ある男の話
「ねぇ、田口さん、山田さんってそんなに毎日営業行かないとダメなんですか?」
「全然。山田君は大きいとこ何件か持ってるからノルマは余裕で達成してるのよ。」
「…え?なら毎日どこへ?」
「毎日遊んでるんじゃない?何しているかは部長も誰も知らないのよ。」
「えー!?やっぱり!ほら、私この前山本さんの所に書類届けた時に見たんです!さすがに他人の空似かな?と思ったけど、やっぱりそうだったんだー…会社的に許されてる。って事ですか?」
「許されてると言うか、山田君はそういう契約なんですって。あの頃は面接に社長も同席しててね。山田君、「ノルマ以上の売上を上げれば後は自由にしてて構わない働き方ができる会社を探しております。」って言ったのよ。」
「えー!?…無謀というか、何というか…でも山田さんならあり得るか…な?うーん…」
「そしたら社長が「なら起業は考えなかったのかね?」って聞いたの、そしたら「経営はしております。」って言うものだから呆気にとられたみたい。人事も部長も社長も。」
「ええ!?山田さん起業してるんですか!?え?えええ!?」
「起業ではなく事業継承?詳しく知らないけど、自分の会社とウチの取引でノルマは達成してるみたい。」
「…ちょっと、え?…わかんないことだらけで…」
「そうよねー雇ったウチもわかんないし、そもそも就職した山田君もね。聞いてもはぐらかされるのよ。」
「確かにあの人、のらりくらり上手ですよね…」
「まぁ山田君の存在はウチの七不思議の一つなのよ。」
ここまでが友人がガストでランチを食べていた時に隣の席のOLの会話を盗み聞きした内容だったらしい。
友人に最後まで聞かなかった事を責めた。
全て仮名。
山田が気になって仕方ない。
そもそも何を売ってる会社なのかすら不明なのだ。
なので、勝手に山田のストーリーを作って補完させようと考えている。創作だろうが、山田をこのままにはしておけないのだ。
何パターンか作って、一番しっくりきたのを正解にするわ。