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人工透析を遅らせるための食事療法   ーその効果

〈はじめに〉

効果と言っても、私自身の当時の検査結果を見る以外に方法はありません。
先日部屋を整理していましたら、当時(食事療法を始めた頃)の検査表が出て来ましたのでそれを元に簡単に経緯等をお話しします。昔のことで、幾分私の記憶も薄れていますがご容赦ください。

さて、前回までの復習をはじめにお話しします。
私は糖尿病性腎症で、前の主治医に「そろそろ透析の準備を」と勧められて、そのまま透析に行ったのでは余命が少ないことがわかり、当時「人工透析を遅らせる」ための食事療法を指導されていたI医師を訪ねます。

そこで指導されたことは、
「1日に摂取するタンパク質の総量を体重kg当たり5g以内とすること」
体重60kgならタンパク質は30g以内になります。
「そのために主食をデンプン食にすること」
「塩分は1日5g以内にすること」
「動物性タンパク質は総タンパク質の60%以上とすること」
「1日の食品数を20品目以上にすること」
でした。

そのために
「食品は0.1g単位で測ること」
「食品成分表を使ってタンパク質、塩分その他を調べること」
「調べた食事の記録(タンパク質、塩分等)を毎日付けること」
「毎月の検査に畜尿と食事記録表を持参すること」
でした。私は言われたことをひたすら実践しました。
さて、その結果です。


1、2009年11月4日  (第1回目の検査結果)

クレアチニン 3.10  尿素窒素 21.8


I先生に食事療法の指導を受けて実践し始めて、2週間後の検査数値です。
この頃は、まだ食事療法に慣れていません。手探りでやっていました。
それまでの食事療法ではクレアチニンは上昇する一方で、その前の病院の検査ではクレアチニン3.4、尿素窒素は30を超えたくらいだったと思います。
クレアチニンも尿素窒素も少し下がりましたが、まだ高いですし、まだこれからというところです。

検査表1

I
※タンパク質は34.2gと30gをオーバーしてます。食塩は3.1gと抑えらていました。
塩分については、血圧が異常に高かったこともあり、ほとんど塩は使わないようにかなり気をつけていました。


2、2009年11月18日

クレアチニン 2.91    尿素窒素 14.6


前回検査から2週間後、食事療法を始めてから4週間後です。
デンプンと格闘し、食品を測り、成分表を調べて、毎日記録して行く、気の遠くなる作業をしていた頃です。
この時、これまでずっと上がってきたクレアチニンが初めて下がり、3点を切りました。尿素窒素も下がりました。
このあとしばらくクレアチニンは2.7  2.68と下がり、自分としてはこのまま改善されて行くのでは、と期待しましたが、そう甘くはありませんでした。


検査表2


※タンパク質は24.8g、塩分は2.1gです。
タンパク質は良いのですが、塩分についてはこの時I先生から、「低ナトリウム血症になってはいけないから、もう少し摂取するように」と指導を受けました。この食事療法を始めて最初の3カ月位は、私は「生きたい」という気持ちが強く何が何でもこの食事療法をやり抜くしかないと、かなり強い決意で取り組んでいました。当時私には他に選択肢があるとは到底思えませんでした。その3カ月は数値も順調でした。


3、2010年3月31日

クレアチニン 3.58    尿素窒素 15.5

前回検査の4カ月後です。それまで順調に下がっていたクレアチニンがここで上昇しました。前回(「人工透析を遅らせる食事療法 実践編」で)話しましたが、それまでなんとか頑張って食べにくいデンプンを主食にして食べていたのですが、ついにデンプン米に耐えらなくなり、ここで主食をタンパク質調整食に変更しました。
数値が上がったのはそれもありますが、やはり会社に勤めていましたので、仕事がきつくストレスや睡眠不足の影響もあると思います。
この時もう少し楽な仕事だったらとか、後に見つけたデンプン食のやり方を見つけていれば、と思いますが、それは仕方のないことだと思います。
これから長い間、クレアチニンは3点台を続けます。


