雨は降り続く。

雨に煙る街。湿度は高いけど、夜はまだ涼しい。遠くのビルの航空障害灯がぼんやり見える。ここじゃないどこかの街で、もっと高いビルの赤い灯りを見上げていたことがあった気がする。それはいつかの特定の記憶なのか、これまでの記憶から形作られた心象風景なのか。どうか後者であってほしい。


朝。起きると、ひどく寂しい気持ちになっていた。
昨夜、失くしたもののことを考えていたからかもしれない。夢に出てきたわけでもないのに。身体は重く、起き上がるまで時間がかかる。二度寝したくなる。
消えてしまいたいほどの寂しさと常に向き合い続けるのが、どうやら人間というものらしい。最近、そう思うようになった。人間をやるって難しい。

忘れる方法をずっと探してきた。そうすれば楽になると思ったのに、却ってこんなに寂しい気持ちになるなんて。

では一体どうすれば良かったんだ、と誰にでもなく問いかけたりする。


雨はまだ降り続いている。やっぱり、いつかの街でこんな雨の中、ビルの赤い光を見上げたような気がする。それが作られた記憶だったなら、どんなに楽だったことか。

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