青春と春。

最近、夜にnoteを書こうと思っても、特に言葉が出てこない。

これは良くない傾向だ。自分自身から生きる気力が感じられない。日付はするすると変わってゆく。季節は知らぬ間に移ろう。いつの間にか年を取る。


見たい景色もなく、特に食べたいものもなく、聴きたい音楽も思いつかないのは、決して夜の暗さのせいだけではない。


久しぶりに近所の本屋に立ち寄った。といってもTSUTAYAだけれど。あの書店がTSUTAYAだということは途中まで知らなかった。書店の隣には確かにレンタルのコーナーがあったけれど、TSUTAYAと一緒に入っているどこかの書店なのだろうくらいに思っていた。何か久しぶりに本を買おうと思ったけれど、特に何かを読む気になれなかった。

仕事で普段使いしているメモ帳が切れていたので、それだけ持ってレジに並ぼうとすると、ふと後方のスペースの見慣れた絵が気になった。

アジカンのCDジャケットをずっと手掛けている中村佑介さんのポップだった。真っ先に目についたのは、崩壊アンプリファーのオレンジのジャケット。新しく画集が発売するらしい、ということは知っていた。なぜか急に寂しいような心細いような感情に襲われた。どうしてそんな気持ちになるのか、分からなかった。アジカンといえば高校時代のどうにもならなかった片想いを思い出すようだけれど、そんなことはもう遥か過去のことだし、今更自分の胸を締め付けるトリガーになるとは思えなかった。いったい何なのだろうと考えながら、画集を手に取る。

中村佑介さんの手掛けたアジカンのジャケットであれば、どれが一番好きだろう。初めて意識したアーティストやCDジャケットというものがアジカンの中村佑介さんの絵だったので、アーティストのCDジャケットって何かしらの統一性があるものだと思っていた。実際は全くそんなことはなくて、他のアーティストのジャケットを並べるとデザインがばらばらであることに驚いたものだ。絵だけで一番を決めるのは難しい。どうしても、曲であったり、そのCDにまつわる自分の記憶も入ってしまう。一番思い出に残っているアジカンのCDを一つ上げるなら、『ワールド ワールド ワールド』。

それまでずっと、アジカンのアルバム名には『ファ』が入っていた。崩壊アンプリファー、君繋ファイブエム、ソルファ、ファンクラブ。初めて『ファ』が抜け、ワールドと三回繰り返すアルバム名。前作ファンクラブのモノクロのジャケットから打って変わった、鮮やかな色。2008年、一番青春をしていたような気がする。そんなすべて、何もかもが自分たちのために用意されたようにすら思えたあの時。そんなことを思い出す。


今日襲われた寂寥感は、そんな昔のことを思い出したからだろうか。多分違う。懐かしい絵を見て思い出したのは、今朝の夢にも出てきた人のことだった気がする。関連性は分からない。意味なんてないのかもしれない。アジカンの話だって、少しはしたっけ。憶えてないくらいだ。新しい画集の販促ポップなのに、なぜか肝心の画集が置いていなかったので、メモ帳だけ買って書店を後にした。

その足でスーパーに食材を買いに行った。思い出したことは、恐らく自分の考えで正しかった。マスクをして、入り口でアルコール消毒をする習慣が、いつの間にか当たり前になった。あっという間に世界は変わった。閉店まで二時間を切り、人もまばらな店内で、去年の春、通路を抜けるのにも苦労するほどに混雑した都内のスーパーの景色を思い出していた。擦り切れた感情を絞り出したところで、嗚咽にも涙にもならない。


少し夢に出てきたくらいで、これほど心を揺さぶられるのだから、マトモになるには程遠い。きのこ帝国の猫とアレルギーを聴いてみたのも良くなかった。ドライブまでを聴くに留めて、今日は寝よう。続く曲を聴いてしまえば、きっと今夜は楽には眠れない。

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