見出し画像

自動車電池は充電から交換、レンタルの流れか

ガソリン自動車から電気自動車へ。このゲームチェンジの時代がやってきております。現時点における電気自動車の難点はバッテリーがどれだけ持つか、要するに一回の充電でどれだけ走ることができるかという点にあります。近年は運行距離も伸びてきたとはいえ、充電に要する時間やインフラを考慮するとまだまだ難点であることには違いありません。この状況を解決すべく、車載電池最大手寧徳時代(CATL)の傘下企業である時代電服が電池交換サービスEVOGOを発表しました。これは日本のメディアでも紹介されています。

中国CATL、バッテリー交換の新サービス「EVOGO」を発表

電池を充電することなく交換できるのであれば、これはもうガソリンを充填するよりも簡単かもしれません。電池交換方式は中国も国として奨励している方向にあります。国務院が2020年11月に発表した《新エネルギー自動車産業発展計画(2021-2035年》において、電池交換インフラ施設の建設を加速させ、スマート道路網施設の建設を協調的に推進することを謳っています。また、2022年1月21日に国家発展改革委員会が発表した《グリーン消費促進実施案》でも、新エネルギー自動車の電力交換モデルを推進することを謳っています。

しかし、ここで立ちはだかるのがメーカーによって電池が標準化されていないという問題です。各自動車会社の電池システム構造が統一されていないため、電池交換スタンドも特定ブランドのための自動車に対してしかサービスを提供できません。それぞれの自動車メーカーが自らの電池交換スタンドを建設すればいいといえばいいのですが、決して効率的とは言えません。CATLは2021年の中国国内動力電池シェア52.1%を占める最大手企業であり、ここが音頭を取って、つまり標準化の旗振りをしていくことで解決できるかもしれません。普段使っている単3電池、単4電池のようにどこのメーカーが作っても同じようなサイズ、構造にしていくという方向ですね。

CATLが考えているのは「巧克力换电块」(チョコレート電池交換ブロック)です。板チョコのようにブロックが集まりひとつのチョコレートになるイメージからこのように読んでいるのかと思います。電池を複数のブロックに細かく分け、例えば200km走れればいいというのであれば1ブロック、電池設置スペースが大きく、もっと長く走りたいのであれば400kmなら2ブロック、600kmであれば3ブロックを電池ボックスに入れ込むイメージです。たいていの電気自動車メーカーと付き合いのあるCATLは技術の蓄積もあり、この電池交換ブロックはすでに販売している電気自動車の8割、及び今後3年間の間に販売される電気自動車に適用できると考えています。また、この電池交換ブロックを使うにあたっての車両の設計に対する影響はほとんどなく、電池をはめ込むことさえできれば良いとのこと。

この電池交換ブロックが普及すれば、最初に紹介した電池交換スタンドの普及もかなり容易になっていくでしょう。複数メーカーに対応する電池であれば、メーカーごとの電池交換スタンドがいらないわけですから。

標準的な電池交換スタンドEVOGO駐車スペースが3つ、1つの電気ブロック交換は約1分間で終わらせることができます。標準的なスタンドであれば48個の電池ブロックを置いておくことができ、これで十分事足りるとしていますが、毎日ガソリンスタンドにガソリン補給しに来る車の数を考えればおそらくもっともっと必要になってくるでしょう。とはいえ、飛躍的に便利になるには違いないはず。

電池を標準化することでユーザー側にとってもメリットが有り、自動車メーカー側もメーカーごとに対応する電池スタンドを設ける必要もなくなり、電池メーカー側からしても商品を単一化できることで生産コストも下げられるはず。マメに充電すればいいと考えるユーザーであればこの電池ブロックを2つも3つも購入する必要はなく1つでいいでしょうから、電池を含めた車両購入コストの引き下げにも繋がりますね。

CATLはこの電池交換業務を推進していく上で「電池銀行」という構想を持っています。電池銀行で電池資産を管理し、ユーザーはここから電池を借りることができます。ということは、ユーザーは電池を購入する必要すらなくなりますので、購入コストがますます下がります。最初はCATL単独で立ち上げ、規模が拡大するに連れ自動車メーカーや金融機関を巻き込んでいこうとしているとのことです。これはなかなか面白い。

さて、電気自動車が普及していくのはもう流れになってしまっていると思うのですが、この電池交換スタンドはどれだけのスピードで普及していくでしょうか。2025年には中国国内の電池交換スタンドが9000以上になると予測しているところもありますが、2020年末時点のガソリンスタンド数は119,000あり、数年度だとまだまだガソリンスタンドのほうが圧倒的多数です。欧州あたりでは脱炭素が行き過ぎて電力不足になったりしましたが、電気自動車の流れは変わらないでしょうし、それにあわせて電池交換スタンドのニーズも満たしていく必要があるでしょうから、スピード感はどうあれ、充電スタンドならぬ電池交換スタンドは普及していきそうですね。


いいなと思ったら応援しよう!