
研究計画書の書き方#1 研究のタイトルを的確かつ効果的に表現する
このブログは、研究計画書の書き方をシリーズで説明していきます。
今回はその第一回として「研究のタイトル」に焦点を当てます。研究計画書の各項目について回ごとに分けて解説し、無理なく理解を深められるように構成しています。
研究計画書を書くのは難しいですよね。特にタイトルは後回しにしがちですが、実は研究の核となる非常に重要な部分です。タイトルは研究の方向性を示し、研究範囲を明確にする役割も担っています。
適切なタイトルをつけることで、研究の意図が的確に伝わり、読み手の関心を引くことができます。そこで、このブログでは、研究タイトルの作成に役立つポイントを紹介します。
1. タイトルはなぜ重要か?
タイトルは研究の「顔」ともいえる部分です。以下の3点が特に重要です。研究内容を的確に反映する
研究内容を的確に反映する
タイトルが曖昧だと研究の意図が正確に伝わらず、読み手を混乱させます。
わかりやすく表現する
難解な表現や長すぎるタイトルは、興味を引きにくくなります。
研究の範囲を適切に示す
研究の焦点がぼやけないように、対象や方法、目的を明確にすることが重要です。
例えば、CMのキャッチコピーも、短い言葉で消費者の関心を引く工夫がされていますよね。同じように、研究のタイトルもシンプルかつ的確であるべきです。
2. タイトルの良い例と悪い例
具体的な例を見てみましょう。
❌ 良くない例
「透析患者の生活指導の研究」
問題点
- 「生活指導」が何を指すのか不明確
- 研究の目的が見えない(実態調査か効果検証か)
- 研究対象が特定されていない
✅ 改善例
「外来血液透析患者の透析間の体重管理における困難感と対処行動:週末透析の患者を対象とした質的研究」
改善点
- 研究対象(外来血液透析患者)が明確
- 研究課題(体重管理の困難感と対処行動)が具体的
- 研究方法(質的研究)が明示
さらに、次のような例もあります。
❌ 良くない例
「血液透析患者の下肢冷感の緩和に向けた看護師の保温ケアに関する取り組み」
問題点
- 「看護師の取り組み」に焦点が移り、研究の目的がぼやける
- 「緩和に向けた」という表現があいまい
✅ 改善例
「血液透析中の下肢の冷感に対する保温ケアの効果」
改善点
- 研究対象が明確(血液透析中の下肢冷感)
- 介入内容が具体的(保温ケア)
- 研究の本質(ケアの効果評価)が明示
その他の例
方法論には問題がないが表現が回りくどい例
❌ 悪い例:「看護師が実施する高齢者の転倒予防における介入の影響に関する検討」
✅ 改善例:「高齢者の転倒予防に対する看護師の介入の影響」
改善点:「看護師が実施する」「における」などの不要な言葉を削除し、簡潔で分かりやすくする。
具体的すぎて研究の本質が見えにくい例
❌ 悪い例:「名古屋市内の特定病院におけるICU患者の人工呼吸器関連肺炎の発生率とその予防策に関する研究」
✅ 改善例:「ICU患者の人工呼吸器関連肺炎の発生率と予防策の検討」
改善点:特定の病院名を省略し、研究の一般化が可能な表現に修正。
因果関係を強調しすぎている例
❌ 悪い例:「看護師の口腔ケアが高齢者の誤嚥性肺炎発症率を低下させる」
✅ 改善例:「看護師の口腔ケアと高齢者の誤嚥性肺炎発症率の関連」
改善点:「関連」とすることで、因果関係を断定せず、適切な表現に修正。
3. より良いタイトルを作成するための手順
研究タイトルを考える際は、以下の手順を試してみてください。
研究の核となる要素を箇条書きにする
研究対象、目的、方法、結果の要点を整理する。
それらを簡潔な文章にまとめる
余分な表現を省き、シンプルにまとめる。
不要な言葉を削除する
「○○に関する研究」「○○の検討」といった曖昧な表現は避ける。
専門用語を適切に使用する
読み手にとって分かりやすい表現を心がける。
4. 良いタイトルのチェックリスト
✅研究の目的や焦点が明確になっているか?
✅ 研究対象(患者・地域・環境など)が特定されているか?
✅ 研究方法(質的研究・介入研究など)が明示されているか?
✅ 簡潔でわかりやすい表現になっているか?
✅ 専門用語が適切に使用されているか?
まとめ
研究タイトルは、研究の方向性を決め、読み手に内容を伝える重要な要素です。適切なタイトルをつけることで、研究の意義が正確に伝わり、興味を持ってもらいやすくなります。
次回は「研究の背景」の書き方について説明します。お楽しみに!
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