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金融業も知識サービス業もものづくり在庫管理の知識は、会社にも顧客にも、驚きのインパクトをもたらす【『在庫管理の魔術』出版記念連載】

この投稿は、金融機関の方々、士業の方々に向けたものです。まずは、金融機関、とりわけ銀行、信金・信組、郵便局の方々と、認識を合わせたいと思います。

もちろん、金融機関は物理的なモノをつくりませんし、したがって商品在庫を所有したり管理したりしません。ですが、金融機関において、少なくとも以下の4つは、在庫という視点でとらえるべきものです。

   ①      現金:窓口での支払いや入金などに必要な現金は、まさしく金融機関の在庫です。
   ②      有価証券:顧客からの預かり資産、自己勘定で保有している株式や債券も、金融機関の資産という観点から見れば、在庫と見なすことができます。
   ③      融資枠:企業や個人に与信枠を設定することは、言わば融資という商品の在庫を確保することにほかなりません。
   ④      情報:顧客情報や取引履歴といった情報も、金融機関にとって非常に重要な資産であり、これを効率的に管理することは在庫の最適化といえましょう。

「言い換えただけじゃないか」「アナロジー(例え)の一種じゃないか」と思われる方もいるかもしれません。ですが、これらも管理すべき資産であり、ものづくり経営論の専門家、藤本隆宏氏(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター (WBF)研究院教授)によれば「ものづくり論は、たとえばあらゆる商品をサービスととらえるサービス・ドミナント・ロジックとまったく矛盾しない。ものづくりとは『付加価値の流れづくり』のこと」だからである。ひるがえって、金融業は金融サービス業であり、したがって「ものづくり」にほかならないのです。
 
ここからは、金融機関の方々に加えて、法人をクライアントに抱える、弁護士、会計士、税理士、中小企業診断士の方々と目線をそろえたいと思います。
 
これらの皆さんは、クライアントの悩みを知り、的確なソリューションを提供することに腐心されています。ゴールドラットのグローバルな経験に照らすと、在庫の問題に気づいているクライアントは少なくなく、しかもその改善インパクトの大きさを認識しているケースは稀です。
 
何とももったいない! ですから、今後のコンサルティングでは、クライアントが自覚している「困りごと」も大事ですが、クライアントの予想を超えるソリューション、つまり在庫管理の改善・改革を提案してみてはどうでしょう。別稿でも説明しましたが、在庫管理能力が向上すると、売上げが上がり、利益が上がり、ついにはROEの向上につながります。
 
こうした好循環のロジックもそうですが、そもそも在庫とは何か(会計上は棚卸資産だが、実質的にはコスト)、在庫管理がなぜ収益の向上に結びつくのか、在庫管理を起点にDXやCXなどの変革が始められることなどを、説得力を持ってクライアントに説明できる力をほしくありませんか。こうした論理武装のために、先頃発行されたのが『「ザ・ゴール」シリーズ 在庫管理の魔術』(ダイヤモンド社)です。

 
アマゾンで調べていただければわかるように、在庫管理の教科書は世の中に山ほど出ています。ですが、教科書という性格上、内容は似たり寄ったりです。しかし、『在庫管理の魔術』は、『ザ・ゴール』と同じく、小説仕立てになっており、在庫管理の重要性とインパクトの大きさについて「これでもかと!」と全編を通じて解説しています。この知的経験は、さっそく“明日の仕事”に活かせます。
 
テレビドラマ『半沢直樹』(堺雅人)のお父さんも、この『在庫管理の魔術』を読んでいたら、銀行からの融資を止められなかったかもしれません。福山雅治演じる、テレビドラマ『集団左遷!!』の三友銀行蒲田支店長の片岡洋も、あそこまで頑張らなくてもよかったかもしれません。なんてことを考えてしまいます。
 
この『在庫管理の魔術』を読んで、在庫管理を起点に、稼ぐ力も働き方も、そして会社全体もマルっと変えられるはずです。

ゴールドラット経営科学研究所 主席研究員
岩崎卓也 いわさき・たくや
休刊寸前だった『DIAMONDハーバードビジネスレビュー』を立て直し、同誌の編集長を足掛け15年間務める。その後『ダイヤモンドクォータリー』を創刊し、編集長と7年間務め、現在論説委員。30代前半、日本でコーポレートアイデンティティ(CI)活動を最初に手掛けた元東レの佐藤修氏、当時マッキンゼー・アンド・カンパニーのディレクターの横山禎徳氏(故人)、江副浩正氏のブレーンを務めていた横山清和氏の3人から、奇しくも同時期に「1日3冊」の読書を勧められ、3年間ページをめくり続けた。その反動から、いまでは漫画をこよなく愛す。

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