検査表3


※タンパク質は28.6g、塩分は5.6gでした。
塩分については、前回低くなりすぎてはいけないと言われましたので、極端な制限はやめています。


4、2011年4月6日

クレアチニン 3.13    尿素窒素 10

前回から1年経過後です。
クレアチニンもだいたいこれくらいの数値で落ち着いていました。
特筆すべきは尿素窒素の10という数値です。
よく慢性腎不全で病気が進行すると顔色が悪くなると言いますが、この尿素窒素が低いこともあるのかもしれませんが、私はこの後、腎不全が進行して行った後も顔色が悪いと言われたことはありませんでした。


検査表4


5、2016年4月6日

クレアチニン 3.75   尿素窒素 16

前回から5年後、この食事療法を始めてから、6年半後です。
クレアチニンと尿素窒素は抑えらていますが、尿酸値が高くなり、中性脂肪、コレステロールも高くなり、ヘモグロビンは減少ししています。腎不全は徐々にですが着実に進行しています。もちろん尿酸を抑える薬や高脂血症の薬等を飲んでいました。
それでも糖尿病性腎症で、最初の治療開始からはすでに10年以上経っていますから、それでこのクレアチニンと尿素窒素の数値はすごいと思います。
それ以前の食事療法でここまで保つのは不可能だったと思います。

この頃になると腎臓というものは実に様々な機能があって、それこそ人間の身体のイオンバランスを保たせている、とか造血ホルモンを作っているとか、単に尿をろ過するだけでなく、なくてはならない機能があり、腎機能が止まるということは心臓が止まるのと同じだなと自分で気が付きます。

なお、ここで検査表の仕様が変わっているのは、I先生がそれまでお勤めの大学病院を辞めて私立の病院に移られたためです。またI先生はすでにこの前年にはお亡くなりになっています。


検査表6



事実は故I先生はその大学病院を辞めさせられたらしいです。(元々先生は別の大学のご出身でそこを定年退職されて、その大学病院へ移られていたのだと思います)
何しろその大学病院の経営が苦しい所に先生の栄養指導では、全く病院の経営に資するどころか足を引っ張ってしまいますから。
これがこの食事療法の最大の問題点です。
現在の日本の医療制度では、この食事療法がどんなにすぐれていてもそれに見合う診療報酬点数がつきません。

本当はこの食事療法でどれだけ多くの人が助けられたかと思いますが、それは考慮されません。一方で人工透析は大変高額な医療費でしかも国からの補助もあります。この大学病院でなくとも、「食事療法はやめて人工透析へ」となるのは仕方ありません。
しかし、何度も言いますが私のような糖尿病性腎症では人工透析は余命を短くします。できる限り透析は遅らせた方が良いと思います。また、万一透析に行ったとしても、この食事療法はその後も役に立つと思います。


6、2017年4月5日

クレアチニン 5.0    尿素窒素 30


前回から1年後、食事療法を始めてから7年半が:経過しました。この時初めてクレアチニンが5点を超えて、尿素窒素も私にしては30と大きな数値が出ています。


検査表7


この1年半後にはクレアチニンが6点台になって行きます。
慢性腎不全は進行していく病気ですから、それは仕方ありませんが、最終的に私は、この食事療法により丸11年間守られました。
最後は人工透析か移植かという決断を迫られますが、その話はまた別途いたします。


私は12年前にI先生にお会いしていなけば、そして、この食事療法を始めていなければ、多分今から7、8年前にはこの世から消えていたと思います。
そういう意味でI先生は私の命の恩人だと思っています。
もちろん難しい食事を毎日作ってくれた妻にも感謝しています。
慢性腎不全、特に糖尿病性腎症の方はこの食事療法を前回までにお話ししたやり方(「人工透析を遅らせるための食事療法」「人工透析を遅らせる食事療法 実践編」)で試してみられると良い結果が生まれると思います。



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