非嘔吐過食のことをむちゃ食いというな

私は自己肯定感がとてつもなく低い。
周りが苛々するくらいには。

親との関係が悪いと自己肯定感は育たないというが、いたって良好である。よく褒めてくれたし、やりたいことはたいてい応援してくれた。
本当にいい子育てをしてもらったのに、現状自分がこんなので申し訳ない。

幼いころからたいていのことはうまくこなしてきた方だ。
だいたいのことには5がついた。
運動はできるものとできないものの差がかなりあったけれど。
かなりの進学校に合格して、そこでも一桁位で、現役で最難関大学に受かった。

どこで間違えたんだろう。

中学で人間関係がこじれたときから、私は勉強に自身のアイデンティティを依存させるようになった。
勉強ができる優等生のわたし、じゃないと価値がないと本気で思っていた。
だって顔は可愛くないし、愛嬌もないし、人間関係はおかしくなってしまったし。
ちょっと華奢でスタイルがいいといわれるのはいいところカウントである。
クラスの皆に一人だけお客様扱いされているような感覚だった(宮沢雪野ちゃんが『彼氏彼女の事情』で同じことを言っていた。彼女ほど容姿も運動も人望も完璧ではないけれど、彼女には共感できるところが多い)。

勉強できる+スタイル抜群、になったらもっと自分の価値あがるじゃん!

そう思ってダイエットしたのが悲劇の始まりだった。
見事に摂食障害になった。
もともと細身だったためか、拒食期には対して痩せず、過食でばかみたいに太った。
半年で15㎏だから、周りからは私がどんなに滑稽にみえただろう。
誰よりも細く美しくありたいのに、鏡に映るのは誰よりもデブで醜い自分。
あのときは本当に精神がいかれていた。
勉強のために早起きしたのに、気づけば棚のお菓子を全部口に詰め込んでいて、血糖が急低下してふらふらしたのを合図にもうやめなきゃ、と思う。
トイレで指をつっこんでも吐けなかった。
親が起きてくるといそいで勉強していた風を装う。
体型の変化も辛かったが、食にどんどんがめつくなる自分の卑しさも辛い。
立ったまま食べたりしなかったし、ジャムをそのままなめたりしなかったし、誰かのお菓子を盗み食いもしなかったのに。

結局今も完治していない。
相変わらず細い子を見ると凝視してしまうし、どうしようもなく食べたくなるときは化け物のような形相ですべてを詰め込む。
最近知り合った人がどうも過去摂食ぽかったのだが、今全くそんな風に見えず、むしろヘルシー美!みたいなスタイルですごいなと思った。
しっかり鍛えているらしい。
同時に自分の醜さに気持ちが沈むまでがセットなのだが。

摂食障害って基本ガリガリになるものだと思われているが、それは違う。
三つに大別される。
ひたすら食べない拒食と、食べまくって吐く過食嘔吐と、食べまくって吐かない非嘔吐過食である。
個人的に1番辛いのは非嘔吐過食だと思っている。
なぜならどのタイプも根底にあるのは"痩せたい"という思いなのにも拘らず、実際に体重がふえていくのは非嘔吐過食だけだからである(拒食と過食嘔吐は痩せる)。
なので辛さ二倍(個人的な意見)。
SNSで非嘔吐過食っぽい人に対して「食べるお前が悪いんだろ」とか正論かましている気になっている人が散見されるが、本当、凍結してくれませんか???
まあ世間での知名度があまりないから仕方がないのかもしれない。
大学の授業で摂食障害のテーマになったときに「摂食障害において、拒食のほかになにがある?」という質問に指名された学生は答えられなかったし、教授も教授で非嘔吐過食のことを「むちゃ食い」と言っていた。
なんなんそれ。
ただの食べ過ぎみたいやん。
違う、違うの、もっと苦しい、非嘔吐過食は。
お前は食べたくないのに止まらない手に殺意を抱いたことはあるか?
解凍すらしていない味のない冷食を口に詰め込んで、氷の欠片をがりがりしながら涙を流したことはあるか?
ファミリーパックのクッキーを全て食べきり、血糖値がさがって頭がぼんやりするなか手足の冷えを感じこのまま死にたいと思ったことは?

わからない癖に安直な名前をつけるな。