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経産省が新・環境ガイドライン発表―環境対策と収益向上を両立するアパレルDX

2024年6月25日に、経済産業省から「繊維・アパレル産業における環境配慮情報開示ガイドライン」が発表されました。

https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/seizo_sangyo/textile_industry/pdf/20240625_3.pdf

目的は、地球環境への負荷低減です。
そのために、企業に情報開示を促そうとしているわけです。

簡単に言えば、

・製品を作る際の環境負荷(エネルギーや水の使用、そして温室効果ガスの排出)
・製品を廃棄する際の環境負荷

をいかに下げるかに関するガイドラインです。

エネルギーや水の使用量を減らす、端切れなどの廃棄を減らす、化学物質や分解されないマイクロプラスチックなどの素材の利用を控える、回収・リサイクルの割合を高めるなどの具体的な取り組みやKPIの設定事例が紹介されています。


本記事では、これとは違う角度から、環境配慮へ大きなインパクトがある方法を検討してみます。

国内のアパレル企業では、消化率(仕入れた枚数に対する、売れた枚数)は平均して90%程度と言われています。

これは、端的にいえば、100枚の企画に対して

・10枚分の余計な製品を作って、環境に負荷を与え、
・10枚分の余計な製品を運んで、環境に負荷を与え、
・10枚分の余計な製品を廃棄して、環境に負荷を与えている

ということです。しかも、お買い上げ頂けていないこの10枚は、消費者に何のメリットも与えていないんです。

これを削減できたら、環境への悪影響を大きく低減できるはずです。
作る負荷、運ぶ負荷、廃棄の負荷をトリプルで減らせるからです。


方法はあります。

(1)(作って運んでしまった商品に関して)適切な店舗やECサイトに適量を配分することで、消化率を高める
(2)(まだ運んでいない商品に関して)売れ行きに合わせて補充することで、必要以上のものを作らない

(1)の消化率向上に関しては、

・店舗には在庫がないのに、ECサイトにはたっぷりある
・ある店舗には5枚あるのに、別の店舗では売り切れている

このような「在庫偏在」現象が起きてはいないでしょうか?

店舗数が多いほど、商品数が多いほど、倉庫が分割管理されているほど、これらの適正管理は人手では不可能と言えるほどに難しくなります。ECと店舗はまったく別管理という場合には、問題はさらに悪化します。このために、在庫偏在が起きるのです。

想像の通り、膨大な計算や最適化に関しては、人よりもAIの方が優れています。
各店舗やECサイトにおける適量を計算し、適時配分を行うことが自動化されれば、仕入れた(作った)商品を効果的に販売でき、結果として廃棄処分も削減可能です

Onebeat(ワンビート)というクラウドサービスです。

フランスなど欧州先行で進んでいる様々な環境規制が、日本にも遠くない未来に波及することになると思えば(自動車業界では、すでに起こりつつあります)、先だって環境配慮の取り組みを始めることは、経営の負担ではなく、むしろ稼ぐ力の強化につながる可能性が高いとも言えるでしょう。


(2)の売れ行きに合わせた補充に関しては、展示会などでのシーズン一括のまとめ受注、まとめ生産が大きな足かせとなっています。特にアパレル産業では、天候による売れ行きのブレが大きいという事実がありますが、半年先の天候を正確に知ることはできません。そこに、欠品はしたくないという気持ちが重なると、ついつい発注数は多めになってしまいます。それが、過剰在庫や、廃棄処分の温床となり、環境に負荷をかけるわけです。

実際には、作るコスト(や環境負荷)、運ぶコスト(や環境負荷)を個別に下げようとまとめ処理をするあまり、最後に廃棄処分を増やしてしまっているということもあるのではないでしょうか? サプライチェーン全体での環境負荷を計算してみると、実は作った分をこまめに補充した方が良いという結論になる可能性が高いのです。

こういう主張をするとシーズンが短く、リードタイムが長いので対応できないという声も聞きます。実際は原材料の準備に時間がかかっているだけです。染色済みの布と副資材さえ用意しておけば、必要なサイズに裁断して縫製するのにかかる時間はごくわずか。1~2週間で補充することは十分に現実的です。中国で作っても数日で補充できている企業さえあります。ここでも、シーズンの需要カーブから、必要補充数を割り出して、こまめに補充するための意思決定は、適切なITツールを使えば容易なことです。

DXの力を、より儲けを増やすために、より地球環境にやさしいオペレーションへと変容していくために使っていく一助となることを願っています。

執筆者プロフィール:飛田 基 (Motoi Tobita)
「大量に作って、大量に捨てる社会」、「考えることよりも、暗記を中心とした教育」、「『とりあえず』始めて、出口にたどりつけない研究開発」「気合・根性・精神論のスポーツ指導」といった、社会のちょっとうまくいっていない部分をどうにか直せないかと活動をしています。制約理論(TOC)という武器を使って、世の中のアップデートに取り組み中。