ChatGPTを研究にどう使う
今日は自動生成AIとして今話題になっているChat GPTを研究に使ってみて私の感想と意見を書きたいと思います。
質的データの分析に活用してみた
私の研究はインタビューで対象となった人が語る、その会話の内容を分析する、「質的研究」とよく研究者の間で分類されるものです。
インタビューの内容を量的に分析することもできます。これは、例えば、会話の中にどんなワードがどの程度の頻度で出現するかを明らかにする場合には、数字で現れます。
私の研究の分析ではそうではなく、その人が語った内容を一旦より小さい単位に分割し、その語られた内容の本質にどのような要素が含まれているのかをまず明らかにします。
そして、次にそれを整理し直して再構成しその語りの本質を見極めていく、というような感じになります。(正確にはもっと複雑ですが、詳細はここでは不要なのでざっくりと説明しておきます)
この分析の過程で求められるのは、その分割した内容を抽象化しラベル(ネーミング)することです。
ここが、このタイプの研究では一番時間がかかり、かつ大切なところです。
英語で分析と論文作成を行うのは時間がかかる
私は、海外の学術雑誌に投稿しますので、英文で論文を作成します。
日本語で分析したものを英語で翻訳するのは、時間がかかりますので、私はいつも分析から日本語ではなく英語で行います。
そうすると、日本語のインタビューの内容に英語でラベルをつけていくという作業が必要になります。
ここで、いつも悩ましいのは自分の英語のラベル化(つまりネーミング)が果たして英語のネィティブの人が読んで納得いくものになっているかどうか日本人の自分一人では確信が持てないことです。
そこで、私はアメリカ人で社会学の学位を持った友人に専属アドバイザーかつエディターを頼んでいます。不安なときは、確認することができますし、書き上げた英文が英語圏のネィティブの人にとって自然に受けいられれる文章になっているかを確認してもらい、修正をしてもらいます。
ただ、遠く離れてメールのやり取りでは細かいことや、タイムリーに相談することはやはり難しいのです。アメリカと日本の時差が14時間ほどあることも非効率です。
そこで、このChatGPTがどのくらい活用できるものなのか使ってみることにしたのです。これで解決できれば、効率的に作業が進みそうです。
分析にChatGPTを活用し助けてもらう
最初に私が試したのは、私が書いた英語の文章をChatGPTを使ってより洗練しものに改善してもらうことです。
そこで、私はChatGPTに自分の書いた英語をコピーし、「洗練された英語に修正して下さい」と英語で頼みました。
数秒で、答えてくれました。それを見ると、「なるほど!」と思わせる表現になっており、私のアメリカ人の友人と遜色ないことがわかりました。
また、別の文章を今度は学術的な表現でより洗練された英語にしてほしいと頼むと、数秒で学術論文でよく使う表現に直してくれました。
これは、すごい!と感動しました。反応時間も早いし、何よりも英語表現の正確さと精度が高いと思いました。
もちろん、よく確認しないとChat GPTも誤解していることもあります。ですから、その回答を鵜呑みにすることはできません。確認が必要です。
しかし、ChatGPTは私の想像以上に優秀であることがわかりました。
次に、試したのは、インタビューの内容の分析のもう一つの工程である「カテゴリーの名前」を考えることです。
インタビューの内容の分析では、語りの内容をみて類似の表現(内容)を集めてそれをカテゴリー可し、そのカテゴリーにラベル(名前)をつけていくと言う作業があります。
ここでは、そのカテゴリーの中に含まれた内容を適切に反映する名前をつけることが必要です。ここで、うまく反映した名前をつけられるかどうかが、研究結果の質を作用する大切な部分です。
この名前をつける作業は慎重に行うので時間がかかります。特に私の場合には、それを英語で考えるのでさらに時間がかかり、かつその考えた内容が自然な英語表現かどうかの確認も必要になります。
この工程をChatGPTに助けてもらうと研究が効率的に進みます。
そこで、私はカテゴリーに含まれる内容をChatGPTにリストにして提示し、これらを含むカテゴリー名について提案してほしいと頼みました。
すると、数秒で一つの案を提示してくれました。
いくつかやってみましが。ある時は完璧でしたが、ある時は適切と思えない提案であることもありました。
私が納得がいかない提案の場合には、私がなぜその案を気に入らないのかと言うことをChatGPTに伝えました。
そうすると、ChatGPTはすぐに、I'm sorryといって、私の説明をもとに修正した案を数秒で提案してきました。
このやりとりを何回か続けていくうちに、私の方で「これはピタリ」と思える内容に辿り着きました。
この、Chat GPTとのダイアローグはとても楽しくかつ刺激的でありました。
三つ目は、日本語のインタビューの語りの内容を英語に翻訳してほしいと頼んで見ました。
これは、最終的な論文作成の時に必要になるものです。
論文中に結果として、具体的に話した内容を引用してエビデンスとして提示することが求められるからです。
私の対象者は関西弁を話す高齢者です。ある高齢者の語りは、同じ日本人でも関西以外の人だと伝わりにくい表現もあります。
さて、これを本当にChat GPTは理解して正確な翻訳をしてくれるのか。
結果は、完璧でははないけれど、想像以上に優秀であるということです。典型的な関西弁であればほぼ間違いなく理解できています。ただ、語尾が変形したりしているとやはり読み取れないようでした。
そこは、ChatGPTに情報をさらにインプットして教えてあげることができれば再度自動生成し、適切なものに変えてくれます。
会話なので、堅苦しい英語の表現ではなく、casual Englishでとお願いすると、英語のcasualな表現に変えてくれます。
ここで、その語り手の特性、女性だとか、年齢だとか、あるいは会話の文脈、何を目的にしたインタビューなのか、などをChat GPTに教えてあげることで、その翻訳の精度は更に上がります。
これで、私はChatGPTを使うことで、アメリカ人の友人なしに自然な英語の語りの引用や、英文を作成することができることがわかりました。
ChatGPTはスーパーマンではない、でも優秀な同僚
ChatGPTは自動生成AIと言う名前がついていますが、ChatGPTのChatは英語でおしゃべりをするとか、会話をすると言う意味です。
つまり、このAIとうまくコミュニケーションを取ることが求められているのだと思います。
AIとは万能なイメージがありますが、そうではないということです。
ChatGPTの開発者のYouTubeを見ていたときに、その人は、ChatGPTのことを「完璧ではない」と話していました。そして、それは人間も同じ。だから、お互いに助け合って、つまり協働することが必要だと言っていました。つまりChatGPTとのパートナーシップが大切なんだと思います。
ChatGPTを活用する時はChatGPTが回答しやすくなるように、丁寧に情報をインプットしてあげることが必要であるのです。
そして、それでも誤解したりわからない時には、どこがわからないのかを聞きながら、更なる情報提供をして、会話をしながら、最適な解を作り上げていくという作業だと思いました。
つまりChatGPTに対するリスペクトですね。
そうすることで、ChatGPTは研究を伴走してくれる優秀な同僚になることができます。
これは、私のような研究者にはとても有効だと思います。
私は大学を退職しました。今大学や研究所に所属しない独立した研究者であり、自分の研究について特に分析についてディスカッションをする機会が減っています。
また現役の時も、自分と同じ領域で研究をしている同僚が海外にしかおらず、討議をする機会が少なく、分析に発展性がなくジレンマでした。
それをChatGPTは補ってくれそうです。
これからどんどん進化し続けているChat GPTと話すのがこれからも楽しみです。
ではでは