『トニーとシェリーと魔法の光』
2023年、チェコ・スロバキア・ハンガリー、フィリップ・ポシヴァチュ監督、ストップモーション(人形)、83分、
11/1(水)、東京国際映画祭、ヒューマントラストシネマ有楽町にて。
人形の独特な造形、どこか拙さのある動き、色、全てが「ザ・チェコ」の人形アニメ。チェコならではの手作り感あふれるストップモーションの世界と、豊かなチェコ語の響きに魅入られる。
11歳の少年トニーは生まれつき体が発光する特殊な体質の持ち主。両親と赤ん坊の弟とアパートの上階に住んでいる。
アパートは怪しい雰囲気の老いた管理人がおり、癖の強い人々が住んでいる。
両親はトニーを心配するあまり、常に仮面と手袋で体を隠させ、外に出す時は腰に長いロープを結び、何かあればすぐに引き戻している。
自我に目覚めてきたトニーはこの扱いに不満だが渋々従っている。
ある日、アパートに風変わりな少女シェリーと、その母でかつての花形で今は引退したバレリーナが越して来る。
トニーとシェリーは仲良くなり、一緒にアパートに出没する闇の塊の秘密を探ろうとする。
子離れ出来ない過保護な親や特異体質の少年など現代的な問題への目線を持ちつつも、ファンタジーを通した王道の少年の成長物語。というよりも、様々な語り口の可能性を持ちつつも上手く展開出来ていない感。
例えばトニーの発光体質も隠す割に住人はほぼ知っているし、物語上での決定的な役立て方も出来ていないなど惜しい。
アパートの螺旋階段の俯瞰などの空間構成や雰囲気あるポスタービジュアルなど画面の魅力はあるのだが生かし切れていない。
基本的にアパートの敷地内で展開する話だが、時折、川が流れるチェコの街並みの鳥瞰が挟まれ、ああ…と胸を打たれる。
作者はイジー・バルタからの影響を語っているが、管理人の特異な容貌などにその面影がある。チェコの伝統がしっかりと継承されているのが嬉しい。
ところで、出没する煤のような黒いあれは、まっくろくろすけ?
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