重度障害者の意思疎通手段についての情報収集-Tobii Eye Trackerの利用-

今日はちょっと珍しい書き物にしようと思う。調べ物をしていたので、備忘録的に一つの記事にしてみる。

知ったかぶりで書くわけではなく、知識をひけらかしたいわけではなく、実用したいために書いているので、どうか知見のある方がいたら色々と教えて欲しい。



端的に状況を説明する。弟がいる。この前24歳になった。弟が自分にとってどんな存在か。自分にとっての半身みたいなものだとすら思っている。いつだって大事な存在だった。幼い自分のヒーローの名前を、弟に付けようとしたほどに、生まれる前から待ちわびた、大事な存在だった。

重度障害だ。1歳になってすぐの1月17日。脳性麻痺で肢体不自由になった。

生活には介護が必要で、ちゃんとした言葉は発せない。ただ、嫌なら怒るし、不機嫌になるし、楽しければ笑う。表情から意思疎通は出来ていた。

ただその意思疎通が本当の意思疎通であったか、ということはずっと疑わしかった。長年一緒に過ごしてきた家族だから、表情や声から察することは出来るけれど、「察した」ことは本当に正しかったのか。勘違いとかバイアスとか思い込みとか、本当は本人の意思とは違うことが伝わっていたんじゃないか。両親にとっては分からないが、弟と本当の意味で意思疎通することは、自分にとっては長年望んできたことだった。



重度障害のある人たちとの意思疎通であったり、自分で出来ることを増やすという目的で、視線入力装置とかが検討されてきた。ただ今までは100万円規模の高価な装置で、一般人にはあまり手が届かない近未来的な代物だった。


ところが、最近はゲーム目的で安価なものが市販されている。Tobii Eye Tracker 5という製品など。価格も2万円ちょっと。



諸々、課題はあるようだけれど、かなりの精度が実現できているらしい。Tobii Eye Tracker 5は前モデルに比べると発熱しやすいらしく、それが少し懸念点。



研究されてる方が、作成したソフトウェアを配布してくれているらしい。ゲーム関連で訓練できるソフトウェアがいくつも無料で公開されている。なんと無料。こういう時、研究という行為の公益性が非常に助かる。



一番気になる部分は、「意思疎通が可能になるのかどうか」。視線入力のハードウェアさえ用意出来たら、あとはソフトウェアさえあればキーボード入力くらいは出来るようになりそうだな、という目算はある。ただ自分にはソフトウェアを作るスキルはないし、何よりOSのデフォルトの機能とかよりは、もうちょっと障害のある人に特化したものがあると良いなぁ。ハードとソフトの相性の問題もある。



どうやらHeartyLadderというソフトを組み合わせることで、簡単にできそう。こちらもまた無料。なんでも無料で済ませようとするのは悪い癖だ。ただTobiiは買う気だから良いか。

・Senwisdomsさん「TobiiとHeartyLadderで視線入力による意思伝達装置を作る」



仕事でも結局、「画像解析します」とかいうテーマをいきなり投げられて、全く知識がない状態で悩んだ挙句、パブリックドメインのImageJにたどり着いた。画像解析に関してはImageJの派生のFijiを使って、ノーコストで道筋を見出すところまでは来ているから、それはそれでいいのかもしれない。ただし工数はめちゃくちゃ使ったので人件費はかさんだ。ついでに言えばFijiとかを使わずともWinROOFとかの市販ソフトウェアを使えば何の苦労もなかった気がするので、車輪の再発明的な側面があったことも否めない。



閑話休題。TobiiとHeartyLadderの組み合わせで、重度障害に対応した意思伝達手段が割と簡単に構築できそう。あとは問題は、本人のやる気かな。本人とは自分のことでもあるし、使用者のことでもある。「意思疎通しよう!」と意気揚々と用意しても、興味を示してくれなければ、結局はゲームしかやってくれないかもしれない。それでも出来ること、楽しいことが増えるならそれは素晴らしいことなのだけれど。

心配なのは、ちょっと言いにくいけれど、弟がどれくらいの頭の良さを持っているのだろう、ということ。心は成長している。特別支援学校時代の写真を見て泣いていたという話も両親から聞いた。ただ、いつでも無邪気に笑っているから、正直年相応の知力があるのか、兄弟でも分からない。ずっと他人の話し声を聞いて、言葉は理解しているはずだ。それでも、文字は分かるだろうか。特別支援学校で勉強しているはずだけれど、知力以前に、気まぐれな弟のことだから、もしかしたら真面目に勉強していなかったんじゃないか?とか思ってしまう。兄は心配し過ぎだろうか。でも、割と要領良いところがあるからな。全部ちゃんと理解しているかもしれない。

後は、どんな言葉を使うのだろう、ということ。視線入力が紡ぐ言葉で「く そ や ろ う」などと言われたらどうしよう、とか考えてしまう。まだ出来るようになると決まったわけではないのに。

弟に出来ることが増えるかもしれない。彼の世界が広がるかもしれない。そこにはなんだか親心にも似た不安と、無限の期待がある。



情報収集の要点は三つ。

・視線入力デバイスは、Tobii Eye Tracker 5など、ゲーム用の安価で精度良いものが市販されるようになった。

・簡単なゲームが出来るソフトウェアが研究者の方々から配布されている。

・HeartyLadderといったソフトとTobiiを組み合わせれば、意思疎通できる環境を簡単に作れるかもしれない。


懸念点・疑問点は三つ

・実家のPCのスペックは大丈夫?

これに関しては、この前Ryzen5 4500U(6コア 2.3 GHz)のPCを母の仕事用に買ってあげたし、大丈夫そう。

・Tobiiの商品説明が分かりにくいっぽい。

・Senwisdomsさん「Tobiiのサイトがわかりにくいのでリンク先をまとめておく」

基本的に英語サイトしかないみたい。自分はまぁ頑張れば読めるとして、実際に使うのは両親と弟だし、もっとわかりやすくできればいいのだけれど。マニュアルでも作ってあげればいいのか。

・Tobiiを買っただけで本当に大丈夫?

2万円ちょっとなので、万が一失敗しても大した出費ではないけれど、もしも実現しなかったら、期待した分だけ精神的にショックがありそう。ちゃんと調べておきたい。


最後に繰り返しになるけれど、もし知見のある方々がいたらご意見いただけるとありがたいです。



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