結局は誰も「化学調味料が人体に有害」だとは 証明できていない?
今年59歳になる。高校生のころまでは、卵かけご飯から、うどんや蕎麦、おひたしに炒め物まで…とにかく、醤油で味付けしていた料理には何でもかんでも味の素をぶっかけていた。ハンバーグだとかカレーだとかにもかけていたかもしれない。
ところがある日、突然山田家の食卓から味の素が消えた。当時から、とくに健康に関してはご近所さんとの世間話レベルの怪しい風説にさえすぐ左右されがちだった母が、どっかから「化学調味料はカラダに悪い」との噂を聞きつけてきたからだ。そして、その化調を非とする論調はいつしか「怪しい」「風説」の域を通り越し、次第に世間全般の“スタンダード”となっていった。おそらく、化学調味料に関して言えば、ぼくくらいの年代の人たちは、似たような原風景が想い浮かぶのではなかろうか。
だが、近年、この「化調=カラダに悪い」説は覆されつつあり、昨今は「振りかけただけで簡単に美味しくなるのに、なんで使わないの?」といったサジェスチョンが新しい常識と成り代わりはじめているようだ。
ここで、ぼくが愛読する、去年ドラマ化もされた珠玉のラーメンビジネス漫画『らーめん才遊記』(作:久部縁郎/画:河合単/協力:石神秀幸 小学館)で、主人公の一人である、カリスマらーめん店主にして敏腕フードコンサルタントの芹沢達也が、化調について持論を展開しているシーンを、セリフで再現しみよう。
芹沢:我々が「旨味たっぷりの絶品スープ」などという時の旨味とはなんですか?
芹沢:グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸などいろいろありますが、日本人が最も親しんでいる旨味成分は昆布などに含まれているグルタミン酸ですよね?
芹沢:そして、化学調味料…別名、旨味調味料とは、純粋抽出されたグルタミン酸主成分。
芹沢:こんな美味しいもの、そうそうありませんよ。
(芹沢が出演しているTVラーメン番組に共演している)女性ゲスト:でも、化学調味料って体に悪いんじゃないですか!?
男性ゲストA:化学調味料たっぷりの料理を食べて、気分が悪くなったり、体がシビれたりって話を聞いたことありますけど…
(人気ラーメン評論家)有栖涼:確かに化学調味料は、その有害性を疑われ、いろいろと論議された時期があります。
有栖涼:しかし結局は、誰も化学調味料が人体に有害であるとは証明できなかったんですよ。
女性ゲスト:ええっ!?
男性ゲストA:そうなんですかっ!?
男性ゲストB:しかし…「証明できなかった」ということは、これから証明される可能性もあるんじゃ…?
有栖涼:私は神様じゃないので、リスクがゼロと断言はできません。
有栖涼:しかし、国連の国際食料農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同による食品添加物専門家会議(JECFA)は、グルタミン酸ナトリウムなどの化学調味料の安全性に太鼓判を押しています。
(人気ラーメンサイトを運営する人格者として知られるラヲタ)宮部:一日の摂取量に制限なく、乳幼児にも安全とされているんですよ。
男性ゲストB:世界的な機関がそこまで…!?
有栖涼:ええ。食品添加物にもいろいろありますが、少なくとも化学調味料に関しては安心していいんじゃないかとは思いますけどね。
番組司会者:う〜ん…なるほどぉ…
(中略)
有栖涼:化学調味料というのは、私や宮部さんのようにラーメンを紹介する側の人間にとっては、実にやっかいな存在だったんですよ。
有栖涼:さっきも言ったようにタブー的存在というか…
有栖涼:ラーメンは長らく、美味しさの相当部分を化学調味料に依存していた料理です。
有栖涼:化学調味料があってこそ美味しいというラーメン店は、はっきり言って多い…
有栖涼:しかし、化学調味料が有害であると疑われていた時代に、そうは言いにくいものがありました。
宮部:、我々は食品添加物の専門家でもないし、そこはあまり突っ込まず曖昧なスタンスを取り続けてきたというのが正直なところです。
番組司会者:しかし今や、信頼できる公的機関で安全性が証明されたということは…
有栖涼:ええ。もう化学調味料を肯定してもまったく問題ないでしょうね。
……と、そんなやりとりがあったのち、「ハイレベルな無化調ラーメンづくり」を標榜しているはずの芹沢ですら、
「自分の店で化学調味料を使ったことはないですが、それはあの味が好みではないというだけのこと…(中略)今後、場合によっては使う可能性もあります」
……と、「化学調味料を悪とはしない」ことを匂わす発言をなされている。
かつて、とある著名なラーメン評論家と雑談する機会があって、そのとき、ぼくが「好き」と主張したラーメン店のすべてを全否定された記憶がある。どの店も「化調の味が強すぎる」との理由であった。対して、そのラーメン評論家がイチ推しするラーメン店は、イザわざわざ足を運んでみたら、どの店もぶっちゃけ、イマイチ味的に物足りなかった……。
そう! 誰になんと言われようと、ぼくの舌は化調の旨味が「好み」なんであり、思春期のころから相も変わらず、それをず〜っと欲しているのだ。