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スタートアップSO管理担当者向け!!期限間近、対応必須の令和6年税制改正に伴うSO契約変更実務

お久しぶりです、すとうです。X⇒(gomashioJr)
友人のパパがが6歳の娘と2人旅行に行ったという話を聞きました。ママを休ませつつ、娘との2人時間を満喫することが目的ということで、自分もやってみたいと思い、「パパと2人で旅行いこうか?」と娘に打診したところ、「え、ママも一緒の方がいいじゃん、ママ置いてっちゃダメだよ!」と食い気味に否決されました。純粋なご意見、しかと承ります。
さて、本日のメニューはこちらです。


今回のnote記事を書こうと思った背景

本日は、最近なにかと話題の令和6年税制改正に伴う、過去に締結した税制適格SO契約内容の変更実務について書きたいと思います。
最近、「スタートアップの会社さん、この論点の話を相談してくれなくて、ちゃんと対応が進んでるのかちょっと不安なんですよね。。」みたいな言葉を聞きまして、スタートアップ企業側の理解、対応の必要性の認知が実は進んでないのでは?と感じることがありました。
国が後押ししてくれているこちらの特例について対応しないのは、スタートアップ全体としてももったいないので、少しでも認知を広げるべく、今回は個人的な思いでnote記事を書くことにしました。

読んでもらいたい方々

令和6年税制改正に対応していない税制適格SOを発行しているスタートアップ企業のSO管理担当、資本政策担当に届いてほしい、切実に。
(ひらたくいうと、過去に税制適格SOを発行しているスタートアップ企業はだいたい対象となります。)
2024年12月31日までに対応を完了することが必須であり、そろぼち対応し始めないといけない時期なので。。

前提

今回の記事は、スタートアップ企業におけるSO管理者が実務上、なにをすべきかという観点にフォーカスしており、令和6年の税制改正の概要は割愛します。ただ、参考までに私が理解した記事のリンクを添付します。会計士御用達のEYさんの記事と、経済産業省のHPの解説記事となります。

https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/stock-option.html


結論

実務上、なにをすべきかという点に対しての結論ですが、一言で言うと、「2024年12月31日までに、①今回の特例の内容を理解して、②社内で契約変更内容の細部を固めて、③主要株主と合意して、④必要な機関(株主総会とか取締役会とか)の承認を得て、⑤SO契約変更の対象メンバーと契約変更書を締結する」対応が必要です。
もはや一言でいえるレベルではなく、対応完了までにざっくり2ヶ月くらいはかかるので、そろそろ対応を開始する必要があります。
相談先は、実務上の対応は顧問弁護士、SO設計の内容は主要株主(VCさん)になろうかと思います。

では、以降、実務的な留意点も交えて、簡単に言及していきたいと思います。

具体的な実務対応

①今回の特例の内容の理解

前提として、今回の特例が対象となるのは、2024年以前に税制適格SOを発行している企業となります。(令和6年税制改正の内容が反映されていない税制適格SOを発行している企業。)
特例の内容としては、既に発行済みの税制適格SOについて、令和6年税制改正後の新制度(年間行使価額については最大3,600万円までの拡充、保管委託要件の緩和)の内容を変更していいよ、ただし、2024年12月31日までの変更手続が条件ね、というものです。
特例、ひいては契約変更の論点は大きく2点です。

Ⅰ:年間権利行使価額の限度額引上げ
従来は、税制適格SOの年間権利行使価額の上限は1,200万円でしたが、今般の税制改正で、最大3,600万円まで引き上げられています。(設立年数で一部制限がありますが。)
プリミティブにわかりやすく、使いやすくなったので、こちらは上限値まで引き上げる変更で落ち着くかと思います。

Ⅱ:株式の保管委託要件の緩和
こちらの論点が少しトリッキーです。この論点の大きなメリットは、未上場時においてスタートアップ企業がM&Aされる(買収される)場合、税制適格を維持したままイグジットできるよ、という内容になります。(従来、未上場時のM&Aでは実質的に税制適格を維持したままのイグジットはできなかった。)
改正内容の名称と、メリットがパッと見て紐ついていないので、ちょっとわかりづらいかもしれません。
保管委託要件の緩和は、ひらたくいうと、税制適格SOの権利行使・管理は、従来は証券会社が行う必要があったけど、スタートアップ企業で行ってよいように緩和したよ、というものになります。

