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マッチングアプリ大戦記 episode16
「16人目 Hさん アラサー ?似」
前回付き合った人から初めて会った人で、半年くらい間が空いていた。他人と付き合うことが面倒になり、お金をむしり取るような思想を持っている人と付き合ったことへのショックがやっと癒えてきた頃だった。
新規会員マークがあった。アプリでの写真は、目が大きくちょっとギョロっとした感じで、顔は小さく、顔の下にいくにつれてシュっと細くなっていて、歯科矯正をしていた。それと沖縄っぽい海の写真と、パンダのあんまんの写真が設定されていた。とりあえず本が好きなのと、パンダまんが気になっていいねを送ってみたらマッチングした。
適当に話を盛り上げたら、オムライスを食べに行く約束が出来ていた。また大都市N潟への遠征になるので、飲みに行く店を見極めて、当日のアポに臨んだ。
風の強い寒い日だった。宿の近くの駐車場に車を停めた。店まで2キロくらいあったけど、歩いた。歩いていると徐々に催してきたので、近くのビルに入ったが、和式だったので、するのを諦めた。
約束の数分前になり、店の前に行くと、待ち合わせ相手と思しき女性がいた。第一印象としては、目じりにしわがあったので、年齢の割に老けていると思ってしまった。
同じビーフシチューオムライスを頼み、待っている間は行動経済学の本を読んだだの、石垣島にちょっとだけ住んだことがあるだの、そんな話をした。ほどなく野菜が来たので、ふたりでそれをついばんだ。
ついばみながら、ありきたりな話をすると、美味しそうなオムライスがやってきた。美味しかった。圧倒的な速さで完食できると思いきや、思ったより食べるのに時間がかかった。歯科矯正をしている人は食べることに気を遣うらしく、すぐに歯磨きをしたいと言って、トイレに行っていた。
店を出て、コーヒーを飲む約束もしていたので、2軒目に向かった。驚くことにGoogleストリートビューで行き方を調べてくれていた。僕は方向感覚が抜群でそんなことをする必要はないのにと思ったが、少しだけときめいた。
コーヒー屋はかなりオシャレだったが、店員の愛想があまり良くなく職人感を醸し出していた。豆の微妙な味わいは素人には分かるはずもなかったが、その無愛想な説明を彼女は熱心に聞いていた。
10分で飲み終わりそうなコーヒーを30分ほどかけて飲み、「もし戻れるなら、どの時代に戻りたい?」と聞かれたが、特に戻りたい時代も無いし、今まで生きてきた中で後悔はあるけど、戻りたいとはやはり思えなかったので、「これから先が楽しみなので、戻りたくない」と答えた。
逆に彼女は、高卒であることをコンプレックスに思っていたらしく、高校時代に戻って、勉強を真面目にすればよかったと言っていた。確かにそう言われてみれば、僕に先見の明があり、将来のことをよくよく考えることが出来ていたなら、適当に文系の学部ではなくて、手に職をつけられるようなことを学んでおけばよかったと思えた。
2回目のアポは飲みに行くことになり、実際に飲みに行ったが、彼女の人を小馬鹿にするような話し方が顕著になり、そして自分の経験したことを過大に話すところが、次第に気になっていった。それと歯科矯正のワイヤーに挟まる食べ物も気になったが言える訳がなかった。
やり取りをする中で、継続して会いたいと思ったけど、3回目のアポは1ヶ月ほどの待ちを食らった挙句、気になる人が出来たと言われ、それっきりになった。それならば、最初から断られた方が気が楽だった。きっとそれは、彼女自身を見繕うための嘘で、実際はまだアプリで活動している。
3ヶ月くらい経った今では、なぜ彼女のことを好きになりかけていたのか分からない。