とするかで雰囲気の演出を変えられるわけですね。
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回転させると色が変わる多色性という不思議な現状は、鉱物の「光学異方性」という性質によるものです。
用語で書くと難しく感じますが、光の進み方や吸収のしかたが方向・角度によって変わる、という性質です。実はこの性質自体はそれほど珍しいものではなく、等軸晶系や非晶質でない鉱物結晶はみんな多かれ少なかれこの性質をもっています。
(等軸晶系や非晶質は、反対に「光学等方性」という光の進み方が角度や方向によって変化しないという性質があります)
また、光学異方性をもつ結晶は、光が内部に入り込むときに複屈折という現象が起きます。複屈折というのは簡単に言うと、光の屈折が起こるときに光の成分が複数に分かれて別の進路をたどる現象です。石好きの方だと、方解石がよく例として上がるので分かりやすいかもしれません。
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このように光の成分が分離して複数の経路をたどるようなとき、それぞれの成分で違った光の吸収が起こって、最終的に混ざった光が私たちの目に届いて”色”になるわけですが、
光学異方性のために成分の混ざり具合が結晶の角度によって変わることになります。
タンザナイトだと、青い成分が多めに混ざる角度と、それに少し赤っぽい成分が混ざる角度と、黄緑っぽい成分が混ざる角度があるために、くるくると石を回すと色が変わって見えるんですね。
● 決め手は地元愛! タンザナイトのマーケティング戦略
タンザナイトは伝統的な色石に負けず劣らずの、とても人気が高い宝石となっています。
その人気には産地のタンザニアの企業のマーケティングの成功が大きくかかわっています。
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