出典:経済産業省のHPで公表されている図。



従来、税制適格SOの権利行使は証券会社に依頼する必要がありました。(証券会社で口座つくって、SO権利行使事務を証券会社にお願いするイメージ。)
ただ、証券会社に管理委託を依頼するタイミングは上場直前となる実務があり、未上場時において、証券会社が管理委託をするケースはほぼありませんでした。(証券会社が悪いというわけではなく、そもそも未上場時にSOを権利行使するケースがあまり想定されなかった。)
一方で、昨今は、M&Aの事例も増えてくるなかで、証券会社に管理委託していない場合でも、未上場時にSOを権利行使して、イグジットするケースも発生するようになりました。このケースの場合、従来は、証券会社に管理委託していないため、税制適格性が維持できず、税制非適格のSOとして権利行使せざるを得ない、すなわちSO権利行使者が不利になってしまう課題がありました。
この課題を解消する一環で、保管委託要件を緩和し、未上場時でも税制適格SOを権利行使しやすい状況となりました。
Ⅰと異なり、Ⅱの設計(未上場時における税制適格SOの行使をどのように取り扱うか)に関しては、企業毎の資本政策ポリシーを反映させる必要があります。詳細は、②で触れます。

②SO契約変更の内容について主要株主と合意⇒今回の実務で一番重要

上記①のⅠ、Ⅱの内容を踏まえて、実際にどのような契約内容に変更するかについて主要株主と合意する必要があります。
この点、Ⅰは大きな論点にならないと思いますが、Ⅱの設計(未上場時における税制適格SOの行使をどのように取り扱うか)に関しては結構慎重な議論が必要な印象です。
具体的には、保管委託要件緩和にあわせて、未上場時における税制適格SOの権利行使をすべて認めるのか、限定的にするのかはそれぞれメリットデメリットがあるので、しっかりと理解して、設計を進める必要があります。
未上場時における税制適格SOの権利行使をすべて認めると、従業員にとっては使い勝手の良さは向上しますが、その後の管理が大変だったり、株主総会開催のコーポレートイベントに際して、従来より多大な工数管理が必要となります。(退職して連絡とれなくなったりする人が多くなったりすると、会社法が定めるの出席要件や議決権行使要件が集まらない。。。という可能性も出てくると思います。こうなると企業運営に大きな支障をきたし、結局事業成長にも悪影響となります。)
未上場時における税制適格SOの権利行使を限定的にすると、ある程度コーポレートイベントの運営、管理はスムーズになるメリットがある反面、SOの権利行使の使い勝手は少々落ちることになると思います。
このあたりの設計、調整は主要株主との合意が必要になるので、事前にしっかり話しましょう。このあたりの設計、調整は今回の実務上の対応で一番重要で時間がかかる部分かと思います。

補足:ちなみに、過去に発行した税制適格SOの契約書の中に、SO権利行使要件に「上場すること」(上場要件。上場してからじゃないとSO権利行使できないよ、という要件。)があるケースもあります。
保管委託要件の緩和とあわせて、この部分も要件を緩和する必要があるので、留意されたし。

③SO契約変更の契約書をドラフト

顧問弁護士と連携しながら、上記②で定めた内容に沿った変更契約書の準備を進めましょう。

④SO契約変更のに必要な法的手続きを確認

VCから出資してもらっているスタートアップの場合、株主間契約書で資本政策に関する決議事項(種類株主総会とか)が定められていることがあるので、どの機関の承認が必要かしっかり確認しましょう。
法的決議をミスると致命的になりかねないので、顧問弁護士としっかり連携する必要があります。

⑤契約変更対象となるメンバーに趣旨を説明

変更する内容をメンバーに説明します。基本的に有利となる変更なので、論点になることはないと思います。

⑥必要な機関における承認決議、各メンバーと契約締結⇒ここまでを2024年12月31日までに終わらせたい

最後に、株主総会や取締役会等の必要な機関で実際に承認を得たうえで、各メンバーと契約を締結します。ここまでを2024年12月31日までに終える必要があります。

さいごに

繰り返しになりますが、国が後押ししてくれている特例について対応しないのは、スタートアップ全体としての損失につながってしまいますし、シンプルにもったいないと思います。スタートアップ企業側が主体的に対応すべき論点なので、ぜひとも期限までに対応しましょう。
今日はこのへんで、ほんならまた。

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